RANGE 知識の「幅」が最強の武器になる 【読書メモ】

本の感想
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科学ジャーナリストのデイビッド・エプスタインさんの『RANGE 知識の「幅」が最強の武器になる』を読みました。ビル・ゲイツ氏がオススメしている本です。

すごくいい本でした。オススメの一冊です。

で、本書のコアはタイトルに書いてある通り「知識の幅を広げろ!」です笑。この複雑な世の中で、1つの専門的な知識だけだとうまくいかない可能性が大きいのですな。(専門家になるな!ということではないので注意)

というわけで、「寄り道しながらいろんなことを学んでいこうぜ!何かを学ぶのに遅いなんてことはないぜ!」と考えをあらためていきましょう。「えー?ほんまかいな?」と思う方はぜひ本書を読んでみてください。エビデンスたっぷりで教えてくれます。

ちなみに、Amazonの商品説明で大事なところを全部言ってくれてる感があるので引用します↓

■世の中は、ますます複雑さを増している。それを反映するように、ビジネスでも、研究開発でも、大学教育でも、スポーツでも、さらには幼児教育でも、分野を狭い範囲に絞って深掘りする「超専門化」がもてはやされるようになっている。ところが、こうした「超専門化」が成功しやすい分野は、実は非常に限定されている(ゴルフやチェスなど、ルールが明確で、迅速かつ正確なフィードバックが得られる「学習環境が親切」な領域だけだ)。世の中の大半の領域は、状況が刻一刻と変わり予測不能な出来事が起きる「不親切な学習環境」にある。そこでは、「超専門化」した人よりも、多くの分野に精通し知識と経験の「幅(レンジ)」のある人のほうが成功しやすいことが、さまざまな調査や学術研究で裏付けられている。
幼い頃から英才教育を受け、若くしてプロゴルファーになり世界を席巻したタイガー・ウッズのようなサクセスストーリーにあこがれ、学ぼうとする人は多い。ところが、大半の人にとって、それは誤ったロールモデルであることを、本書は明解に示す。
■自分のキャリア形成を考えるとき、「1万時間の法則」「グリット」「早期教育」「ストレングス・ファインダー」などに目を奪われやすい。これらがもてはやされるのは、「効率が高い」「時間のムダがない」「近道」とされているからだが、実はこれらの手法がそぎ落とそうとしている「非効率な学習」「ムダな時間」「まわり道」にこそ、長期的に「真の価値」があることを、本書はさまざまな事例と科学的根拠をもとに解き明かす。

以下では、興味深かったところをメモしていきます。

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早期教育だけが成功の道?

なにかの専門家を目指したい場合、できるだけはやくからその分野に取り組んだ方が成功しそうですよね?つまり、幼少期から取り組ませた方が良さそうですよね?

その典型例が、タイガー・ウッズです。誰もが知ってるゴルフ界のレジェンドです。

タイガー・ウッズの父親は息子の特別な才能に気がつき、幼少期からゴルフをやらせました。早期教育の走りですね。その結果、みなさんご存知の通りの大成功ですので、子を持つ親であればこの教育方法に飛びつきたくなります。

でも、他のスポーツ界をみてみると、幼少期から『それ一本』をやっていないのに、スーパースターになった人がいます。テニス界のレジェンド、ロジャー・フェデラーです。

ロジャー・フェデラーの両親は彼のスポーツの才能に特に期待しておらず、母親はテニスのコーチでありながらテニス一本に絞らせることはありませんでした。そのため、ロジャー・フェデラーは小さい時に、いろいろなスポーツの経験をしました。

そしてようやく「テニス一本でやる」と決めた時、同年代のテニス選手たちにはすでにフィジカルトレーナーやスポーツ心理学者、栄養士などがついて長年のトレーニングを積んでいました。

タイガー・ウッズ的な教育観ですと、フェデラーは圧倒的に遅れています。1万時間の法則などで考えても、このまま一流の選手になるのは難しそうです。

しかし、ロジャー・フェデラーは歴代最強と言われるまでのテニス選手になりました。なぜなのでしょうか?

早期教育が功を奏す特別な条件

実を言うと、早期教育が功を奏すためには特別な条件が必要です。

どんな条件かというと↓

  • ルールが明確
  • 同じようなことが繰り返し起こる
  • 正確なフィードバックがすぐに提供される

ゴルフはこれを満たしています。ルールが明確で、同じようなことが繰り返し起こり、玉を打ったらすぐに正解か間違いかが分かるので、修正しやすいです。

それに対してテニスはどうでしょうか?ゴルフに比べて、とても複雑です。なんせゴルフのカップは動きませんが、テニスは相手がガンガンに動きます。ゴルフは一球一球ですぐにフィードバックが提供されますが、テニスはそうではありません。テニスのような複雑な環境では、早期教育は役に立ちづらいのです。

著者曰く『学習環境が親切』な場合、早期教育が功を奏しやすいとのことです。ゴルフやチェスがその代表例です。

テニスのような複雑な環境の場合、臨機応変に自由自在に体を動かせることが求められます。ですから『幼少期からそれ一本』で特化するより、いろいろなスポーツを経験し体の使い方を学んでいた方が、後々のアドバンテージとなるのです。

で、重要なことは、この世界はどちらの環境の方が多いでしょうか?

『学習環境が親切』 or 『学習環境が複雑』

学習環境が複雑な方が多いですよね。

「小さい頃から専門特化すれば人生はイージーゲームになる!」というのは、限られた条件の場合に当てはまりません。タイガー・ウッズ的な教育観はレアケースなのです。

ですから価値観を変えていかないといけませんね。だって世界は複雑なんですから。

ということで、早くから専門特化の道に進むのではなく、今後の人生を見据えて対応力を鍛えるようにいろんなところに片足を突っ込む方が、人生戦略としては適していそうです。お子さんをお持ちの方は、考えてみてください。

学習環境が親切ということはAIにもうってつけ

チェスや囲碁や将棋の世界では、AIの発達が目覚ましいです。

なぜか?

親切な学習環境が整っているからです。

学習環境が親切であれば早期教育は役に立ちます。学習するのが早ければ早いほど有利です。しかし、その環境はAIにもうってつけの環境です。

子を持つ親にとって、悩ましいところですね。

心理学と神経科学の教授で、自身が設立した機械学習の会社をウーバーに売却した経験があるゲイリー・マーカスによると、「狭い世界では、人間はあまり長い間、活躍できない。オープンエンド(制限のない)ゲームであれば、人間は確実に活躍できると思う。それはゲームに限らない。オープンエンドの現実世界の問題を与えると、コンピュータは今もクラッシュしてしまう」

p45

専門特化が早い方がいいわけではない

早くからの専門特化がいいわけではないことは、幼少期だけに限りません。

ノースウエスタン大学の経済学者オファー・ マラマッドさんは、大学に入る前に専攻を決める学生と、入学後2年してから専攻を決める学生とで、その後の進路を調査しました。

  • 入学前に専攻を決めるグループ:大学に入る前に専攻を決めなければならないので、高校時の狭い視野で今後の進路を選ばなければならない。しかし早くから専攻を決めることで、専門分野の知識が増える。
  • 入学後の2年後に専攻を決めるグループ:大学で様々な分野を学んだ後に専攻を決めるので、自分の興味ある専攻を選びやすい。しかし専攻を選ぶのが遅くなるので、専門分野の知識が入学前に専攻を決める学生と比べると少ない。

マラマッドさんは数千人の大卒のデータを分析しました。

その結果、

  • 入学前に専攻を決めた学生は、高い割合で専攻とは全く別の分野に仕事を変えていた
  • 入学後に専攻を決めたグループは、専門的なスキルが少ないために最初の収入は少ないけれど、すぐに収入は追いついていた

ということが分かりました。

ようは、『早くに専門特化の道に進んだとしても、それが自分に合うかどうかは分からないので将来の仕事につながるかどうかは分からない』、ということですね。

以上、興味あるところのメモでした。

最後に著者の言葉を引用します。

一言アドバイスをしよう。それは「後れをとったと思わないこと」だ。

というわけで、いろいろなところに片足を突っ込んでいきましょー。

読書メモとして簡単に動画にしています↓↓↓

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