映画「パリタクシー」 – よく喋るおばあさんの目的地はどこ?、深い感動作

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知人にすすめられて「パリタクシー」をU-NEXTで観てみました。

中盤くらいまでは「ちょっと冗長すぎるなぁ」なんて思うてたんですけど、最後には完全に引き込まれてしもたんです。そして最後まで観ることで、実はこの中盤までの冗長さがあってこその映画やったんやと気づきました。

今日はこの2023年に日本公開された「パリタクシー」について、じっくり語らせてもらいますわ。パリの街を舞台に、人生最期の時を迎えようとする高齢女性と、どん底にいるタクシー運転手の一日限りの旅…地味な設定やけど、これがめっちゃ心に染みる映画なんです。

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はじめに – タクシーで巡る人生の軌跡

「パリタクシー」って、タクシー運転手・シャルルと92歳のマドレーヌが出会って、パリの街をぐるっと一周する物語やねん。一見シンプルやけど、この旅が二人の人生にもたらす変化は、見てる私たちの心も揺さぶるんですわ。

「中盤までちょっと長く感じたわ〜」「あのおばあちゃん、ホンマに幸せやったん?」なんて声もあるみたいやから、今回は物語の裏側まで深掘りしてみようと思います。あかんで、ネタバレありやから、まだ観てへん人は気をつけてな!

映画の概要 – パリを舞台にした一日の旅

「パリタクシー」(原題:Une belle course)は2022年のフランス映画で、クリスチャン・カリオン監督作品。日本では2023年4月に松竹配給で公開されて、第47回日本アカデミー賞最優秀外国作品賞にもノミネートされた作品やねん。上映時間は91分、G指定で、どの年代の人が観ても大丈夫な内容です。

タクシー運転手・シャルル役を演じるのはフランスのコメディアン、ダニー・ブーン。そして92歳のマドレーヌを演じるのは、フランスの国民的シャンソン歌手リーヌ・ルノー。リーヌさんは実生活でもエイズアクティビストとして活動して、尊厳死法制化への貢献などでレジオン・ドヌール勲章ももらうてはる人やから、役柄と重なるとこがあって興味深いんですわ。

あらすじ – 偶然の出会いから始まる特別な一日

◆ 二人の出会い

金銭的にカツカツで、免停寸前というピンチのタクシー運転手・シャルル。そこへ92歳のマドレーヌがたまたま乗り込んできます。マドレーヌは目的地まで向かう間に「ちょっと寄り道してもええ?」と聞いてきて…こうして二人の一日だけの旅が始まるんです。

◆ パリを巡る思い出の旅

マドレーヌは、幼少期を過ごしたヴァンセンヌ(12区)や、お母さんが働いてた劇場跡のあるパルマンティエ大通り(10区、11区)など、自分の記憶がある場所をタクシーで巡っていくんです。

アルコル橋では歴史を感じ、コンシェルジュリーや裁判所パレ・ド・ジュスティスでは、戦争や自分が受けた不当な裁判のこと…マドレーヌの苦しい過去が少しずつ語られていくんですわ。

◆ お互いに心を開いていく二人

はじめシャルルは「よく喋るばあさんやなぁ」と不快感を示してましたが、徐々に心を開いていきます。

エッフェル塔、シャンゼリゼ通り、ヴァンドーム広場といった観光名所を巡りながら、マドレーヌは自分の壮絶な人生を打ち明けていきます。戦時中にアメリカ兵と恋に落ちたこと、DVの夫との悲惨な結婚生活、息子を守るために極端な行動を取って裁判で有罪になったこと、出所後に息子を戦争で亡くしたこと…そんな重い過去に憤るシャルルも、自分の家族問題やお金の悩みを話し始め、二人はお互いを理解していくんです。

「早く来て」と催促の電話がかかってきても、シャルルはマドレーヌとの時間を大事にします。レストランで一緒に食事して、仕事やお金のことを少しだけ忘れて心を通わせる…この短いけど濃い時間が、二人の人生に色を添えるんですわ。

◆ 目的地は老人ホームだった

マドレーヌの目的地はどこ?というと…なんと老人ホームでした。

マドレーヌにとっては、このタクシーの移動が人生最後の旅だったのです。なぜ寄り道をするのか?なぜこんなにも喋るのか?その理由が分かった瞬間でした。

◆ 予期せぬ別れとマドレーヌの最後

一日のドライブが終わって、マドレーヌは「タクシー代は後で払うわ」と言い、シャルルも「また会いたいな」と思って一度帰ります。でも翌日、老人ホームを訪れたシャルルに告げられたのは、マドレーヌが前日に亡くなったという悲しい知らせ。実は彼女、重い心臓病で余命わずかやったんです。

葬儀の場でシャルルはマドレーヌの代理人から手紙と小切手を受け取ります。手紙には「自由に生きろ」とだけ書かれてて…一日しか会ってへんのに遺産を託すなんて、現実的には突飛かもしれへんけど、マドレーヌにとっては「この一日は、かつて恋に落ちた3か月に次いで幸せな時間」やったんでしょうね。

映画が伝えたいこと – 3つの核心メッセージ

この映画が伝えようとしてるメッセージ、私なりに考えると3つあると思うんです:

人生の最期に何を選ぶか:マドレーヌは、老人ホームに入る前の「最後の自由な時間」で自分の人生の足跡をたどることを選びました。私らもいつか、残された時間で何を大切にするのか、考えなあかんことやと思います。

見知らぬ人との出会いが人生を変える可能性:シャルルとマドレーヌのたった一日の出会いが、二人の人生を大きく変えました。偶然の出会いが、互いを再生させる機会になったんですわ。日常の中で気づかへん出会いの重要性と、互いに心を開くことの価値を教えてくれてます。

過去を受け入れ、未来へ向かう勇気:マドレーヌは過去の苦しみを抱えながらも前向きに生き、シャルルも行き詰まった人生の中で新たな選択をする勇気を得ます。「自由に生きろ」というメッセージはそれを象徴してるんちゃうかな。

冗長に見える中盤の意味 – 寄り道の価値

正直に言うと、パリ巡りのシーンは「もうちょっとテンポよくならへんのかな」と思う瞬間もあります。でも、この「寄り道」が実は大事な意味を持ってるんですわ:

信頼関係の構築:二人が心を開くための時間が描かれることで、最後の感動がより深まります。

人生の長さと短さの対比:92年の長い人生と、たった一日のドライブ。この対比が、人生の時間の価値を問いかけてます。

空間と記憶の関係:変わりゆくパリの街と、消えない記憶の対比。マドレーヌの過去と現在が交差する瞬間が、彼女の人生を丁寧に描く役割を果たしてるんです。

「マドレーヌは幸せだったのか?」という疑問

映画の美しい描写の裏側には、マドレーヌの人生に対する疑問も浮かびます。92歳まで生きたマドレーヌやけど、「最期の瞬間に、たった一日出会ったタクシー運転手しか話を聞いてくれる相手がおらんかった」って状況は、何か切ないもんがありますよね。

マドレーヌの人生を振り返ると:

恋したアメリカ兵とは別れた

DV夫から逃れるために過激な行動に出た

不当な裁判で刑務所に送られた

出所後も息子は戦場で命を落とした

活動家として生きたけど、身近な家族は作らなかった

これらの事実から見ると、マドレーヌの人生は決して平坦じゃなく、むしろ孤独との闘いやったんかもしれへん。でも、息子を亡くした後も独身を貫き、活動家として生きてきた背景を考えると、「この日こそが自分の人生を肯定してくれる最後のチャンス」と思ったんかもしれませんな。

シャルルが最後まで彼女の話を聞いて、過去の重い出来事に共感してくれたことは、マドレーヌには大きな救いになったはずですわ。

マドレーヌの最後の決断 – 賢明だったのか?

たった1日で会った人に遺産を渡すって、現実的に考えたらかなり突飛な決断ですよね。シャルルの本性も、家族関係も、お金の使い方も、マドレーヌには本当のところはわからへんはずです。

この「行き当たりばったり」の決断は、マドレーヌの性格の表れとも言えるかも。でも、彼女の選択を別の角度から見ると:

彼女なりの「家族」の定義:血縁や長い付き合いじゃなく、真の理解と共感を得られる人を選んだ

人生最期の自己決定権:社会的な常識より、自分の意思を貫いた

瞬間の質:長い関係より、短くても意味のある関係を大事にした

もしかしたら、マドレーヌは長い人生の中で「世間体や常識よりも、自分の直感を信じる」ことを学んだんかもしれませんな。

結論 – マドレーヌの「自分なりの幸福」

「マドレーヌは幸せやったんか?」と問われると、答えは観る人によって違うと思います。彼女は「完全な幸福」ではなく、「自分なりの幸福」を見つけたんじゃないでしょうか。

彼女の人生は、社会的に成功した人生とは言えへんかもしれへんけど、自分の信念に従って生きた人生やったんでしょう。シャルルを選んだのも、計算やなく感情的な判断やったと思います。それが良いか悪いかは別として、彼女らしい選択やったんちゃうかな。

少なくともマドレーヌ自身にとっては、シャルルが短い時間でも「自分の人生を受け止めてくれた人」やったことが、最も大事やったんやと思います。

おわりに – 人生の価値を問いかける作品

「パリタクシー」は、タクシードライバーと高齢女性のたった一日を描きながら、人生の最期と再生の機会が交差する瞬間を描いたヒューマンドラマです。

美しいパリの風景とともに、人間の心の機微を丁寧に描いたこの作品は、「自由に生きろ」というメッセージとともに、観る人の心に長く残るでしょう。このメッセージは、シャルルだけでなく、私ら観客にもそっと投げかけられてるんちゃうかな。

皆さんも、マドレーヌやシャルルの選択をどう感じるか、ぜひ自分の目で確かめてみてください。フランス映画ならではの余白を残した物語が、あなたの心にどう響くか…それも映画の楽しみの一つですわ。

作品データ

題名:パリタクシー(原題:Une belle course)

製作年:2022年(フランス)

監督:クリスチャン・カリオン

脚本:シリル・ジェリー、クリスチャン・カリオン

出演:ダニー・ブーン(シャルル役)、リーヌ・ルノー(マドレーヌ役)

日本公開:2023年4月14日

配給:松竹

上映時間:91分

映倫区分:G(一般)

受賞:第47回日本アカデミー賞最優秀外国作品賞ノミネート

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