『ソクラテスの弁明 (光文社古典新訳文庫)』岩波文庫に比べて読みやすい!

『ソクラテスの弁明 (光文社古典新訳文庫)』岩波文庫に比べて読みやす! 本の感想
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ソクラテスの弁明は、古典中の古典である。なんせ2000年以上前の本だ。「大学生のうちに読んでおけ!」リストには確実に入る1冊だろう。大学4年生の頃だったろうか、重い腰を上げてソクラテスの弁明(岩波文庫)を手にしてみた。2ページで本を閉じた。読み切るまでに1ヶ月かかった。そして内容も薄ぼんやりしか分からなかった。

 

それから数年の歳月を得て、新訳のソクラテスの弁明を読んでみた。読みやすくなりすぎていて鳥肌が立った。おもしろくて唸った。光文社古典新訳文庫さん・・・いい仕事しますぜ。「ソクラテスの弁明、一度は読んでおかなきゃなー」と思っている方には、光文社古典新訳文庫をオススメする。岩波文庫より高いけれど、理解度は増え、読み切るまでの時間は減るはずだ。

古代ギリシャでは、ソフィストと呼ばれる「俺、知識持ってるぜ!」という知ったかぶりの人たちが跋扈していた。ソクラテス(たしか70歳くらい)はそんなやつらに我慢ならなかった。だから「俺、全然知識ないから教えてくれー」とソフィストに近寄る作戦に出る。

 

そこでソクラテスは「それってなに?それってなに?」という質問を繰り返しまくった。ソフィストはソクラテスの無限質問に答えを詰まらせる。例えば「正しい行いってなに?」という質問をされたら困るであろう。そういう質問をソクラテスはどんどんソフィストにぶつけていった。そしてソフィストが答えられなくなったら、「あ、知ってるっていってたのに、本当は知らないんじゃん」と、無知の宣告を告げていったのである。

 

そんなことをしているソクラテスは、当然ながらどんどんソフィストの反感を買っていった。そしてついには訴えられてしまった。『ソクラテスの弁明』は、法廷で自分自身を弁明していく本である。

 

ソクラテスはただの「なんでなんで?」おじさんではない。論理力も兼ね備えている。その論理力を法廷でも発揮し、罪状について完全に論破してしまった。ソクラテスが有罪になる根拠はなくなった。

 

しかし裁判員による評決で、僅差で有罪となった。ソクラテスは死罪を言い渡される。だがソクラテスは微塵も動揺しない。「意外と僅差になったね。もっと差が開いて有罪になると思ってたよ。」くらいの感想なのだ。ソクラテスはもともと分かっていたのだ。いくら論理で相手を論破したところで、自分は有罪になるであろうことが。

 

2000年前の人と今の人、「本質的には全然変わらないな」と、この本を読むと思わされる。ポストトゥルースであり、ポピュリズムなのだ。

 

プラトンは、衆愚政治により自分の師(ソクラテス)が殺されるのを見た。「民主主義は最低だ」とプラトンが言い、哲人政治を掲げた理由も分かる。だがプラトンが生きた時代から2000年以上経った今でも、歴史にプラトンの理想政治が行われた国はないし、今でも民主主義だ。そして日本は選挙の投票率が過去最低くらいに下がり、衆愚政治に向かっているように思える。

池上彰氏の苦悩【政治・経済を分かりやすく説明しても投票率は過去最低】

 

歴史は繰り返す。ヒトは変わらない。読んだ後、どんよりとした気分になる。だがソクラテスは、ある種の希望を示している。それについては本書をお読みいただきたい。

 

ソクラテスの生と死は 、今でも強烈な個性をもって私たちに迫ってくる 。しかし 、彼は特別な人間ではない 。ただ 、真に人間であった 。彼が示したのは 、 「知を愛し求める 」あり方 、つまり哲学者であることが 、人間として生きることだ 、ということであった 。私たち一人ひとりも 、そんなソクラテスの言葉を聞きながら──プラトンが書き記した言葉を読みながら──人間として生きることを 、学んでいくのであろう 位置No.2325

 

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