2026年9月10日、京セラドーム大阪で開催された「超RIZIN.5」をABEMAで見ました。
今回はかなり面白い大会でした。
特に印象に残ったのが、上を目指している選手たちがトップ選手の壁にぶつかる試合が続いたことです。
一方で、メインのラジャブアリ・シェイドゥラエフとAJ・マッキーの試合では、これまでほとんど見られなかったシェイドゥラエフの「隙」のようなものも見えました。
3試合目から最後の試合まで、実際に見ていて感じたことを書いていきます。
今回もSonosのホームシアターシステムで視聴していましたが、やっぱり格闘技の声援は格別にゾワゾワしますねぇ。
ヴガール・ケラモフ vs 高木凌
個人的には高木凌に勝ってほしかった試合です。
ケラモフは以前ほどの勢いがなくなっているようにも感じていました。コンディションが少し落ちているのかなと思うこともありました。
ただ、実際に試合を見ると、やっぱりケラモフは強かったです。特に相変わらずのレスリング力でした。
テイクダウンを取って、そのまましっかりポジションを維持する。パワーもありますし、一度いい形になったら簡単には逃がしてくれません。
高木凌は飛び膝などの大きな打撃を狙っていました。当たれば一気に試合を終わらせられる可能性がありますが、あのレベルの相手にそれを当てるのはやっぱり難しいです。
見ながら「もう少しジャブを使ってもいいんじゃないかな」と思いました。
大きな技が当たれば勝てる。でも、それが当たらないと攻撃のきっかけ自体を作りにくい。
カウンターを狙うスタイルはある程度までは通用します。でもトップレベルになると、相手もただ前に出てくるわけではありません。自分から攻撃して、相手に対応させる必要があります。
もちろん、自分から攻撃すればカウンターをもらう危険がありますし、高木凌の場合は打撃を出したところにケラモフがタックルを合わせてくる危険もあります。
だから簡単ではありません。
ただ、この試合では少し受けに回ってしまったように感じました。
ケラモフにテイクダウンを取られて、いいポジションを取られて、そこからじわじわ削られていく。
トップ選手を相手にすると、こういうところが本当に厳しいです。ここを越えるのは難しいですよね。
それでも高木凌はまだまだ伸びる選手だと思いますし、この経験をどう次につなげるのかは楽しみです。
斎藤裕 vs YA-MAN
正直に言うと、戦前はYA-MANが勝つと思っていました。
斎藤裕は第一線から離れていましたし、約2年ぶりの試合です。一方のYA-MANは金原正徳にも勝っていて、上がってきている選手です。
YA-MANの目の負傷だけは少し気になっていましたが、試合前の映像を見る限りでは練習もできているように見えました。
打撃でYA-MANが攻めて、斎藤裕がテイクダウンを狙う。そしてテイクダウンを切られ続けたところでYA-MANがKOする。
そんな展開を予想していました。
ところが、全然違いました。斎藤裕がめちゃくちゃ強かったです。
ここ数年で一番強かったんじゃないかと思うくらいでした。特に良かったのが、YA-MANに対して下がらなかったことです。
下がらないからこそ、テイクダウンに入りやすい。そしてテイクダウンを取ったあとも、かなり丁寧にポジションを維持していました。
ここを見ていて、斎藤裕がRIZINの試合にかなりアジャストしたのかなと思いました。
以前の斎藤裕は、テイクダウンを取っても動きが少ないとレフェリーからブレイクをかけられて、スタンドに戻されてしまうことがありました。
今回は、レフェリーから「アクション」と言われたらしっかり動く。これを徹底していたように見えました。
だからポジションを維持したまま、YA-MANを少しずつ削っていけました。
バックも何度も取っていました。そこから一本を狙うこともできたと思いますが、無理に仕留めにいかなかったのも良かったです。
無理に動いてYA-MANに逃げるチャンスを与えるよりも、そのままコントロールして勝つ。
そんな判断をしていたように感じました。派手な勝ち方ではありませんでしたが、ものすごく完成度の高い試合だったと思います。
長期離脱していたベテランが、勢いのある若い選手を相手にこれだけしっかり勝ち切るのは本当にすごいです。
YA-MANからすると絶望の試合でしたね。どんな試合でも熱戦にするのがYA-MANというイメージでしたが、今回は本当になにもできなかった。
というより、斎藤裕になにもさせてもらえなかった試合でした。
ホベルト・サトシ・ソウザ vs 野村駿太
ホベルト・サトシ・ソウザと野村駿太の試合も、上を目指す選手にとっての壁を感じる内容でした。
サトシは前の試合で、テイクダウンに入ったところに膝を合わせられてKOされています。なので、今回はテイクダウンに行くことに少し怖さが出るんじゃないかと思っていました。
でも、そんな心配はいらなかったです。サトシはやっぱり強かったです。
野村駿太のディフェンスもかなり良かったです。サトシにバックを取られても、簡単には一本を取らせませんでした。
ただ、ディフェンスだけでは試合には勝てません。
どこかでリスクを取って攻撃しないといけない。野村駿太もそこは分かっていたと思いますが、サトシを相手にすると、そのリスクを取るのが難しかったのかなと思いました。
攻撃に出れば、その瞬間にサトシに極められる可能性があります。守ることはできても、そこから自分の攻撃につなげられない。
このあたりも、やっぱりトップ選手の壁なんだと思います。
野村駿太にはかなり期待しているので、今回の経験をどう生かしていくのか楽しみです。
カルシャガ・ダウトベック vs 平本蓮
判定は2対1で割れました。
平本蓮の判定勝ちでしたが、ダウトベックが勝ったと思う人がいてもおかしくない接戦だったと思います。
2026年からRIZINでは「デュアル・マストシステム」という判定方式が導入されています。まず各ラウンドを10点法で採点し、そこで勝敗が決まればその点数で判定する仕組みです。
今回の公式スコアは、29対28で平本、29対27でダウトベック、29対28で平本でした。僕は1ラウンドがダウトベック、2ラウンドと3ラウンドが平本蓮に見えました。
なので、2対1で平本蓮という結果には納得できます。ただ、かなり接戦だったので、ダウトベックが勝ったと感じる人がいるのも分かります。
個人的に一番すごいと思ったのは、平本蓮が約2年ぶりの試合だというのに、ダウトベックの前で下がらず、いきなり打ち合いにいったことです。
ダウトベックはパンチが本当に強い選手です。その強烈な左を1ラウンドにもらって、平本蓮が大きくバランスを崩す場面がありました。
普通なら、そこでかなり怖くなると思います。ところが、平本蓮はすぐに体勢を立て直して、そのまま打ち合いました。
しかも、そのあとも追撃をもらいながら前に出ていました。
「いや、よくそこで打ち合えるな」と思いました。
あの場面で完全に下がっていたら、もっと危ない展開になっていたんじゃないかと思います。打撃の技術はもちろんですが、それ以上に平本蓮の打たれ強さと気持ちの強さがすごかったです。
平本蓮は化け物でした。
1ラウンドはサウスポーで戦っていましたが、サウスポーだけだと不利だと感じたのか、2ラウンド以降はオーソドックスも混ぜながら構えを切り替えていました。
それによって距離感を変えながらパンチを当てていく。さらにカーフキックも効かせていました。
ダウトベックも被弾が増えるとテイクダウンを狙いました。ただ、倒してもそこから大きな攻撃につなげられない。
動きが止まればレフェリーがスタンドに戻す。そんな展開が2ラウンド、3ラウンドと続きました。RIZINはダメージ判定重視なので、僕には2ラウンドと3ラウンドは平本蓮が取ったように見えました。
それにしても、復帰戦でダウトベックを相手にあれだけ下がらずに戦ったのはすごかったです。
ダウドベックもテイクダウン後に少しでもパウンドを打てたら勝敗は変わったものになっていたでしょう。平本蓮は下からの極めがないでしょうから、もうちょっとダウトベックが仕掛けていたらよかったのに。
朝倉未来 vs 青木真也
往年の格闘技ファンではないので、正直そこまで注目はしていませんでした。
でも、青木真也の試合開始直後の動きはさすがでした。
いきなり組みにいってテイクダウンを狙う。結果的に青木が下になる形になりましたが、そこからすぐに三角絞めを狙いました。
朝倉未来がそれを抜けると、青木はまたすぐに組みにいきます。そして今度はバックを取りました。
クレベルでも無理だったのに、朝倉未来にあそこまできれいにバックを取ったのは、本当にすごかったです。これが青木真也なのだと思いました。
さらに4の字ロックまで組みました。あそこまでいったら、青木真也が勝つんじゃないかと思いました。まだ1ラウンドの時間もかなり残っていましたし。
そのままバックからコツコツ殴って削って、リアネイキドチョークを狙っていけばいい。基本ですよね。そう思って見ていました。
しかし青木は腕十字を選びました。
しかも結構雑に狙いに行ってたんですよね。
え?なんでよって思わず画面越しに言っちゃいました。
もちろん、朝倉が正対しようとしていたので、ずっとバックを維持できたとは限りません。それでも僕には、まだバックから削る選択肢が残っているように見えました。
腕十字は、失敗すれば自分が下になる可能性があります。せっかく作ったかなり有利な状況を手放すリスクもあります。
だったら、もう少しバックから削って、リアネイキドチョークを狙ってもよかったんじゃないかなと思いました。
もし腕十字を狙うとしても、もう少しラウンド終盤になってからでもよかったんじゃないでしょうか。少なくとも1ラウンドを取りにいきながら、朝倉未来の体力を削る展開も作れたように見えました。
結局、腕十字は決まらず、朝倉未来がすぐにパウンドを連打。1ラウンド2分39秒、レフェリーストップによるTKOで朝倉未来が勝ちました。
腕十字を外した直後にすぐパウンドに行く朝倉未来の反応はさすがでした。
ただ、それ以上に僕が気になったのは、なぜ青木真也があのタイミングで腕十字を選んだのかということです。40歳を超えているので、スタミナを考えて短い時間で決め切ろうとした可能性もあります。もちろん、そこは本人にしか分かりません。
見ている側からすると、かなり勝機のあるポジションを作れていただけに、不思議でした。そのまま削りながらバックチョークを狙えばよかったのに。極まらなくてもポイントはついたでしょうし。腕十字狙ってもいいけれど、ラスト30秒くらいで仕掛ければよかったのに。
ラジャブアリ・シェイドゥラエフ vs AJ・マッキー
最後が今回一番楽しみにしていた試合です。
ラジャブアリ・シェイドゥラエフとAJ・マッキー。ここまでのシェイドゥラエフが本当に強すぎたので、世界トップクラスの選手とやったらどうなるのか。そこが一番見たかったです。
そして実際に見てみると、シェイドゥラエフの「限界」というか、「隙」のようなものが初めて見えた気がしました。
もちろん、シェイドゥラエフは強かったです。それは間違いありません。
でも、AJ・マッキーも本当に強かった。特に打撃では、AJ・マッキーのほうが上だったように感じました。
1ラウンドには、AJの左を受けてシェイドゥラエフが横に崩される場面もありました。シェイドゥラエフはすぐに立ち上がったので、大きなダメージではなかったのだと思います。
それでも、今までのシェイドゥラエフ戦ではほとんど見たことがなかった光景でした。さらに2ラウンドくらいから、シェイドゥラエフが少し疲れているようにも見えました。
今までは早い段階から相手を圧倒してしまって、疲れたところをほとんど見せない印象でした。
それが今回は疲れている。
「ああ、シェイドゥラエフも人間なんだな」と思いました。
それでもレスリングはめちゃくちゃ強かったです。AJ・マッキー相手でも、組みではシェイドゥラエフが優位になる場面が何度もありました。
バックを取られそうになった場面でも、一気に動いて向き合い、逆に上を取り返す。あの瞬発力はやっぱりすごいです。
一方で、AJ・マッキーも本当にうまかったです。
シェイドゥラエフが上になっても、手首をコントロールしたり、足を使ったりして、簡単に強いパウンドを打たせませんでした。
これまでのシェイドゥラエフ戦のように、上を取った瞬間から一方的にパウンドを落として終わらせる展開にはなりませんでした。これがAJ・マッキーの強さです。ディフェンスも超一流。
かなりレベルの高い試合でした。
ただ、この試合を見ていてRIZINのリングについてはやっぱり気になりました。体がロープの外に出そうになると、レフェリーが止めて中に戻す。また始める。またリング際までいって止まる。
世界トップクラス同士の試合で、これはちょっともったいないと思いました。
せっかくシェイドゥラエフとAJ・マッキーという、これ以上ないくらいのカードなのに、リングの形によって攻防が途切れてしまう。トップ同士のMMAをできるだけ止めずに見せるという意味では、やっぱりケージのほうが向いているんじゃないかと思います。
それと、やっぱり3ラウンドでは短いです。
これだけのトップ同士なら、5分5ラウンドで見たかったです。超一流同士だと3ラウンドでは明確な差はつけられません。
残念ながら「ここからさらにどう対応するんだろう」と思ったところで終わってしまいました。
5ラウンドあれば、もっと試合の中で対応して、相手の弱点を探して、さらに違う展開になっていたかもしれません。
シェイドゥラエフの強さとこれからの課題
シェイドゥラエフは、AJ・マッキーに対しても上のポジションを何度も取りました。しかしそこから一気にパウンドで大きなダメージを与えるような場面は、それほどありませんでした。
それでも簡単にはひっくり返されない。スイープされない。上のポジションを維持しながら、何度も打撃を狙っていく。このバランス感覚はすごいと思います。
ただ、今回の試合を見ていて、初めてシェイドゥラエフにも「隙」があるのかなと思いました。
これまでの試合では見えなかったものが少し見えました。シェイドゥラエフはかなり前に出てくる選手です。打撃で勝てなくても、レスリングでいけばいい。
そんな感じで、かなり強引に前へ出てくるところがあります。でも、それが成立してしまうんですよね。
今回も打撃で少し上回るAJ・マッキーにシェイドゥラエフはレスリングで対応して、最終的には30対27が3者という判定で勝っています。AJ・マッキー相手に、そんな勝ち方ができること自体がすごいです。
ただ、もしAJ・マッキーよりさらに打撃が強くて、なおかつシェイドゥラエフのレスリングにも対抗できる選手と当たったらどうなるのか。そこまでいったら、かなり苦しい試合になるんじゃないかと思います。
今回の試合を見て、初めて「シェイドゥラエフにもいつか負ける日が来るのかもしれない」と思いました。
それでも、やっぱり化け物ですけれどね。AJ・マッキー相手にこんな勝ち方できる人間ってUFCにもどれだけいるのだろうか。
本当にすごい選手です。
超RIZIN.5を見終えて
今回の超RIZIN.5を見て、一番印象に残ったのは「トップ選手の壁」でした。
高木凌も野村駿太もYA-MANも、これからさらに上を目指していく選手です。
でもトップ選手と戦うと、単純な技術だけではなく、試合の中でどうリスクを取るのか、どうポジションを維持するのか、どう相手を削るのかといった部分で差が出てきます。そこを越えるのは簡単ではありません。
一方で平本蓮は、11連勝中の強烈なパンチを持つダウトベックを相手に、怖がらずに打ち合って競り勝ちました。
そして最後には、これまでほとんど隙を見せなかったシェイドゥラエフが、世界トップクラスのAJ・マッキーと戦ったことで少し違った表情が見えました。
それでも強い。だからこそ、次にシェイドゥラエフがどんな選手と戦うのかが気になります。
今回のAJ・マッキー戦で初めて見えたものが、次の試合でどうつながっていくのか。そこも含めて、これからのRIZINが楽しみです。
取り上げた試合の結果
試合 | カード | 決着
第3試合 | ヴガール・ケラモフ vs. 高木凌 | 判定3-0でケラモフ
第4試合 | 斎藤裕 vs. YA-MAN | 判定3-0で斎藤裕
第5試合 | ホベルト・サトシ・ソウザ vs. 野村駿太 | 判定3-0でサトシ・ソウザ
第6試合 | カルシャガ・ダウトベック vs. 平本蓮 | 判定2-1で平本蓮
第7試合 | 朝倉未来 vs. 青木真也 | 1R 2分39秒 TKO(レフェリーストップ:グラウンドパンチ)で朝倉未来
第8試合 | ラジャブアリ・シェイドゥラエフ vs. AJ・マッキー | 判定3-0でシェイドゥラエフ。30-27が3者でRIZIN・PFLの2団体王者に
参考
RIZIN FIGHTING FEDERATION「超RIZIN.5 浪速の超復活祭り 試合結果一覧」
https://jp.rizinff.com/_ct/17863569
アクセス日:2026年9月12日
RIZIN FIGHTING FEDERATION「第7試合 朝倉未来 vs. 青木真也 試合結果」
https://jp.rizinff.com/_ct/17863572
アクセス日:2026年9月12日
RIZIN FIGHTING FEDERATION「第6試合 カルシャガ・ダウトベック vs. 平本蓮 試合結果」
https://jp.rizinff.com/_ct/17863573
アクセス日:2026年9月12日
BOUTREVIEW「RIZIN 新しい判定基準『デュアル・マストシステム』紹介映像公開」
https://www.boutreview.com/3/news/item_141526.html
アクセス日:2026年9月12日


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