冷蔵庫の側面はなぜ熱い?中を冷やす仕組みと熱の行き先【いまさら聞けない】

「冷蔵庫の側面はなぜ熱い?」の見出しと、青い庫内に食品が入り、側面から熱が出ている冷蔵庫。中を冷やす仕組みと熱の行き先を示す表紙。 科学・歴史・文化
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中の飲み物はしっかり冷えているのに、冷蔵庫の側面は温かい。物を冷やすための家電なのに、なぜ熱を持つのでしょうか。

冷蔵庫は、食品や庫内の空気から熱を受け取り、外へ運び出すことで中を冷やしています。外側が温かくなるのは、その熱を周囲へ逃がしているためです。さらに、運転に使った電気のエネルギーも、最後には熱として加わります。

放熱によって外側が温かくなること自体は、通常の運転でも起こります。ただし、熱さだけでは故障かどうかを判断できません。焦げ臭いにおいや、電源コード・プラグの異常な発熱がある場合は使用を中止し、点検を依頼してください。

こうした注意点を踏まえたうえで、冷やした食品から取り出した熱がどこへ向かうのか、その道のりをたどってみましょう。

冷やした飲み物の熱は、どこへ行く?

室温の飲み物を冷蔵庫に入れると、しばらくして冷たくなります。このとき、飲み物の持っていたエネルギーの一部が、熱として外へ移っています。

その熱を冷蔵庫の中にため込んだままにすると、やがて庫内を冷やせなくなります。そこで冷蔵庫は、受け取った熱を庫外へ運び出し、周囲の空気などへ逃がします。ここでいう「外」は、屋外ではなく、冷蔵庫を置いているキッチンです。

この熱を逃がす仕組みが「放熱」です。本体の外板の内側に放熱用の配管が通っている機種では、その部分が温かくなります。

熱を逃がす場所は機種によって異なり、側面や背面、前面、上部などさまざまです。すべての冷蔵庫で、同じ面が同じように熱くなるわけではありません。

扉まわりを温めて、結露を防ぐ機種もある

扉周りの表面温度が露点より低い場合は水滴がつき、露点より高い場合はつかない例を比較。冷たい面は青、温めた面は赤で示している。

外側の温かさには、結露を防ぐ役割もあります。

冷えたグラスに水滴がつくように、冷蔵庫の表面も、周囲の空気の「露点」より低温になると結露します。露点は、その空気を冷やしたときに結露が始まる温度の目安です。表面を温めると、露点を下回りにくくなります。

扉の周りに放熱用の配管を通して結露防止を兼ねる機種や、仕切り板などを電気ヒーターで温める機種があります。温める場所や仕組みは、機種によって異なります。

水滴ができる条件は、冷たいコップに水滴がつく理由で詳しく説明しています。

冷たい庫内から、暖かい室内へ熱を運ぶには

熱は、自然には温度の高いほうから低いほうへ移ります。冷たい飲み物を机に置いておくとぬるくなるのも、周囲から飲み物へ熱が入るためです。

ところが冷蔵庫は、室内より冷たい庫内から熱を取り出し、もっと暖かい室内へ運びます。そのまま置いておけば起こる熱の移動とは、向きが逆です。

このために、外からエネルギーを与える必要があります。家庭の冷蔵庫では、電気で機械を動かして熱を運びます。こうした仕組みを「ヒートポンプ」と呼びます。水を低い所から高い所へくみ上げるように、熱を低温側から高温側へ運ぶ仕組みです。

では、どうすれば逆向きに運べるのでしょうか。鍵になるのは、熱を受け取る場所と、熱を渡す場所で、配管を流れる物質の温度を変えることです。

熱を運ぶ「冷媒」の一周をたどる

一般的な家庭用冷蔵庫には、熱を運ぶ役割を持つ「冷媒」という物質が入っています。ここでは、圧縮機を使う方式の流れを見ていきましょう。

冷媒は配管の中を循環し、液体と気体の状態を行き来します。庫内に吹き出す冷たい空気そのものではなく、食品に直接触れるものでもありません。

冷却器では、冷媒が周囲から熱を受け取って液体から気体へ変わり、凝縮器では、熱を放出しながら気体から液体へ戻ります。冷蔵庫は、この変化を別々の場所で繰り返します。まずは、冷媒が巡る一周の流れを整理してみましょう。

  1. 冷却器:庫内の熱を受け取る。
  2. 圧縮機:冷媒の圧力と温度を上げる。
  3. 凝縮器:熱を外へ放出する。
  4. キャピラリチューブなど:圧力を下げ、低温の状態に戻す。
冷却器、圧縮機、凝縮器、細い管を時計回りに巡る冷媒。冷却器で庫内の熱を受け取り、凝縮器で室内へ放熱する流れを示している。

4を通った冷媒は再び1へ戻ります。冷やす工程から順に、それぞれの場所での働きを見ていきましょう。

冷却器で、庫内の熱を受け取る

庫内を冷やす「冷却器」には、温度も圧力も低い状態の冷媒が流れています。冷却器は「蒸発器」とも呼ばれます。

冷媒の液体部分が気体になるとき、周囲から熱を受け取ります。冷却器が庫内の空気などより低温になっているため、庫内側から冷媒へ熱が移り、空気や食品が冷えていきます。ファンで冷却器に風を当て、冷えた空気を庫内へ送る機種もあります。

「気体になる」と聞くと、お湯が沸騰するような高温を思い浮かべるかもしれません。ただし、沸騰する温度は物質の種類や圧力によって変わります。冷蔵庫では、冷媒の性質と配管内の圧力を利用して、低い温度で液体が気体になる条件をつくっています。

状態変化に熱が必要なことや、沸点が圧力で変わることは、洗濯物の乾き方から考える、蒸発と沸騰の違いで詳しく説明しています。

圧縮機で、外へ熱を渡せる温度にする

熱を受け取って気体になった冷媒は、「圧縮機」に入ります。コンプレッサーとも呼ばれる、冷媒を圧縮する装置です。

電気で動く圧縮機が気体の冷媒を押し縮めると、圧力と温度が上がります。こうして冷媒を室内の空気より高温にすることで、次の場所で熱を外へ逃がせるようになります。

冷やしたいはずなのに、わざわざ熱くする。一見不思議に思えますが、暖かい室内へ熱を逃がすために必要な段階です。

凝縮器で、熱を外へ渡す

高温・高圧になった冷媒は、熱を外へ逃がす「凝縮器」に進みます。

冷媒が周囲より高温なので、熱は冷媒から室内側へ移ります。冷媒は熱を放出しながら、気体から液体へ変わっていきます。この変化が「凝縮」です。

本体の外板を通して熱を逃がす構造なら、その外板も温まります。冒頭の「冷蔵庫の外側が温かい」という現象が、ここにつながります。

キャピラリチューブなどで圧力を下げる

液体になった冷媒は、キャピラリチューブと呼ばれる細い管などを通り、圧力が下がります。

その途中で冷媒の一部が気体になり、温度が下がって、低温・低圧の液体と気体が混ざった状態になります。ここで全部が気体になるのではなく、残った液体が、次の冷却器で庫内の熱を受け取りながら気体になります。

こうして冷媒が一周し、同じ流れを繰り返します。

熱を受け取る場所では冷媒を庫内より低温にし、熱を渡す場所では室内より高温にする。それぞれの場所では、熱は高温側から低温側へ移っています。 冷媒を循環させ、その途中で圧縮と減圧を行うことで、全体としては冷たい庫内から暖かい室内へ熱を運べるのです。

外へ出る熱には、電気のエネルギーも加わる

外へ逃げる熱は、食品から取り出した分だけでしょうか。

ここで加わるのが、圧縮機を動かすエネルギーです。圧縮機が冷媒を押し縮めるとき、冷媒にエネルギーを与えています。このように力を加えて物を動かし、エネルギーを渡すことを、物理では「仕事」と呼びます。

冷媒が一周して同じ状態に戻る基本的なサイクルでは、エネルギーの収支は次のようになります。

外へ放出する熱 = 庫内から受け取った熱 + 冷媒に加えられた仕事

基本的な冷媒サイクルで、庫内から受け取った熱に圧縮で加えた仕事を足すと、室内へ出る熱になる関係を、足し算の形で表している。

たとえば、庫内から100の熱を受け取り、冷媒に40の仕事を加えると、外へ出る熱は140です。数字は、同じエネルギーの単位で比べた説明用の例です。

実際に使う電気のエネルギーは、冷媒を圧縮する仕事やファンの動力、モーターなどの発熱に分かれます。熱が外へ出る経路は凝縮器だけではありませんが、どの経路を通っても、使った電気のエネルギーは最終的に熱として周囲へ出ていきます。

扉を開けっぱなしにすれば、部屋も冷える?

冷蔵庫の扉を開けると、ひんやりした空気を感じることがあります。それなら「扉を開けたままにすれば、部屋の冷房にも使えるのでは」と思うかもしれません。

しかし、冷蔵庫が吸い取った熱は、同じ部屋へ戻されます。そこに運転に使った電気の分も加わるので、部屋全体の冷房にはなりません。

冷蔵庫と部屋をひとまとめにし、外との熱の出入りがないと考えると、全体のエネルギーは電気の分だけ増えます。扉の前で一時的に冷たく感じることと、部屋全体を冷やすことは別なのです。

扉を開けたままにして試す必要はありません。食品の温度を保つためにも、開閉は必要な範囲にとどめましょう。

断熱と放熱は、どちらも必要

冷たい庫内を囲む断熱壁と、温かい側面から熱を逃がすための壁との隙間を示す。必要な隙間は機種ごとに確認すると記している。

冷蔵庫の壁には、周囲から庫内へ熱が入りにくくなるよう、断熱の工夫がされています。

これは、魔法瓶が熱の移動を抑えて、保温も保冷もする仕組みと共通する考え方です。ただし、魔法瓶と冷蔵庫で構造がすべて同じというわけではありません。冷蔵庫には、入り込んだ熱や食品の熱を、電気を使って外へ運び出す働きもあります。

「庫内へ入る熱は抑えたい」けれど、「外へ運び出した熱は逃がしたい」。この二つの役割を分けて考えると、冷蔵庫の置き方にも理由が見えてきます。

  • 放熱する面や通気口をふさがない。物を密着させると、熱を外へ渡しにくくなります。
  • 本体を断熱材やカバーで覆わない。「保冷したいから」という工夫でも、放熱を妨げてしまいます。
  • 周りの隙間は、取扱説明書の設置条件に合わせる。必要な面や寸法は機種によって異なるため、一律に何cmとは決められません。

外側の熱さだけで、故障とは決められない

設置したばかりで庫内を冷やしているとき、室温が高いとき、食品を一度にたくさん入れたとき、扉の開閉が多いときなどは、放熱が増えることがあります。

そのため、外側が温かいというだけでは、故障とは判断できません。一方で、冷えが弱い、エラーが出ているなど、普段と違う様子があれば、取扱説明書を確認し、販売店やメーカーに相談してください。焦げ臭いにおいや、電源コード・プラグの異常な発熱がある場合は、使用を中止し、点検を依頼します。

確かめようとして熱い面に長く触れたり、底に手を入れたり、分解して配管を触ったりしないでください。可燃性の冷媒を使う機種もあり、配管を傷つけて冷媒が漏れると、火災などの危険につながります。

エアコンの室外機も、熱の行き先を見れば分かる

冷蔵庫は庫内から側面を経て室内へ放熱し、エアコンは室内機で受け取った熱を室外機から屋外へ逃がす。赤い矢印で熱の行き先を比較。

エアコンの冷房も、室内から熱を取り出し、外へ運ぶ仕組みです。室内機で受け取った熱を、室外機から屋外へ逃がします。

冷蔵庫が「庫内からキッチンへ」熱を運ぶのに対し、エアコンの冷房は「部屋の中から屋外へ」熱を運びます。冷やしたい範囲の外に熱を出すことで、その範囲を冷やし続けられます。

冷たい風の出口だけでなく、受け取った熱を逃がす出口もある。冷蔵庫とエアコンは、この点で同じ仲間です。

まとめ

冷蔵庫の外側が温かくなるのは、庫内から運び出した熱を、外へ逃がしているためです。さらに、運転に使った電気のエネルギーも、熱として周囲へ加わります。機種によっては、結露を防ぐために温めている部分もあります。

一般的な家庭用冷蔵庫では、冷媒が液体と気体を行き来しながら循環します。庫内側では低温になって熱を受け取り、圧縮機で高温になった後、室内側へ熱を放出します。

中を冷やす働きと、外へ熱を逃がす働きは、ひと続きです。冷えた飲み物の熱は、なくなったのではなく、冷蔵庫を通ってキッチンへ移っています。そう考えると、外側の温かさも、周りに隙間を空けて置く理由もつながって見えてきます。

参考資料

日本冷凍空調学会「冷凍サイクルの書き方(2)」(冷媒の状態変化、減圧後の気液混合状態)
https://www.jsrae.or.jp/E-learning/saikuru2/saikuru2.html

東芝ライフスタイル「冷蔵庫が冷えるしくみについて知りたい」(家庭用冷蔵庫の圧縮式サイクル)
https://faq-toshiba-lifestyle.dga.jp/answer.html?category=1126&id=96&page=1

OpenStax『University Physics Volume 2』4.3 Refrigerators and Heat Pumps(冷蔵庫の熱移動とエネルギー収支)
https://openstax.org/books/university-physics-volume-2/pages/4-3-refrigerators-and-heat-pumps

国立環境研究所「ヒートポンプ」(低温側から高温側へ熱を運ぶ仕組み、エアコンとの関係)
https://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=11

Panasonic「冷蔵庫の側面が熱い」(放熱する場所と、放熱が増える使用条件)
https://jpn.faq.panasonic.com/app/answers/detail/a_id/9818/

シャープ「冷蔵庫の前面や側面が熱い」(放熱と、機種ごとの設置スペース)
https://cs.sharp.co.jp/trouble_check/div/refrigerator/navi/sj_diag03ro.html

三菱電機「外側が熱くなる。床から風が出る。」(放熱・露付防止パイプ、扉の仕切りの露付防止ヒーター)
https://faq01.mitsubishielectric.co.jp/faq/show/618?site_domain=default

三菱電機「冷蔵庫を安全にお使いいただくために」(冷媒の漏れ、配管や本体の取り扱い上の注意)
https://www.mitsubishielectric.co.jp/use/seihin/reizouko/index.html

Panasonic「冷蔵庫 サポート」(異常の兆候と使用中止・点検の案内)
https://panasonic.jp/reizo/support/

資料確認:2026年11月8日

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