『新ブラックジャックによろしく』なぜ腎臓移植は普及しないのか

『新ブラックジャックによろしく』なぜ腎臓移植は普及しないのかマンガの感想
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臓器移植についてどう思うだろうか?私は賛成派だ。免許証の裏には、臓器提供ができるようにマークを入れている。しかし、臓器提供が嫌な人もいるであろう。また自分は良くても、自分の子供の臓器が提供されるのは嫌な人もいるだろう。そんな臓器移植が『新ブラックジャックによろしく』のテーマになっている

 

メディアなどでは語られないテーマだ。好感度を求める芸能人としては扱いづらいし、下手なことを言おうもんならテレビ局にクレームが入る。しかし、臓器移植は語られるべきテーマだ。誰もが知っておくべきことだろう。私たちにも、『他人の臓器が必要になる』可能性がいつだってあるからだ。

 

新ブラックジャックの連載期間は2007年から2010年なので、2019年現在から考えると約10年も前の話だ。だからこの漫画で描かれていることをすべて鵜呑みにするのは危険かもしれない。しかし参考なる点も多いと思う。

 

例えば、腎不全で人工透析を行なっている患者は全国に26万人もいるのだが、腎移植が行われる手術は年間1000例。だからほとんどの人が、透析を受け続けることになっている。この話を聞くと「ふーん、そんなもんなのか」と思うかもしれない。では次の文を読むとどう思うだろうか。「医者は患者に移植という道があることを教えない」のである。

 

移植の話をしない理由は多々あるが、一番の理由はカネだ。『透析をする』ということは、一生病院に通わなければならない。そのため透析患者が一人いるだけで、医療保険から500万円以上のお金が病院に入る。だから腎移植をするということは、病院としてはたくさんお金を落とす客を失うということなのだ。

 

また移植には脳死も絡んでくる。腎臓などの2つある臓器は、家族が家族に提供することが可能だ。しかし、1つしかない臓器は他人からの提供を待つしかない。死んだ人、もしくは脳死した人だ。心臓の鼓動が止まっていれば諦めもつく、だが脳死の場合はどうだろう。脳死は植物状態とな異なる。植物状態というのは回復する可能性があるが、脳死は回復する可能性がない

 

脳死を人の死とみなすかどうかについては、議論が分かれるところだ。国や文化や宗教によって違う。娘や息子が脳死であれば、奇跡を信じて目を覚ます可能性にもかけたいだろう。生命維持装置を外したくはない。だが生命維持装置のもカネがかかるのだ。

 

頭を抱えるテーマばかりだ。この作品はワンピースのようなワクワクする内容ではない。気が重くなる。描かれているのは圧倒的なリアルさだ。誰しにも訪れる可能性がある問題だ。命の重さ、医療制度について考えてみたい方は手に取ってみるといいだろう。

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