Sonosユーザーです。
Dolby Atmosこそ至高だと思っていました。
映画コンテンツ視聴時に、Sonosアプリに Stereo PCM と出たら、負けだと思っていました。
PCMって地味。古い。しょぼい。
DolbyとかDTSのほうが“上”なんじゃないの?
……でも、私は間違っていました。
音の勉強をして分かったのは、これです。
PCMは源流。
Stereo PCMがつらいのは、PCMだからじゃない。2chで届いているから。
今すぐ直したい人向け:3ステップ救急箱
映画なのに Sonos が Stereo PCM を出してきて困ってる人向けです。ここだけ先にやってください。
0)Apple TV 4Kなら最初に確認(重要)
Apple TV 4KのAtmosは、ARCだと成立しないケースがあります。まずテレビ〜サウンドバー間がARCになっていないか確認。
1)作品の音声メニューで、5.1 / Atmosトラックを選んでいるか
映画でも、2.0トラックを選べば Stereo PCM は正常表示です。
2)再生機器の出力設定が「自動」か
PCM固定は、構成によって2ch化の引き金になります。まず自動に戻します。
3)テレビ経由なら、eARCとパススルー系の設定が有効か
ARCだと詰まることがあります。eARCでもテレビ設定次第で握りつぶされます。
ここで直らなければ、後半の「診断フロー」に進むのが最短です。
3行まとめ
- PCMは「デジタル音声の基本形」。地味なのは名前だけ
- Stereo PCMが嫌なのは「PCMだから」ではなく「2chで届いてるから」
- 道(経路)が太い構成ほど、PCMやロスレスが有利になりやすい(余計な変換が減る)
このページの使い方
- 今すぐ直したい → II部「診断フロー」へ
- PCMの誤解をほどきたい → I部へ
- Apple TVがややこしい → II部「Apple TVとDolby MAT」へ
I部:歴史編 PCMは素材、Dolby/DTSは配送会社だった

最初に、比喩を固定します。この記事の背骨です。
- PCM=素材(デジタル音声のベース)
- Dolby / DTS=配送会社(どう運ぶかを工夫した人たち)
- 規格・回線・配線=道の太さ(太いほど、圧縮せずに運べる)
素材がうまいのか。配送がうまいのか。
ここを混ぜると沼が始まります。
まず誤解を1つ潰す:PCM=2ch ではない

ここが最重要です。
PCMは、2chにもなるし、5.1にもなります。
負けなのはPCMではなく、2ch化です。
Sonosの表示で言うと、こう。
- Stereo PCM:PCMだけど2ch
- Multichannel PCM(5.1など):PCMだけど多チャンネル
- Dolby Multichannel PCM:PCMだけど「Dolby MAT」という箱で届くことがある(後述)
つまり、PCMは格付けじゃありません。形式名です。
PCMとは何か
PCMは、アナログの音の波を「数値の列」にしたものです。
空気の振動を、デジタルとして扱える形にした基本形。
PCMという単語だけで、良い・悪いは決まりません。
素材の名前であって、称号じゃない。
昔:道が細かった。だから配送が主役になった
昔は、家庭までの道が細かった。
放送も、ディスクも、回線も、今ほど太くない。
多チャンネルPCMをそのまま運ぶのは、現実的じゃない場面が多かった。
そこで登場したのが、DolbyやDTSです。
音を畳んで(圧縮して)、細い道でも運べるようにした。
配送の革命。
人間がやりがちな勘違いはこれです。
配送がすごい=素材がすごい
違います。配送がすごいのは本当にすごい。
でも、それは「素材の格付け」とは別軸です。
Dolbyがやったこと:5.1を細い道でも届ける箱を普及させた
Dolbyの価値は、単に音を良くしたことではありません。
細い道でも多チャンネルを運べるように、箱(方式)を整えて、
受け取る側が同じ手順で開けられるように普及させた。
これで「映画は5.1で届く」が現実になっていきました。
深掘りしたい人向けの裏取り(標準文書など)は末尾にまとめます。本文では話を軽く保ちます。
*5.1などのサラウンドシステムについてさらに知りたい方はこちらの記事を参考にしてください>サラウンドシステムとは? 2.1 / 5.1 / 7.1 / Dolby Atmos(5.1.2)の違いを一気に理解する
DTSがやったこと:別の畳み方と、鳴らない事故を減らす設計
DTSも基本は配送会社です。やっていることは「運べる形にする」。
そして配送で一番怖いのは、届いても開けられないこと。
そこでDTS系では、互換性を意識した設計(まず鳴る部分を入れておく、など)が語られることがあります。
ロスレスとロッシー:畳み方(圧縮)の違い
- 非圧縮PCM:そもそも畳んでない
- ロスレス(可逆):畳んだだけ(戻る)
- ロッシー(非可逆):軽くするために一部を捨てる(戻らない)
配送会社の仕事は、道の細さに合わせて運べる形にすることです。
補足:「非圧縮PCM」は家庭用AVの文脈では「LPCM(リニアPCM)」のこと。PCMは総称で、LPCMはその代表的な“非圧縮の基本形”。
そして現在:道が太くなった。PCMが主役に戻れる場面が増えた

今でも道が細い場所は残っています。
だから配送会社の価値は消えません。
でも、eARCみたいに道が太くなると、話が変わります。
畳まずに運べる場面が増える。
余計な変換が減る。
結果として、PCMやロスレスが有利になりやすい。
ただし注意。ここが現場です。
eARC対応でも、テレビの実装や設定で普通に落ちます。
だから後半で、Sonosの表示で現実を確定させます。
*eARCについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください>【eARCとは?】ARCとの違いと「できること」を最短で理解する(TV→サウンドバーの王道)
道が太くなったおかげで、PCMやロスレスが手軽に楽しめるようになりました。
しかし、DolbyやDTSのブランド力が強いせいで、「DolbyやDTSがついてる方が非圧縮PCMより優れている」ような気がしているんですね🤔
体感差の優先順位(犯人を間違えない地図)
音の体感差は、サンプルレートやビット深度より前に、まずここが効きます。
優先度1:チャンネル数の違い(2ch → 5.1)
優先度2:途中の変換の有無(2ch化、再エンコード)
優先度3:ロッシーかロスレスか
優先度4:サンプルレート/ビット深度
結論。
PCM表記が出たから負け、じゃない。
負けは、2chで届くこと。
II部:実戦編 Sonos Audio Inで「いま届いてる現実」を確定する
Audio Inは格付けじゃない。入力ログ(計測器)だ

Sonos公式は、アプリで「いま受信している音声フォーマット」を確認できる手順を出しています。
だから、
Stereo PCM = 音が悪い
ではなく
Stereo PCM = 2chとして届いている
が正しい読み方になります。
*Sonosアプリの表示についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください>Sonosアプリの表示(バッジ)辞典:Stereo PCM / Multichannel PCM / Dolby Atmos を”判定”する
Audio Inバッジ早見(保存版)
| Sonos表示 | 意味(超ざっくり) | 映画で出たら注目する点 |
|---|---|---|
| Stereo PCM | 2chで届いている | 作品トラックか経路で2ch化 |
| Multichannel PCM 5.1 など | 多チャンネルで届いている | 表記がPCMでも勝ち |
| Dolby Digital 5.1 / Dolby Digital Plus | Dolbyで運ばれて届く | TV経由でも通りやすいことが多い |
| Dolby Atmos | Atmosで届く | 経路と設定が噛み合っている |
| Dolby Multichannel PCM | Dolby MATの箱でPCMが届くことがある | Apple TV周りで出やすい |
ゴール別の早見(まずここだけでOK)
1)映画を5.1で鳴らしたい
目安OK:Multichannel PCM 5.1 / Dolby Digital 5.1 / Dolby Digital Plus など
要注意:Stereo PCM
2)映画をAtmosで鳴らしたい
目安OK:Dolby Atmos
要注意:テレビ〜サウンドバーがARC、またはTV側が握る構成
3)音楽やYouTubeを普通に聴く
Stereo PCMでOKなことが多い(そもそも2chが多い)
要注意:映画作品なのにStereo PCM
Stereo PCM 診断フロー(保存版)
映画なのに Stereo PCM が出た
↓
A:作品の音声トラックは?
2chトラック選択 → 正常(仕様)
5.1/Atmosトラック選択 → 次へ
↓
B:再生機器の出力設定は?
PCM固定 → 自動に戻して再確認
自動 / ビットストリーム → 次へ
↓
C:テレビ経由?
いいえ(直結) → ケーブル/ポート/機器側設定を確認
はい(TV経由) → 次へ
↓
D:ARC? eARC?
ARC → eARC構成を検討(特にAtmos目的)
eARC → TV設定(パススルー、デジタル音声出力)確認
↓
最後に:SonosのAudio Inで確定(バッジが現実)
よくあるパターン
パターン1:BDで「LPCMを選んだのにStereo PCM」
よくある原因:LPCM 2.0(ステレオ)のトラックを選んでいる
対処:目的が5.1なら、多チャンネル側のトラックへ
パターン2:直結だと良いのに、テレビ経由だと落ちる
よくある原因:ARCで詰まる/TVがパススルーできない/設定で変換される
対処:eARCとTV設定を重点確認
パターン3:Dolbyって出ない=負け、と思ってしまう
誤解:表示は名前の強さじゃない
対処:Multichannel PCM 5.1なら、デコード済みで届いているだけの可能性も普通にある
それでも直らないとき(沼の出口)
ここから先は、設定をいじるより「証拠を集める」フェーズです。
1)出力を自動に戻す(基準点を作る)
2)Audio Inがどの操作で変わるかメモする
トラック変更で変わる? TV設定で変わる? HDMI入力で変わる?
3)できれば一度直結で試す(TV経由を外して切り分け)
4)そのメモを持って、関連記事や公式サポートに当てる
これで「どこで2ch化しているか」がほぼ特定できます。
メモなしで設定だけ触ると、沼が深くなります。
判定の型(元 → 出力 → 経路 → 受信)
迷ったら、この順番。
ステップ1:元(作品)は何を持ってる?
ステップ2:出力(再生機器)はどう出してる?
ステップ3:経路(TVなど)は通せてる?
ステップ4:受信(Sonos)は何を受け取ってる?(Audio Inで確定)
テレビ設定から触ると、何が効いたのか分からなくなって迷子になります。
まず型で原因の場所を絞るのが最短です。
Apple TV 4KとDolby MAT(ややこしい理由を1分で)
Apple TV周りがややこしいのは、箱(コンテナ)の流儀が表示に混ざるからです。
Sonos公式は、Apple TVなどがDolby MATという箱でAtmosやDolby Multichannel PCMを渡すことがある、と整理しています。
ざっくりこう理解すると迷子が減ります。
- Dolby Atmos:マルチチャンネルPCMに、Atmosの追加情報が乗っている
- Dolby Multichannel PCM:マルチチャンネルPCMとして届く(追加情報はない)
PCMっぽい表示が出ること自体は異常ではありません。
ゴール(5.1か、Atmosか)に届いているかが大事です。
まとめ:PCMは地味じゃない。地味なのは名前だけ
昔は道が細かった。
だから配送会社(Dolby/DTS)が、5.1を届ける革命を起こした。
いまは道が太くなった場面が増えた。
だからPCMやロスレスが有利になりやすい構成がある。
Stereo PCMが出た夜。
あれは失敗の烙印じゃなく、診断結果。
そしてSonosユーザーは強い。
Audio Inという計測器で、現実を確定して、最短で解決できる。
参考リンク(一次情報と関連記事)
一次情報(公式)↓
Sonos:受信フォーマット(Audio In)の確認方法
https://support.sonos.com/en/article/check-your-sonos-home-theater-audio-format
Sonos:対応フォーマット(Dolby MAT等)
https://support.sonos.com/en/article/supported-home-theater-audio-formats
Apple:Apple TV 4KのAtmos(ARCでは成立しない旨あり)
https://support.apple.com/ja-jp/102310
HDMI.org:eARC(非圧縮5.1/7.1や高ビットレート音声の扱い)
https://www.hdmi.org/spec2sub/enhancedaudioreturnchannel
関連記事↓
BD最適設定(ステレオ落ち回避)
https://today-is-the-first-day.com/sonosuki/sonos-bluray-best-audio-settings
Sonosアプリ表示(バッジ)辞典
https://today-is-the-first-day.com/sonosuki/sonos-app-audio-format-guide
経路地図(AirPlay/HDMIで音が違う理由)
https://today-is-the-first-day.com/sonosuki/airplay
eARC基礎(ARCとの違い)
https://today-is-the-first-day.com/sonosuki/earc
Apple TV倍速×Atmos(ゴール分岐)
https://today-is-the-first-day.com/sonosuki/appletv-playback-speed-atmos
深掘り↓
Dolby Digital(AC-3)の標準(ATSC A/52)
https://www.atsc.org/wp-content/uploads/2021/04/A52-2018.pdf
DTS-HDの技術白書(互換性の考え方など)
https://www.fast-and-wide.com/images/stories/White_papers/dts_hd_whitepaper.pdf


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