DolbyとDTSの正体:コーデック・箱・メタデータの混乱を終わらせる

DolbyとDTSの正体を表すイラスト オーディオ・音響の知識
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✅この記事の3行まとめ

・混乱の原因は「コーデック(中身)」「箱(包み方)」「メタデータ(指示書)」が混ざると
・Atmosは単一のコーデック名ではなく、運び方(DD+ / TrueHD / MAT)で見え方が変わる
・SonosアプリのAudio In表示を“診断ログ”として読めば、どこで化けたか切り分けできる


よくある迷子(最初に結論)

「Dolby Digital Plusの中にAtmosが入ってるの?」
「DTS-HD Master Audioを選ぶと、SonosではMultichannel PCMになるのはなぜ?」
「Dolby MATって何者?」

混乱の根はだいたいこれです。音の世界は3層でできています。

・[メタデータ]: どう鳴らすかの指示書(例:Atmos / DTS:X のオブジェクト情報)
・[箱] どう包んで運ぶか:(例:MP4/MKV、ビットストリーム、Dolby MAT)
・[コーデック]: 音を圧縮/復元する方式(例:Dolby Digital / DD+ / TrueHD / DTS)

この3層を分けるだけで、Sonosの表示やTV/プレーヤー設定が「暗号」から「ログ」に変わります。


用語の整理(ここだけ押さえれば読める)

3つの層を示すオーディオデータ構造の概念図。内部コア:「コーデック」とラベル付けされた輝く球体。中間層:コアを囲む透明な箱で「コンテナ」とラベル付けされている。外層:箱に取り付けられた書類またはタグで「メタデータ」とラベル付けされている。層を明確に示すための分解図スタイル。ミニマリストなテックデザイン。白背景で分離。

コーデック
音を圧縮したり、デコード(復元)したりする方式。Dolby Digital、DD+(E-AC-3)、TrueHD、DTSなど。

箱(コンテナ / 伝送の包み方)
ファイルの入れ物(MP4/MKVなど)もあれば、HDMIでどう運ぶか(ビットストリーム、Dolby MATなど)もここ。

メタデータ
音そのものではなく「どう鳴らすか」の追加情報。Atmos/DTS:Xのオブジェクト情報など。

❗️ポイント
AtmosやDTS:Xは、コーデック名というより「メタデータ側の仕組み」として捉えると迷子が減ります。


結論:Atmosは「音そのもの」より「設計図(付加情報)」

Dolby Atmosは、立体音響のための追加情報(オブジェクト情報など)を運ぶ仕組みです。
家庭では、主に次の“運び方”で届きます。

・Dolby Digital Plus(DD+)で届くAtmos(配信で多い)
・Dolby TrueHDで届くAtmos(ディスクで多い)
・Dolby MATで届くAtmos(HDMI上のPCMとして運び、必要に応じてAtmos情報を含む)

Sonosはここをかなり明確に書いています。
Apple TVなど一部機器は、AtmosやDolby Multichannel PCMをDolby MATという箱でSonosに渡すことがある。
さらに、Dolby Atmosは「Atmosオブジェクトデータを含むMultichannel PCM」で、Dolby Multichannel PCMはそれを含まない。


Dolby側の地図:DD / DD+ / TrueHD / MATは役割が違う

ここからは「何が何の層なのか」だけ淡々と整理します。

Dolby Digital(AC-3)

・古典的なロッシー(非可逆)圧縮のサラウンド
・放送やDVDなどで広く使われた

Dolby Digital Plus(DD+ / E-AC-3)

・Dolby Digitalの後継で、配信で多い
・AtmosをDD+で運ぶ場合、DD+の拡張としてAtmosの情報を含める(見え方として「DD+ Atmos」になりやすい)

誤解しやすい言い換え
「DD+の中にAtmosが入っている?」は方向性として近いが、
より安全に言うなら「DD+の枠組みでAtmosの追加情報を運べる場合がある」。

Dolby TrueHD

・ロスレス(可逆)圧縮のドルビー
・ブルーレイで多い
・Atmos(付加情報)を含むTrueHDがあり得る

Dolby MAT(最大の混乱ポイント)

データ伝送のイラスト。Apple TVデバイスがサウンドバーへパッケージを送っている。パッケージは「Dolby MAT」とラベル付けされた透明なコンテナで、その中には「PCM」とラベル付けされた複数のブロックと、「Atmosメタデータ」とラベル付けされた小さなきらめきが入っている。PCMとAtmosが一緒に移動する様子を可視化。クリーンなテックスタイル。白背景で分離。

MATは「すごいコーデック」ではありません。
主に「HDMI上で、Multichannel PCMとして運びつつ、必要に応じてAtmos情報も一緒に運ぶための箱(包み方)」として出てきます。
Apple TVなど一部機器は、AtmosやDolby Multichannel PCMをDolby MATという箱でSonosに渡すことがあります。

Sonosが超重要な区別を明記しています。
・Dolby Atmos:Atmosオブジェクトデータを含むMultichannel PCM
・Dolby Multichannel PCM:Atmosオブジェクトデータを含まない

ここでの実務的な読み方
・SonosにAtmos表示が出るなら、その経路は「Atmosの指示書まで届いている」
・Dolby Multichannel PCMなら、「PCMとしては来ているが、Atmosの指示書は来ていない」

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DTS側の地図:DTS / DTS-HD MA / DTS:Xは“互換の階段”

「DTS-HD」信号の2つの経路を示すフローチャート図。ソース信号が2つの矢印に分岐する。パスA(上)は「コアフォールバック」とラベル付けされたチップアイコンにつながり、「DTS」を出力する。パスB(下)は「PCMへデコード」とラベル付けされたチップアイコンにつながり、「Multichannel PCM」を出力する。クリーンなラインアート、青とグレーの配色。白背景で分離。

Sonosホームシアター製品が対応するDTSは、基本的に「DTS(DTS Digital Surround)」です。
DTS-HD Master AudioやDTS:Xをそのまま受けてレンダリングできる、とは限りません。

ここは「現象が2種類ある」と分けると切り分けが速いです。

現象A:コアへフォールバック(DTSとして鳴る)

DTS-HD系は、互換のために「コア」と「拡張」を同じストリームに持てます。
古いデコーダはコアだけ使い、拡張は無視する、という設計が可能です。

結果として
・TVやSonosがDTS-HD MAを扱えない
・プレーヤーがビットストリームで出している
この条件が揃うと「DTS(コア)」として落ちることがあります。

現象B:プレーヤー側がデコードしてPCM化(SonosはPCM表示)

もう一つは単純に、
プレーヤーがDTS-HD MAを先にデコードして、Multichannel PCMとして出すパターンです。
この場合、Sonosは「PCMを受け取って鳴らす」だけなので、表示はPCMになります。

同じ“音源がDTS-HD MA”でも
・ビットストリームで出して落ちたのか(現象A)
・デコードしてPCM化したのか(現象B)
は別現象です。ここを分けると沼が浅くなります。

DTS:X

DTS:Xはオブジェクト系(指示書)です。
DTS側は、DTS:X Master Audioがレガシー機器と後方互換を保った単一ビットストリームである、と説明しています。

ただしSonos側が対応していない場合
・DTS(コア)に落ちる
・プレーヤーがPCM化して送る
になりやすく、DTS:Xとしての立体レンダリングは成立しにくいです。


どこで化けるのか:信号フロー地図(最重要)

左から右へ4つの段階を示す水平方向の信号フロー図。ステージ1:「メディアソース」アイコン(映画リール/クラウド)。ステージ2:「プレーヤー」アイコン(Apple TVボックス)。ステージ3:「TV」アイコン。ステージ4:上に虫眼鏡がある「サウンドバー」アイコン。矢印がそれらを順に接続している。シンプルでフラットなベクターイラスト。白背景で分離。

ここを押さえると「犯人探し」ができます。

作品(配信/BD)

再生機器(Apple TV / BDプレーヤー)

TV(ARC/eARC、パススルー対応差)

Sonos(Audio In表示)

変換が起きやすい場所
・再生機器:ビットストリーム出力にするか、PCMにデコードして出すか
・TV:ARCの帯域制限、パススルー非対応、設定(パススルー/PCM)

Sonosの表示は、このフローの最終ログです。
暗記ではなく、どこで化けたかを切り分けるために使います。

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判定テンプレート(シリーズ共通テンプレ)

次の4点を埋めるだけで、原因が大体絞れます。

1) 元(作品・アプリ・ディスク)
例:NetflixのAtmos作品 / BDのDTS-HD MA

2) 出力(再生機器の設定)
例:Apple TVのAudio Format(Change FormatのON/OFF)
例:BDプレーヤーのBitstream / PCM

3) 経路(TV/ARC/eARC/直結)
例:TV経由eARC / TV経由ARC / プレーヤー直結

4) 受信(Sonos Audio In表示)
例:Dolby Atmos / Dolby Multichannel PCM / Multichannel PCM 5.1 / DTS / Stereo PCM

埋めた例(Apple TVでAtmosを狙う)
1) 元:Apple TV+のAtmos作品
2) 出力:Apple TVはAudio FormatでDolby Atmosが有効(Change Formatは基本OFF)
3) 経路:eARC経由(またはAppleの推奨通り、AVR/サウンドバーへ直結)
4) 受信:SonosでDolby Atmos表示が出るか確認


Audio Inバッジ早見(崩れにくい箇条書き版)

Stereo PCM
・2chで受信。元が2chの可能性も、どこかで2ch化した可能性もある

Dolby Digital(5.1)
・ロッシーの5.1が来ている。放送/一部配信/機器のChange Format固定などで出やすい

Dolby Digital Plus
・DD+が来ている。配信で出やすい(Atmos無しのDD+もあり得る)

Dolby Atmos(Dolby Digital Plus)
・DD+系でAtmosの指示書まで来ている(配信で多い)

Dolby TrueHD / Dolby Atmos(TrueHD)
・ディスク系で出やすい。eARCが必須になりやすい

Multichannel PCM 5.1 / 7.1
・デコード後のLPCMが来ている(プレーヤー側デコードや、TV側変換で出やすい)

Dolby Multichannel PCM
・PCMとしては来ているが、Atmosオブジェクトデータは含まない(Sonos定義)
・MAT経由でも出ることがあるので、Atmos表示と区別する

DTS
・DTS(コア)が来ている。DTS-HD系がコアに落ちた可能性も含む

補足:バッジの場所
Sonosは、受信中フォーマットをアプリ上で確認できる手順を公式に案内しています。
(Sonos appのNow Playing画面のバッジ、またはS1ならAbout My SystemのAudio In)

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典型シナリオ5つ(最短で当てにいく)

1) 配信Atmosを狙う(Apple TV / Fire TVなど)
・狙い:Dolby Atmos表示(配信の元はDD+が多い。Apple TVは出力がMATになりやすい)
・事故:TVがパススルーできずStereo PCMになる
・切り分け:eARCの有無、TVのデジタル音声出力がPCM固定になっていないか

2) BDのDTS-HD MAを最高で聴く(SonosはDTS-HD MA非対応の前提)
・狙い:プレーヤー側デコード → Multichannel PCM 5.1表示
・事故A:DTS表示(コアへフォールバック)
・事故B:Stereo PCM(どこかで2ch化)

3) BDのTrueHD/Atmos(TrueHD)を狙う
・狙い:Dolby TrueHD / Dolby Atmos(TrueHD)表示
・事故:ARC経由で落ちる(DD+やDDに変換される、または無音/不安定)
・切り分け:eARC必須の構成になっているか

4) Apple TVで「Dolby Multichannel PCM」になってしまう
・意味:PCMとしては来ているがAtmosの指示書が来ていない
・切り分け:作品がAtmosか、Apple TV側でAtmosが有効か、経路がARCで詰まっていないか

5) 何をしてもStereo PCM
・切り分け順:作品が2chではないか → 再生機器がStereo固定ではないか → TVがPCM固定/パススルー不可ではないか → 接続がARCではないか

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具体例1本:Apple TV 4K → TV → Sonos(Atmosを狙う)

ここはモデル差・UI差が出るので「公式に確定している部分」と「一般的に見る項目」を分けます。

ステップ0:まずSonosでログを見る
・Sonosアプリでホームシアター製品を開き、Now Playingのバッジ(またはAudio In)を見る

ステップ1:Apple TV側(公式に確定)
Appleは次を案内しています。
・Settings > Video and Audio > Audio Format で、Immersive AudioのDolby AtmosがOnか確認
・また、Apple TV 4KのDolby AtmosはARCでは動かない(高帯域方式)

手動で音声フォーマットを変える場合(公式)
・Settings > Video and Audio > Audio Format > Change Format をOn
・Dolby Digital 5.1 か Stereo を選ぶ

意味
・Atmosが出ないときの“最終手段”としてDD 5.1固定にする、などの用途
・ただし、Atmos狙いなら基本はChange Formatを使わず、Atmosを有効にした構成を優先する

ステップ2:TV側(一般に確認する項目)
見るべき項目はだいたい2つです。
・ARCではなくeARCが有効になっているか
・デジタル音声出力がPCM固定ではなく、Pass Through/Auto系になっているか

LG系UIの例(公式マニュアル例)
(Q. Settings) > [Sound] > [Sound Out] > [HDMI ARC] > [Digital Sound Out]
ここで Pass Through にし、eARCがOnのときにTrueHD/DTS-HDが成立し得る、という表が示されています。
(機種により項目名や階層は変わりますが、論点は同じです)

ステップ3:結果をSonosで確定
・SonosがDolby Atmos表示なら成功
・Dolby Multichannel PCMなら、PCMは届いているがAtmosの指示書が届いていない
・Stereo PCMなら、どこかで2ch化。ステップ1〜2を上から潰す


ミニ用語集

ビットストリーム
圧縮された音声を「そのまま」送る出力。受け側が対応していないとフォールバックが起きることがある。

デコード
圧縮音声をPCMに復元すること。どの機器がデコードするかで表示が変わる。

LPCM(Multichannel PCM)
デコード後の音の表現。5.1/7.1などチャンネル数がそのまま出る。

パススルー(Pass Through)
TVが音声を加工せずに次へ渡す動作。TVの対応差が出やすい。

ARC / eARC
TVから音を戻すための経路。eARCは高ビットレート音声や非圧縮5.1/7.1などに対応しやすい。

メタデータ
音そのものではなく「どう鳴らすか」の情報。Atmos/DTS:Xのオブジェクト情報など。

オブジェクトベース
固定チャンネルだけでなく、音の位置情報などを含めてレンダリングする考え方。

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参考サイト

Sonos:受信中フォーマットの確認手順
https://support.sonos.com/en/article/check-your-sonos-home-theater-audio-format

Sonos:対応フォーマット一覧(Dolby MAT、AtmosとDolby Multichannel PCMの定義、eARC必須の注記)
https://support.sonos.com/en/article/supported-home-theater-audio-formats

Apple:Apple TV 4KでAtmos/サラウンドを設定(ARCでは動かない旨、Atmosの確認手順)
https://support.apple.com/en-us/102310

Apple:Apple TVで音声フォーマットを手動変更する方法(Change Format)
https://support.apple.com/en-us/102218

HDMI.org:eARCの説明(非圧縮5.1/7.1、高ビットレート、TrueHD/DTS-HD MA/Atmos等)
https://www.hdmi.org/spec2sub/enhancedaudioreturnchannel

LG(例):Digital Sound Out(Pass Through)とeARC On時の対応表(項目の論点確認用)
https://media.us.lg.com/m/24f3e21162996080/original/BF50NST_BF60PST_ENG_US.pdf

DTS:DTS-HD(コア+拡張、残差でロスレス復元、単一ストリームで後方互換)
https://www.fast-and-wide.com/images/stories/White_papers/dts_hd_whitepaper.pdf

DTS:DTS:X Master Audioの後方互換(単一ビットストリーム)
https://consumer.dts.com/production-tools/

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