堤聖也vsドネア感想|4Rの大ピンチから判定勝ちした激闘王の凄さ

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※この記事は、もともと堤聖也vsノニト・ドネア戦の試合前プレビューとして書いたものを、試合後レビューとしてリライトしたものです。

堤聖也選手が、ノニト・ドネア選手に勝ちました。

結果は2-1の判定勝ち。スコアは115-113、117-111で堤選手。もう1人のジャッジは116-112でドネア選手を支持しており、見方がかなり割れた試合でした。堤選手はこの勝利でWBA世界バンタム級王座の団体内統一に成功し、2度目の防衛を果たしています。

ただ、「堤がドネアに勝った」と結果だけで片づけるには、あまりにも中身の濃い試合でした。

4R終了間際、ドネア選手の右ストレートから右アッパーが入り、堤選手の膝がガクッと折れる。あの瞬間、本当に試合が終わってもおかしくなかった。それでも倒れない。5Rをしのぎ、6R以降に少しずつ前に出て、終盤に流れを取り戻していく。

いやー、堤聖也という選手は、つくづく不屈です。

ちなみに私は、この試合をSonosのホームシアター環境で観ていました。パンチの衝撃音、会場のどよめき、ラウンド間の空気感がかなり生々しく伝わってきて、4R終了間際の大ピンチは普通に観るよりもさらに心臓に悪かったです。こういう激闘系のボクシングは、音がいい環境で観ると没入感がかなり変わると改めて感じました。


試合結果

2025年12月17日、東京・両国国技館で行われたU-NEXT BOXING.4のメインイベント。WBA世界バンタム級正規王者の堤聖也選手と、暫定王者ノニト・ドネア選手による団体内王座統一戦でした。

スコアは次の通りです。

・115-113 堤聖也
・117-111 堤聖也
・116-112 ノニト・ドネア

堤選手がWBA世界バンタム級王座を統一し、2度目の防衛に成功しました。

ただ、このスコアは見るほどに考えさせられます。

115-113と117-111では評価がかなり違うし、そのどちらでもなく116-112でドネア選手を選んだジャッジもいる。同じ試合を見ていても、これだけ印象が割れる。それが今回の試合の実相だったと思います。


「前半ドネア、後半堤」の12ラウンド

この試合を一言で表すなら、「前半ドネア、後半堤」です。

山中慎介さんも同様の分析をしていて、序盤はドネア選手が距離感と手数でポイントを拾い、堤選手は一発を警戒して慎重に入っていたと語っています。

まさにその通りの展開でした。

序盤のドネア選手は、43歳とは思えないほど落ち着いていました。無理に攻め込まず、リング中央でプレッシャーをかけながら、ジャブを突いて堤選手の入り際に右や左フックを合わせていく。全盛期のような爆発的なスピードではないかもしれないけれど、「どこで打てば相手が嫌がるか」を知っている。そういう試合巧者の怖さがありました。

堤選手も動いてはいましたが、いつものように積極的に前へ出るよりも、明らかに慎重に見えた。それは当然で、相手はあのドネア選手です。しかも今回のドネア選手は、よく知られた左フックだけじゃなかった。右ストレートも、右アッパーも怖かった。むしろ、堤選手を本当に追い詰めたのはその右の連打でした。


4R終了間際、堤聖也は本当に危なかった

最大の山場は、やはり4R終了間際です。

ドネア選手の右ストレートから右アッパーが入り、堤選手の膝が折れた。見ていて思わず声が出ました。「終わったかもしれない」と感じた人は、決して少なくなかったと思います。

ダウンこそありませんでしたが、明らかに効いていた。しかもゴングが救ったように見えた場面で、あと10秒から15秒あればドネア選手が一気に詰めていた可能性は十分にあります。

ただ、あの試合の本当の分岐点は4Rだけではなく、その直後の5Rだったと思います。

浜田剛史さんは、4Rの右アッパーはかなり効いていてダメージが5Rにも持ち越されており、ドネア選手が5Rに攻め込んでいたら堤選手は危なかったと分析しています。

つまり、堤選手の真骨頂は4Rの一発を耐えたことだけではない。ダメージが残る5Rを何とかしのぎ、6R以降の反撃につなげたこと。そこにあったのだと思います。


5Rをしのいだから、後半の巻き返しが生まれた

4R終了間際に大きなダメージを受けた選手が、次のラウンドで崩れるのはよくある話です。

でも堤選手は崩れなかった。

完全に立て直したというより、何とか耐え抜いた、という感じでしたが、その「何とか」が大きかった。5Rで生き延びたことが、6Rからの反撃につながった。浜田さんの分析もそこを評価しています。

6R以降、堤選手は少しずつ前に出る時間を増やしていきます。ドネア選手をロープに詰め、コンビネーションをまとめ、手数を出す。もちろんドネア選手もカウンターを返してくるので一方的ではないけれど、「堤が試合を動かしている時間」が後半になるにつれて増えていきました。

ここに堤聖也という選手の怖さがあります。

相手の良さを封じて淡々と勝つタイプではない。打たれて、危うい場面を作られて、見ている側がヒヤヒヤする。それでも試合から消えない。一度「負けの流れ」に入りかけても、そこから戻ってくる。


判定が割れた理由。有効打のドネア、山場を作った堤

判定2-1という結果に対して、「ドネアが勝っていてもおかしくなかった」という声があっても不思議ではありません。

ドネア選手は前半に明確な有効打を当て、4Rには堤選手をダウン寸前まで追い込んだ。ジャブもよく、右もよく、入り際に合わせるタイミングはさすがの一言でした。

一方の堤選手は、後半にロープ際へ押し込みコンビネーションで山場を作り、10Rから12Rのラウンドを取りにいった。

ボクシングの採点は、最も派手な一発を当てた方が勝ちというルールではありません。ラウンドごとに有効打、攻勢、防御、主導権が評価される。ドネア選手のクリーンヒットを重く見れば「ドネア勝ち」、堤選手の後半の攻勢と終盤の山場を重く見れば「堤勝ち」。だからこそ割れた結果になったのだと思います。

個人的には、堤選手の勝利に納得しています。ただ、ドネア選手を支持したジャッジの判断がまったく的外れだとも思いません。それほどの接戦でした。


ドネアは負けてもなお凄かった

この試合で改めて実感したのは、ドネア選手の凄みです。

43歳、しかも軽量級で。それで世界戦のメインイベントに上がり、29歳の現役王者をあそこまで追い詰める。序盤の距離感、ジャブ、右ストレートと右アッパー、カウンターのタイミング。どれをとっても「衰えたレジェンド」の仕事ではありませんでした。

試合後、ドネア選手は左手の拳4本すべてが傷ついていたことを明かしながら、それだけパンチを当てても堤選手が倒れなかったことを語っています。スポニチの報道によれば「全てを出し切った」「タフな相手だった」という言葉も残しています。

ドネア選手ほどのレジェンドに「倒れなかった」と言わせた。その事実が、堤選手の勝利の重さをよく表していると思います。


堤聖也の勝因は「倒れないこと」だった

この試合における堤選手の最大の勝因は何だったか。

スピード、テクニック、スタミナ、手数。どれも必要だったけれど、一番大きかったのは「倒れないこと」だったのではないでしょうか。

強いパンチをもらい、ダウン寸前まで追い込まれ、鼻を負傷しても、試合を投げなかった。しかもただ耐えるだけでなく、後半に自分から前へ出ていった。

堤選手の試合は、毎回心臓に悪い。スマートに勝てるタイプの王者ではないと思います。でも、見終わったあとに「すごいものを見た」と思わせる力がある。井上拓真戦も比嘉大吾戦も今回のドネア戦もそう。堤聖也選手の試合にはハズレがない、と感じるのはきっとそういう理由です。


令和の激闘王という呼び方が似合いすぎる

「強い王者」というより、「激闘を背負ってしまう王者」という感じがします。

相手の強さを受け止め、ピンチになって、そこから巻き返す。結果として毎回ドラマになる。選手としては大変だと思うし、ダメージの積み重ねも心配です。でも、観る側からすれば、とんでもなく引き込まれる。

今回のドネア戦もそうでした。4Rのピンチがあったからこそ、後半の巻き返しがより熱く見えた。ドネア選手が本当に強かったからこそ、堤選手の勝利がより重くなった。ただの防衛戦ではなく、堤聖也という選手の「勝ち方」と「危うさ」が両方出た一戦でした。

勝利の代償。鼻骨骨折とバルガス戦の延期

ただし、この試合は勝って終わりではありませんでした。

堤選手はドネア戦で鼻骨を骨折し、4時間に及ぶ手術を受けたと報じられています。その影響でアントニオ・バルガス選手とのWBA世界バンタム級王座統一戦は延期となりました。WBAからはドネア戦の勝者に対し、120日以内にバルガス選手と対戦するよう義務づけられていたとも伝えられています。

激闘王スタイルは見ていて最高に面白いけれど、体への負担は確実に積み重なっていく。次の試合では、「打たれても勝つ」だけでなく、「打たせずに勝つ」堤選手も見てみたいと思いました。


ドネアのその後。増田陸戦で見えたキャリア終盤の現実

ドネア選手についても、その後の動きを記録しておきたいです。

2026年3月15日、ドネア選手は増田陸選手とWBA世界バンタム級挑戦者決定戦で対戦し、8R 1分12秒TKO負けを喫しています。増田選手はこの勝利でWBA王者への指名挑戦権を獲得しました。

これを踏まえると、堤戦のドネア選手をどう評価するかは少し複雑になります。

「やはりキャリア終盤だった」とも言えるし、「そのキャリア終盤のドネアが、堤をあそこまで追い詰めた」とも言える。

私は後者の印象が強いです。序盤から中盤にかけての完成度と、一発の怖さは本物だった。だからこそ、堤選手の勝利は軽く見られないと思います。


試合前の見立てと、答え合わせ

この記事はもともと試合前プレビューとして書いたものでした。

そのときの大きな構図は「若さと手数の堤聖也 vs 経験と一発のノニト・ドネア」。振り返ると、試合はかなりその通りの展開になりました。

試合前の読みとして、「堤が勝つなら判定、ドネアが勝つなら一発」と考えていました。

実際もほぼその通りで、ドネア選手は4Rの右アッパーで試合を終わらせかけ、堤選手は後半の手数と圧力で判定に持ち込んだ。

ただ、想定より上回ってきたのはドネア選手の右の怖さです。試合前はどうしても「ドネア=左フック」のイメージが先行していましたが、右ストレートと右アッパーが試合の流れを大きく変えた。そこは自分の見立てが甘かった点です。

試合前の情報をそのまま消すのではなく、「予想の答え合わせ」として残しておく。個人ブログの記事としては、その方が自然だと思っています。


まとめ。堤が勝った。でもドネアも凄かった。

改めて振り返っても、すごい試合でした。

前半はドネア選手が優勢に進め、4Rにはダウン寸前の場面まであった。ダメージの残る5Rを何とかしのいで、6R以降に少しずつ試合を取り戻し、後半の山場を作って判定勝ちを手繰り寄せた堤選手。

一方で43歳のドネア選手は、序盤の技術も4Rの一撃も「まだ世界戦を壊せる」怖さを持った選手のそれでした。

ドネア選手が強かったからこそ、堤選手の勝利が重くなった。そういう試合です。

安心して見られる王者ではないかもしれない。でも、気づいたら応援してしまう。危ない、怖い、それでも最後まで諦めない。これぞ堤聖也。令和の激闘王という言葉が、ここまで似合う選手もなかなかいないと思います。

次の試合も、きっと心臓に悪い。でも、また見てしまうんですよね。


参考にしたサイト

・Boxing News「堤聖也がドネアに2-1判定勝ち 4回のピンチ脱し追い上げ奏功す」
https://boxingnews.jp/news/113987/

・WBA公式「Tsutsumi Retains WBA Title with Split-Decision Win Over Donaire」
https://www.wbaboxing.com/boxing-news/tsutsumi-retains-wba-title-with-split-decision-win-over-donaire

・Sportiva「山中慎介が語る激動のバンタム級戦線」
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/othersports/fight/2026/02/05/post_12/

・スポニチ「浜田剛史の目 堤、評価できる勝負根性」
https://www.sponichi.co.jp/battle/news/2025/12/18/articles/20251218s00021000036000c.html

・日刊スポーツ「ドネア、左手拳4本に血マメ 堤聖也の勝因分析」
https://www.nikkansports.com/battle/news/202512170001634.html

・スポニチ「ドネア、終盤失速 全てを出し切った」
https://www.sponichi.co.jp/battle/news/2025/12/18/kiji/20251218s00021000050000c.html

・Boxing Master「堤聖也 負傷癒えず アントニオ・バルガス戦は延期」
https://boxing-master.com/news/seiya-tsutsumis-injury-has-not-healed-the-wba-world-bantamweight-title-unification-bout-against-antonio-vargas-has-been-postponed/

・スポニチ「増田陸がドネアに8回TKO」
https://www.sponichi.co.jp/battle/news/2026/03/15/kiji/20260315s00021000229000c.html

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