私はEvernoteを10年以上使っています。気がつけば、保存されているノートは約27,000件に達しました。Web記事のクリップ、PDF、日々のメモ、購入記録、ブログの材料など、とりあえず残しておきたいものを長年放り込んできた結果です。
ところがAIを日常的に使うようになって、ふと疑問が湧きました。
今でもEvernoteにお金を払い続ける意味はあるのだろうか。NotionやObsidian、あるいは他のツールに乗り換えたほうがいいのではないか、と。
そこで現在のEvernoteを改めて調べ直し、NotionやObsidian、さらにMac向けの高機能文書管理アプリであるDEVONthinkと比較してみました。
結論から言うと、私は今すぐEvernoteから全面移行するつもりはありません。ただし、「10年以上使ってきたから」「27,000件も入っているから」という理由だけで使い続ける気もありません。
そして検討を進める中で、私が行き着いたのは当初の予想とは少し違う結論でした。それは、「AI時代には、すべての情報を一つの万能ノートアプリへ集約する必要自体が薄れているのではないか」ということです。
なお、私はEvernoteについては長年の実体験がありますが、他のアプリを同条件で何年も使い込んだわけではありません。この記事は厳密な性能ベンチマークではなく、約27,000件のデータを抱える一人のユーザーが、AI時代のワークフローと情報管理を考え直した記録です。
今のEvernoteは、昔のイメージとはかなり違っていた
今回調べ直して、まず驚いたのがEvernoteそのものの変化でした。
私自身、どこかで昔ほど存在感のないノートアプリという印象を持っていました。しかし現在のEvernoteには、Semantic Search(意味検索)やAI Assistantなどが実装され、以前とはかなり違うサービスになっています。
Semantic Searchは、完全一致のキーワードではなく文脈や意味からノートを探す機能です。例えば「イタリア料理のレシピ」と検索した場合、その単語が書かれていなくても「ラザニアの作り方」といった関連ノートを候補として探せます。従来のキーワード検索やOCRのインデックスに、意味を理解する層が加わった形です。
AI Assistantはさらに踏み込み、自然言語でノートを検索したり、複数ノートをまとめたり、日付や名称などを探したりできます。回答の根拠となった参照ノートも表示され、ノートブック、タグ、期間で対象を絞り込むことも可能です。
これは、約27,000件のノートを持つ私にはかなり大きな変化でした。昔のEvernoteは「たくさん保存できるが、必要なときに自分でキーワードを工夫して探す場所」でした。それが現在では、「曖昧な記憶をもとに、AIに過去の情報を探してもらう場所」へと変わりつつあります。
まだめっちゃ使いやすいってほどの発展は遂げていませんが、Evernoteの今後のアップデートに期待しているところです。
外部AIからEvernoteを使えるMCPの登場
もう一つ興味深いのが、MCP(Model Context Protocol)への対応です。
Evernoteは現在、MCPサーバーをベータ提供しています。OAuthで接続することで、MCPに対応したAIからEvernoteを検索したり、ノートを読み書きしたりできます。公式にはChatGPT、Claude、Cursorなどでテストが進められています。
しかも単なる読み取り専用ではありません。意味検索、ノートの作成や編集、タグ操作、添付ファイルの取得など、28種類ものツールが用意されています。
つまり、Evernote自身のAIだけに頼る必要はありません。普段使っているAIに対して、例えば「EvernoteにあるApple Vision Pro関連の個人メモを探して、購入直後と現在で評価が変わった部分を整理して。参考記事ではなく、私自身の体験メモを優先して」と頼むような使い方ができます。
Evernote自身のAIが最も高性能である必要はありません。普段使うChatGPTなどから参照できる「自分の外部記憶」として機能してくれれば十分です。ただしMCPは現在もベータ版であり、ツールの仕様変更などの可能性もあるため、データの書き込みや削除は慎重に行う必要があります。
「AIで検索できる」と「27,000件を漏れなく調べられる」は別
ここで注意しなければならないのは、AI Assistantがどれだけ整った回答をしてくれても、27,000件を一件残らず確認したことにはならないという点です。
例えば「あのMacを買ったときのメモを探して」という特定のピンポイント検索と、「過去10年で、長期使用後に評価が変わった製品をすべて挙げて」という網羅性を求める質問とでは、必要とされる検索の質がまったく異なります。
AIの流暢な回答をそのまま事実として受け取るわけにはいきません。重要なのは、根拠となった元ノートまで戻れることです。特にブログなどの発信に使うなら、それが自分自身の感想なのか、保存したWeb記事の引用なのか、いつの情報なのかを原本で確認する作業が欠かせません。
AIは27,000件を魔法のように完全整理してくれるものではなく、埋もれていた過去の記録にたどり着くための新しい入口と考えるのが現実的です。
27,000件あること自体は、使い続ける理由にならない
もう一つ、考え直したことがあります。
以前の私は「Evernoteには27,000件もあるのだから、これを活用しないともったいない」と考えていました。しかし、よく考えれば27,000件の価値はEvernoteのものではありません。自分が10年以上かけて蓄積してきた記録そのものの価値です。
もし別のアプリへ安全に移行でき、添付ファイルや作成日、タグなども問題なく引き継げて、以前より便利になるのであれば、保存先をEvernoteにする必然性はありません。
継続するかどうかは、「27,000件あるから」ではなく、移行にかかる手間や欠損リスクと、乗り換えることで得られるメリットを比べて判断するべきだと思うようになりました。
その視点でNotion、Obsidian、DEVONthinkを検討したところ、それぞれの立ち位置が見えてきました。
Notion、Obsidian、DEVONthinkを実際に検討した結果
まずNotionですが、私は以前実際に使っていたものの、定着しませんでした。
データベースやプロジェクト管理、ステータス管理といったNotionの強みは認めています。しかし、現在の私はすでにGoogle Workspace(Google Docs、Google Sheets、Google Driveなど)を日常的に使っています。文書作成、表計算、ファイル管理、共同編集などはGoogle Workspaceですでに行えます。
さらに現在はChatGPTからGoogle Driveなどの情報を扱えるため、Notionにもう一度情報を集約する理由が以前より薄くなりました。Notionが悪いのではなく、私の現在のワークフローでは役割が重なってしまうため、現在は使わないという判断になりました。
次にObsidianです。ローカルのMarkdownファイルとしてデータを完全に自己所有できる点や、長期保存に対する設計思想は今でも非常に魅力的だと評価しています。
以前の私は、Obsidianで文章を書き、それをGitHubへ保存するための経由地点として使っていました。当時の流れは「自分 → Obsidian →GitHub」でした。
しかし現在は、ChatGPTから直接GitHub上のファイルを読んだり、新しく作ったり、修正したりできるようになりました。そのため現在のワークフローは「自分 →ChatGPT →GitHub」で完結します。Obsidianは良いアプリだと思いますが、実際に使ってみた結果、今の私には「Obsidianでなければならない用途」がなくなってしまったため、こちらも今は使わなくなっています。
最後にDEVONthinkです。Mac向けの本格的な文書管理アプリとして非常に興味深く、最新版ではMCPサーバーも搭載されています。資料管理という用途だけを見ればかなり魅力的です。ライセンスについても、購入すればその時点で利用できるバージョンは使い続けられます(新しいメジャーアップデートを継続する場合は更新費用が必要な仕組みです)。
ただ、実際に調べてみると日本語情報の少なさと学習コストの高さが気になりました。独自の概念が多く、トラブルが起きたときに解決策を見つけにくいのは不安です。約27,000件という資産をいきなり移行するのはリスクが大きすぎます。興味はあるものの、現時点で全面移行はせず、試すとしても特定のテーマに絞って小規模に触る程度にとどめることにしました。
各ツールに対する私の現状の評価を整理すると、以下のようになります。
| アプリ | その製品が得意なこと | 私の現在の判断 |
|---|---|---|
| Evernote | 雑多な情報の保存と柔軟な検索 | 継続してAIによる再利用価値を検証する |
| Notion | 構造化されたプロジェクトや業務の管理 | 実際に使ったが、Google Workspaceと役割が重なるため使わない |
| Obsidian | ローカルMarkdownによる長期的な知識管理 | 実際に使ったが、ChatGPTから直接GitHubを扱えるため用途がなくなった |
| DEVONthink | Mac環境における本格的な資料・文書管理 | 興味はあるが、学習コストや移行リスクを考慮して全面移行は保留 |
一つのアプリへ集約しない、AI時代の情報管理
こうして比較していくうちに、ひとつの重要な気づきがありました。
記事を書き始めた当初の疑問は「Evernote、Notion、Obsidianの中で、どれが最強のノートアプリか」でした。しかし、すべての情報を一つのノートアプリへ集約する必要性そのものが薄れてきたのではないか、ということです。
かつては、一つのアプリに情報をまとめておかなければ、横断的な検索や情報の再利用が困難でした。しかし現在は、AIが複数の保存先へ直接アクセスできるようになっています。
そのため、無理に一つのツールに統一するよりも、それぞれに適した場所へデータを置いておき、必要に応じてAIから横断して利用するほうが合理的です。
現在の私の運用では、以下のように役割を整理しています。
| 役割 | 使用するもの |
|---|---|
| 過去の記録・Webクリップ・雑多な資料 | Evernote |
| 現在作っている文章・表・ファイル | Google Workspace |
| コード・Webサイト・バージョン管理 | GitHub |
| それらを横断して検索・分析・執筆・操作 | ChatGPT |
私が日々の作業で迷わないための運用ルールとして、「作るものはGoogle Workspace。忘れていいものはEvernote。」と決めています。
AI時代においては、一つの万能ノートアプリを選ぶことより、適した場所にデータを分散して配置し、AIを共通のインターフェースとして横断利用することのほうが重要になってきたと感じています。
Evernoteは「考える場所」ではなく「忘れていい場所」
この整理ができたことで、Evernote本来の強みもはっきり見えてきました。
保証書やPDFを保存するだけなら他のクラウドでも可能です。それでもEvernoteを長年使い続けられたのは、Webクリップ、PDF、画像、メモ、OCR、検索、同期がひとつの場所にまとまっているからです。
保存するたびに「どのフォルダに入れるか」「どんなプロパティを付けるか」と悩む必要がありません。多少雑であっても、とりあえず放り込んでおける手軽さがあります。
目的は綺麗なデータベースを作ることではなく、未来の自分が必要としたときに見つけ出せることです。そう考えると、Evernoteは思考を深める場所というより、「安心して忘れるための場所」と捉えるのが一番しっくりきます。
覚えておく必要のない情報を預けておき、必要になったときに検索やAIに思い出してもらう。これが、現在のEvernoteに最も合った使い方です。
だからこそ、私は過去27,000件のノートを今さら手作業で整理し直すつもりはありません。膨大な時間をかけて昔のノートにタグを付け直すのではなく、過去のノートは「整理するのではなく、検索する」という方針でどこまで活用できるかを試します。
一番やってみたいのは「過去の自分を検索する」こと
保証書や過去の書類を探すだけでなく、約27,000件の記録があるからこそできる面白い使い方があります。それは「過去の自分を検索する」ことです。
「ある製品を買った直後、自分は何を評価していたのか」
「長く使い続ける中で、評価はどう変わったか」
「以前同じトラブルに遭遇したとき、どうやって解決したか」
「数年前と今とで、自分の考え方はどう変わったか」
こうした記録の多くは、保存したこと自体を忘れています。新しく別のアプリを使い始めても、そこには過去のデータが存在しません。Evernoteには、すでに10年分の思考や生活のログが眠っています。
使い続ける意味があるとすれば、27,000件あるからではなく、その中から今まで取り出せなかった過去の知見を掘り起こせるからです。
まとめ:昔の自分に、今日もう一度会うために
最初は「どのノートアプリに乗り換えるべきか」という疑問から始まりました。しかし実際に検討した結果、一つのツールにすべてを任せる必要はないという答えに至りました。
現在の作業はGoogle Workspaceで行い、コードやサイトはGitHubで管理し、それらをChatGPTで横断的につなぐ。そしてEvernoteは、過去10年以上の記憶を預けておく場所として活用する。これが今の私にとって最も無理のない情報管理の形です。
ただし、27,000件あること自体には意味がありません。誰にも使われず、二度と見つけられないデータなら、単に容量を消費しているだけです。
AIの力を借りて、埋もれていた昔の体験が見つかる。過去の失敗を繰り返さずに済む。必要な資料へすぐに戻れる。そうなって初めて、過去の記録は真の資産になります。
10年間溜め込んできたEvernoteの情報が、AI時代の今、真価を発揮するのかもしれません。

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