AIデータセンターはGPUだけでは動かない?電力・冷却・建物まで必要な設備を解説

AIデータセンターを構成する計算設備、通信、電力、冷却、建物をまとめて示した横長のイラスト 科学・歴史・文化
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AIデータセンターの建設ニュースが続いています。

その金額は、1社で年間数百億ドル規模です。Alphabetは2025年の1年間で914億ドルを設備投資に使ったと開示しています。AIデータセンターだけに使った金額ではありませんが、一つの会社が1年でこれだけの設備投資をしているわけです。数字がデカすぎて訳わからなくなります。

このお金がどこからどこへ流れるのかは、前回の記事で整理しました。

→AIブームのお金はどこへ流れる?儲かる側とリスクを持つ側の構造を解説

今回はその続きで、素朴な疑問から始めます。この巨額のお金で、各社は実際に何を買っているのでしょうか。

真っ先に思い浮かぶのはGPUだと思います。私もそうでした。ただ、AlphabetやMetaが設備投資と資産の中身を説明している箇所を読むと、GPUという項目は出てきません。並んでいるのは、サーバー、ネットワーク機器、土地、建物といった言葉です。

私はデータセンターや企業会計の専門家ではありません。この記事では、AlphabetとMetaとNVIDIAが公開している年次報告書と、NVIDIAとGoogle Cloudが公開している技術資料を読み、各社自身が説明している内容を整理しました。

先にお断りしておくと、GPUに何%、建物に何%という費用の内訳は、今回確認した各社の開示には出てきません。ですからこの記事が答えるのは「何にいくら使ったか」ではなく、「何が揃わないとAIデータセンターは動かないのか」です。

株価の話はしません。バブルかどうかの判定も、投資の助言もしません。

なお、NVIDIAがGPUとソフトウェアとネットワークをまとめた「AI工場」を売る側の話は、連載の1本目に書きました。今回はその工場を、買う側と建てる側から見る回です。

→NVIDIAはなぜ強いのか?CUDA・HBM・AI工場から20年の積み上げまで解説

各社は「何を買った」と説明しているのか

各社の年次報告書を見れば、彼らが「何を買った」かがわかります。

Alphabetは年次報告書で、設備投資の中心を技術インフラと呼び、その中身を、サーバーとネットワーク機器への投資、データセンター用の土地、建物の建設と改修だと説明しています。

機械だけではなく、土地と建物が最初から並んでいます。

Metaの資料には、建設中の資産という項目があります。その中身の大半は、データセンター、ネットワークインフラ、サーバーの建設に関わる費用だと説明されています。この建設中の資産は、2024年末の約268億ドルから2025年末には約505億ドルへ、1年で2倍近くに増えました。

Metaでは、まだ稼働していない作りかけの資産だけで約505億ドルに達しているということです。

では、機械と建物の割合はどれくらいなのでしょうか。

手がかりが一つだけあります。Alphabetは、稼働中の技術インフラ資産のうち、取得額ベースでおよそ60%がサーバーとネットワーク機器、残りがデータセンターの土地・建物と関連資産だったと開示しています。2024年末と2025年末の両時点で、この比率はおよそ60%のままでした。

約6割がサーバーとネットワーク機器、残りが土地・建物と関連資産。ただしこれはAlphabet1社の、すでに稼働している資産を取得額で見た話です。建設中の資産の内訳は開示されておらず、AIデータセンター一般の費用配分でもありません。

それでも、方向は見えてきます。設備投資と聞いて想像するより、ずっと多くの種類のものが買われている。ここから先は、その中身を一つずつ見ていきます。

要素役割
計算GPUを組み込んだ計算システムが計算する
通信サーバー同士がデータをやり取りする
保存学習データやモデルを置き、読み書きする
電力施設全体を動かす電気を確保する
冷却機械が出す熱を運び出す
建物・土地上の全部を収める

計算: GPUだけでは、まだ計算が始まらない

最初は、AIデータセンターといえばこれでしょってイメージのある「GPU」からです。

ただ、GPUというチップを買ってきて、床に置いても、何も起きません。

AIデータセンターでは、GPUはCPUやメモリ、電源などを備えた計算システムに組み込まれて使われます。NVIDIAの完成品サーバーであるDGX H100を例にすると、1台の中にH100 GPUが8基、それとは別にCPUが2基、メモリ、電源、そして外部とつなぐためのネットワークカードが入っています。

計算の主役はGPUでも、データを出し入れし、外の世界とやり取りする部品が別に必要です。構成表に並んでいるのは、その組み合わせです。

念のため書いておくと、すべての会社がこうした完成品サーバーを買うわけではありません。大手クラウド企業には、自社で設計したシステムにGPUを組み込む会社もあります。ここで確認したいのは買い方ではなく、GPUは単体では使われず、CPUやメモリや電源と組み合わせた計算システムの一部として導入される、という点です。

つまり、AIデータセンターの買い物リストの1行目は、正確にはGPUではなく、GPUを組み込んだ計算システムです。

通信: つなぐ機材も性能を左右する

サーバーが揃ったら、次は配線です。

地味に聞こえますが、AI向けの計算では、ここが性能を左右します。

大規模なAIモデルの学習では、多数のサーバーを組み合わせることがあります。手分けして計算し、途中の結果を頻繁に交換しながら進む形です。このとき、データの受け渡しが遅いと何が起きるでしょうか。

GPUが、待ちます。

Google Cloudは自社のAI基盤の説明で、この点をはっきり書いています。通信のやり取りにかかる無駄を抑えることで、GPUがデータを待つのではなく計算に時間を使えるようになり、学習の実質的な進み具合が直接良くなる、と。高価なGPUを遊ばせないために、通信設備にお金がかかるわけです。

しかも、必要なネットワークは1種類ではありません。

NVIDIAのDGX SuperPODという大規模構成の設計資料では、計算用、ストレージ用、管理用と、用途の異なる複数のネットワークを分けて設けています。Google Cloudも同様に、GPU同士の通信と、ストレージへのアクセスや管理用の通信を、別々の経路に分けています。取り合いを防ぐためです。

規模の感覚も一つだけ。SuperPODの設計資料が示す構成例では、DGXサーバー128台に対して、計算用ネットワークだけでスイッチが48台、ケーブルが2,000本を超えます。保存用と管理用のネットワークは、これとは別に必要です。サーバーを増やすほど、つなぐ機材も一緒に増えていきます。

保存: 読み書きが追いつく置き場所

計算と通信の次は、データの置き場所です。

AIの学習には、大量の学習データと、学習の途中経過を残すための保存場所が必要です。ここで大事なのは、容量だけでは足りないという点です。

多数の計算ノードが、同じデータの集まりへ並行して読み書きをかけます。十分な速度でデータを供給できなければ、話は通信のときと同じで、計算側の待ち時間につながります。

SuperPODの設計資料では、保存の仕組みを2系統に分けています。学習用の高性能な保存領域と、普段使いの領域です。そしてこの構成では、高性能側とDGX H100 1台をつなぐ経路に、毎秒40ギガバイト以上の帯域を用意するとしています。保存装置そのものに加えて、そこへつながる専用の通信経路まで含めた設計です。

これとは別に、もう一つ地味な買い物があります。管理用のサーバーです。このSuperPODの構成では、計算機群の準備や監視に加えて、利用者が保存領域へアクセスする窓口の役割も担うとされています。派手さはありませんが、こうした裏方が構成表に別枠で並んでいます。

電力: 買うというより、確保する

ここまでは、お店で買える種類のものでした。ここからは性質が変わります。

電力の話は、実は3つに分かれます。

1つ目は、施設の中に設ける電気設備です。2つ目は、電気そのものの費用です。利用に伴って継続的に発生する費用で、こちらは設備投資ではありません。

そして3つ目が、いちばん見えにくいものです。そもそも、その場所でそれだけの電気を使わせてもらえるのか。供給の枠の確保です。

Alphabetは年次報告書のリスク要因で、技術インフラの拡張が電力、水、土地の確保しやすさに制約されるようになっていると書いています。AI計算のための電力需要が世界的に増えたことで供給が限られ、容量の確保には複雑で長い準備期間を要する取り決めが必要になる、と。

つまり、資金を用意するだけで、必要な電力をすぐ確保できるわけではありません。

売る側のNVIDIAも、同じことを別の角度から書いています。需要に見合うエネルギー容量の拡大は、規制、技術、建設のそれぞれに大きな課題を伴う複数年がかりの過程だ、と。前回の記事で見た「顧客側の準備が整わないと導入が遅れる」というリスクの一部が、これです。

→NVIDIAに弱点はある?決算資料から見えた3つのリスクと強さの裏側

長期の契約を使う例もあります。Metaは、3年から25年に及ぶ再生可能エネルギーの購入契約を結んでいると開示しています。ただし、この契約は固定の数量や最低購入量を定めるものではないとも書かれています。一定量を25年分押さえたという話ではなく、長い期間にわたる調達の枠組みを先に作っておく、という形です。

冷却と建物: 熱の後始末と、全部を収める器

電気の話には続きがあります。

サーバーが使った電力の多くは、熱として施設の中に出てきます。放っておけば機械は正常に動けません。だから、熱を運び出す設備が要ります。

米国エネルギー省のデータセンター設計ガイドは、設計で検討する対象として、IT機器そのものに加えて、空気の流れの管理、冷却システム、電気設備を挙げています。計算機を買う話と、その熱を処理する話は、設計の段階からセットだということです。

目を引くのは、空気の流れの管理と冷却システムが、別々の検討項目として並んでいることです。熱を取り除く仕組みと、施設の中の空気の流れを管理することは、別々に考える対象だということです。計算機を並べるだけでなく、その周囲にも設備が要ります。

そして最後に、ここまでの全部を収める器、土地と建物です。

Alphabetはデータセンターの建設について、土地と建物を取得し、建物を建設し、サーバーとネットワーク機器を調達して設置するという工程を挙げ、複数の段階からなる複数年のプロジェクトが一般的だと説明しています。資産を買ってから実際に稼働するまでの期間は、数か月から数年に及ぶことがある、とも。

GPUの世代が1年で交代する話を前回書きましたが、その機械を収める器は、年単位で準備するものなのです。

寿命の感覚も対照的です。Metaは会計上、サーバーとネットワーク資産の寿命を5年から5.5年、建物を25年から30年と見積もっています。同じデータセンターへの投資でも、中の機械と器では、想定されている時間が5倍ほど違います。

「GPUに何%」は、開示からは分からない

ここまで読むと、知りたくなる数字があると思います。結局、GPUに何%、建物に何%使っているのか。

冒頭で予告したとおり、この数字は出てきません。今回確認したAlphabet、Meta、NVIDIAの開示には、GPU、通信、冷却、建物ごとの統一的な費用内訳は見当たりませんでした。

いちばん近い開示が、先ほどのAlphabetの約60%です。ただ、思い出してください。あれは稼働中の資産の話で、建設中・未稼働の資産の内訳は分かりません。しかも「サーバーとネットワーク機器」というくくりであって、サーバーの中にはGPU以外の部品も含まれます。GPU単体の割合は、ここからは取り出せません。

もう一つ、混ぜてはいけない数字があります。

設備投資とは別に、動かし続けるための費用が毎年かかります。Alphabetは技術インフラの運用費用として、エネルギー、機器、ネットワーク容量の費用を挙げ、AIの開発と提供には従来より多くの計算力が要るため、これらが大きく増える見込みだと書いています。Metaも売上原価の説明で、エネルギーと帯域の費用を挙げています。

つまり、ニュースで見る「AIに◯◯億ドル」という設備投資の数字は、GPUの購入額でもなければ、かかるお金の全部でもありません。買って作る費用の合計であり、その後に動かし続ける費用が別に続きます。

数字が何を含み、何を含まないのか。決算の数字を読むときの注意は、前回とまったく同じです。

まとめ

AIデータセンターの巨額投資で買われているのは、GPUだけではありませんでした。

設備投資として買われるものが、まずあります。GPUを組み込んだ計算システム。サーバー同士をつなぐ大量のケーブルとスイッチ。十分な速度で読み書きできる保存設備。管理用の機器。施設の中の電気設備。熱を運び出す冷却設備。そして、全部を収めて年単位で建てる建物と土地。

それとは別に、買って終わりにならないものがあります。電気の供給枠の確保と、動かし続けるかぎり発生する運用の費用です。

こうした設備と電力の確保によって、AI計算基盤を動かせるようになります。

1本目で、NVIDIAはGPU単体ではなくAI工場を売っていると書きました。買う側から見ると、その工場を受け入れる施設の側でも、土地、建物、電力、冷却が必要になる、ということでもあります。

次にAIデータセンターへの投資額のニュースを見かけたら、その数字の中身を思い出してみてください。何割がGPUかは開示からは分かりませんが、設備投資にはGPU以外にも、サーバー、通信、保存設備、電気設備、建物などが含まれること、そして電力の確保と運用費用が別に続いていくことは、各社の資料が教えてくれます。

よくある質問

AIデータセンターの費用のうち、GPU代は何%ですか?

今回確認したAlphabet、Meta、NVIDIAの開示では、GPU単体の費用割合は確認できませんでした。

参考になる開示として、Alphabetは稼働中の技術インフラ資産のおよそ60%がサーバーとネットワーク機器だったと説明しています。ただしこれはGPU単体ではなく、CPUやメモリを含むサーバー全体と通信機器を合わせたくくりです。

設備投資のほかにも、費用はかかりますか?

かかります。エネルギーの費用や通信容量の費用は、設備投資とは別の運用費用として、継続的に発生します。

Alphabetは、AIの開発と提供には従来より多くの計算力が要るため、こうした運用費用が大きく増える見込みだと開示しています。Metaも、エネルギーと帯域の費用を売上原価の構成要素として挙げています。建てて終わりではなく、動かし続けるお金が別に続きます。

この記事の内容はどこで確認できますか?

企業側の情報は、AlphabetとMetaとNVIDIAがSECへ提出した年次報告書で確認できます。設備の構成は、NVIDIAのDGX SuperPODの設計資料と、Google CloudのAI基盤のネットワーク解説、米国エネルギー省のデータセンター設計ガイドが出どころです。

いずれも参考資料のURLから誰でも読めます。

この連載の記事
→NVIDIAはなぜ強いのか?CUDA・HBM・AI工場から20年の積み上げまで解説
→半導体はなぜ一社で作れない?層ごとに独占企業が並ぶ業界構造を解説
→AIブームのお金はどこへ流れる?儲かる側とリスクを持つ側の構造を解説
→NVIDIAに弱点はある?決算資料から見えた3つのリスクと強さの裏側

参考資料

Alphabet Form 10-K, Fiscal Year 2025 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1652044/000165204426000018/goog-20251231.htm 閲覧日:2026年7月27日

Meta Platforms Form 10-K, Fiscal Year 2025 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1326801/000162828026003942/meta-20251231.htm 閲覧日:2026年7月27日

NVIDIA Form 10-K, Fiscal Year 2026 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1045810/000104581026000021/nvda-20260125.htm 閲覧日:2026年7月27日

NVIDIA DGX SuperPOD Reference Architecture (DGX H100) https://docs.nvidia.com/dgx-superpod/reference-architecture-scalable-infrastructure-h100/latest/dgx-superpod-architecture.html 閲覧日:2026年7月27日

NVIDIA DGX H100/H200 System User Guide https://docs.nvidia.com/dgx/dgxh100-user-guide/ 閲覧日:2026年7月27日

Google Cloud, GPU networking overview (AI Hypercomputer) https://docs.cloud.google.com/ai-hypercomputer/docs/networking-overview 閲覧日:2026年7月27日

U.S. Department of Energy, Best Practices Guide for Energy-Efficient Data Center Design https://www.energy.gov/cmei/femp/articles/best-practices-guide-energy-efficient-data-center-design 閲覧日:2026年7月27日

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