『一瞬で人の心が変わる伝え方の技術』説得するより変化の障害物を取り除こう

脳科学・心理学
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ペンシルベニア大学ウォートン校マーケティング教授、ジョーナ・バーガーさんの『人の心が変わる伝え方の技術』を読みましたので、メモとして記事に残します。

この本の内容はタイトル通りでして、「どうやったら相手の考えを変えられるのか?」について書かれております。こーゆー系の本を読んだことがある人であれば目新しい内容はないかと思いますが、めちゃくちゃ読みやすいのでオススメの一冊です。

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相手の変化を望むのであれば障害物を取り除け

相手の考えを変えようと思うと、ついデータなどを用いて説得しがちです。やったことのある人なら分かると思いますが、成功率低いですよね?相手の考えはなかなか変えられません。

コロナ禍でも明らかになったように、どれだけデータを提示しても反ワクチン思想の人には効果はほぼありません。

ではどうすればいいのか?

著者はこう言います↓

この本は、人の心に変化を起こすまったく新しい方法を提唱している。残念ながら変化を起こそうとするときに、障害物を取り除くという方向で考える人は滅多にいない。誰かの考えを変えるにはどうするかと尋ねられたら、99%の人は「押す」方法のどれかを答えるだろう。たとえば「事実と照合提示する」「こちらの理由を説明する」「説得する」といった方法だ。

中略

変化の触媒、カタリストになりたいのであれば、「この人はなぜまだ変わっていないのだろう?」と言う、根本的な問いかけから始めなければならない。彼らの変化を阻む障害物は何なのか?

p19

私たちがまずやるべきことは、「この人の考え方の変化を妨げている障害物はなんだろう?」という問いをすることです。

相手を積極的に変えようとするのではなく、相手が変われるような環境を整えてあげるのですね。変化を促すと言う意味で、『カタリスト(変化の触媒作用のある人)』という言葉が使われておりました。

では、カタリストはどうやって相手の変化を促せばいいのでしょうか?

心の変化を妨げる障害物を取り除くことによって、カタリストは心を変化させようとします。著者は、心の変化を妨げる主な障害物を5つ紹介しています↓

  1. 心理的リアクタンス
  2. 保有効果
  3. 心理的距離
  4. 不確実性
  5. 補強証拠

こーゆー系の本を読んだことある人であれば、よく耳にする言葉だと思います。

これらの障害物が組み合わさり、人の変化を妨げています。これらの障害物を取り除くことができれば、相手を変化させられる可能性が高まるというわけです。

『心理的リアクタンス』はどうすればいいか

簡単に1つずつ見ていきます。

心理的リアクタンスとは、反発したくなる心理作用のことです。たとえば、多くの人が経験あることだと思いますが、親から「勉強しなさい!」と言われたら、反発したくなりましたよね?それが心理的リアクタンスです。

じゃあこれをどうしたらいいのか?というと、『相手が自分で自分を説得するようにもっていく』ことが効果的です。

たとえば、10代の喫煙が問題だったとしましょう。

大人が子供に向かって「タバコは体に悪い!タバコを吸うな!」と言っても、ほとんどの場合で効果はありません。むしろ逆効果です。

ではどうしたらいいのか…?

フロリダ州知事から未成年の喫煙対策を命じられたチャック・ウルフさんはこんなことをしました。

大人はただタバコの事実を伝えました↓

  • タバコ協会による高名なマーケティング戦略
  • タバコ会社と政治の癒着
  • 喫煙を魅力的に見せるためにスポーツやテレビ、映画を利用していること

「これがタバコ業界のしていることだ。これに対して、君たちはどうしたいと思うだろう?」これが後で大人からのメッセージだ。

p55

これにより、フロリダ州では数ヶ月で3万人の10代がタバコをやめました。さらに2年後には10代の喫煙率が半分になっていました。

心理的リアクタンスを生じさせなければ、自分で考えて判断できちゃうのですね。

『保有効果』にはどうすればいいか

変化を妨げる障害は心理的リアクタンス以外にもあります。ヒトは変化を嫌います。同じことを続けようとする生き物です。そして、知らないものや新しいものには恐怖心を抱くという心理もあります。

また、『いま持っているもの/利用しているサービス』の価値を過大評価するという傾向もあります。それが保有効果です。

  • 持ってるものは手放したくない
  • 現状に不満がないならわざわざサービスを変えなくてもいい

みたいなやつです。これも分かりますね。

保有効果のおかげでモノは捨てられず溜まって部屋は汚くなっていくし、現状のサービスを変えようと努力するのもだるいです。(安いからといって、格安SIMをたびたび乗り換えるなんてこともだるいですよね)

じゃあこれをどうしたらいいのか?というと、『行動を起こさないことのリスクを相手に気づかせる』ことが効果的です。変化を起こさず、なにもしなければ、コストがかかるので損ということに気づいてもらうのです。現状維持にはマイナス面もあるということをわかってもらうのですね。

で、興味深いところは、「変えた方がお得ですよ!」とするのではなく、「変えないと損ですよ!」と伝えるところです。(人間は得するよりも損を嫌うという心理作用がある)

ここでカタリストは、「行動しないことのコストを明らかにする」と言う方法を選ぶ。現状と、変化を起こした結果の間にある違いを明確にして、変化の利点を納得してもらう。変化の利点を強調するのではなく、むしろ正反対のことをする。何もしないことによって、一体どれほどのものを失っているかを明確にするのだ。損失回避のところでも見たように、人間は利益よりも損失の方を大きく評価する。10ドル失うダメージは、10ドル手に入れる喜びよりもずっと大きい。

p130

『心理的距離』にはどうすればいいか

スマホやネットの普及により、「誰もが情報にアクセスしやすくなった!これでみんな賢くなるぞ!」と、最初は考えられていました。

でも結果は違いました。みんな自分の好きな情報だけを集め、どうでもいい情報は排除するようになり、いわゆる『知的孤立主義』という状況をつくりだしてきました。(考え方の似ている人とだけつるむってことです)

知的孤立主義は分断を生みます。では、知的孤立主義を解消するためにはどうすればいいのでしょうか?自分とは異なる意見の人と触れ合う機会を与えればいいのでしょうか?

社会学者のクリス・ベイルさんは、『自分とは反対の意見にただ触れるだけで、他者に対する理解が深まり、より中立的な考えになる』と考えました。

そこでベイルさんは自分の考えを証明するために、次のような実験を行いました。

  • 1500人以上のTwitterユーザーを勧誘し、
  • 自分と正反対の意見を主張するアカウントをフォローしてもらう
  • そして1ヶ月にわたり、自分と違う意見の政治家、組織、オピニオンリーダーのツイートを読み続けてもらう

その後、ベイルさんの研究チームは、参加者の意識調査を行いました。その結果…

反対意見に触れることは、人を中道に近づける効果はないようだ。むしろ、現実は正反対だった。自分とはかけ離れた意見に触れると、たしかに考え方は変わる。しかし変わる方向が予想とは違った。たとえば保守派なら、リベラルに近づくのではなく、さらに輪をかけて保守的になる。社会問題に対して考えがより過激になるのだ。

p153

今回の実験で分かったことは、人は説得されているわけではなく、ただ情報や事実に接するだけでも、相手との距離によっては反発を招くことがあるということです。

(また人間には確証バイアスというやっかな心理もあります。自分の考えとは異なる意見には耳を傾けず、自分の考えと似ている意見ばかりを集めがちという心理です。)

じゃあどうすればいいの?って話なのですが、距離感がとても重要になります。話の核心から攻めるのではなく、外堀から攻めていく作戦に出るしかありません。つまり、相手が理解できる/受け入れられる範囲の話から情報を伝えていくというわけです。(または理解できそう/受け入れられそうな人を探す)

争いの火種になるような話題や、フィールド上の位置が相手からあまりにも離れた場所にある話題から始めるのではなく、おたがいに歩よれる話題を探す。意見がぶつかる話題ではなく、同意できる話題だ。それを「現状打破のポイント」と呼ぶ。

p197

心理的距離が遠ければ遠いほど、話は伝わらないということを頭に入れておきましょう。自分の考えを伝えたいのであれば、心理的距離の近い人を探すか、相手と同意できる話題から始めるしかありません。

『不確実性』にはどうすればいいか

なぜ変化するのが怖いのかというと、未来は不確実だからです。人間は不確実なものには手を出さないように進化してきたのですね。(そういう個体が生き残ってきた)

不確実なものの価値を切り下げて考える現象を「不確実性税」と呼ぶ。確実な選択肢と、不確実な選択肢のどちらかを選ぶ時、よほどリターンが大きくなければ不確実なものは選ばれない。

p224

程度の差はあるものの、変化には不確実性がつきものです。だから人は変化を拒みます。

じゃあどうすればいいか?というと、不確実性を減らせばいいわけです。(逆に言えば、現状維持させたければ、不確実性を強調するのがいい)

それには次の4つがカギになります↓

  • フリーミアムを活用する(例:無料で使い続けられるよー。この機能を使いたい人は有料プランにしてね)
  • 初期費用を削減する(例:いまなら初期費用が無料だよー)
  • 発見を後押しする(例:広告をバンバン流して知名度を高め、「あの人も使ってるんだ」状態にする)
  • 取り消し可能にする(例:返品可能)

よく目にするやつですね。

いまや、これらが使われてないモノ/サービスは、ほとんど使わないんじゃないでしょうか?

『補強証拠』にはどうすればいいか

上記の4つの障害物を取り除いても、自分一人では相手の考えを変えられないかもしれません。

そういう時は、『補強する』というテクニックが有効です。

ようは「ワイだけでなく、あの人も言ってるで。それに君が尊敬している〇〇さんも言ってるで!」みたいなことですね。1つの情報源だけでは、相手は信じないかもしれません。だから複数の情報源を用意してあげるのです。

複数の人が同じことをしている場合、彼らが間違っているとは言いづらい。彼らがすすめるものを切り捨てるのは難しい。このように複数のソースが存在すると、信頼性と正当性が高まるという効果もある。

中略

同じことをする人、同じことを言う人が増えるほど、その正しさを裏付ける証拠も増える。だが、大切なのはそれだけではない。ソースが誰であるっかということと、その情報をいつ伝えるかということにも、重要な役割があるのだ。

p305

また、情報を伝えるにはタイミングも重要です。

たとえば、「このドラマおもしろいよ!」と複数人から数日空いて言われるのと、同じ日に続け様に言われるのとでは、ドラマを見てみようかと言う気分も変わってきます。(間隔が長くなると、最初に言われたことを忘れてしまったりもする)

誰かを変えようとするときは、すべての証拠は平等ではないということを覚えておこう。証拠を凝縮させた方が効果は大きくなる。

p321

以上、THE CATALYST 一瞬で人の心が変わる伝え方の技術の簡単なメモでしたー。参考までに。それでは!

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