相続した土地を5年間活用できなかった。不動産屋1社に任せた私の後悔

雑草地と古い空き家、整備後の駐車場、不動産会社選びに迷う人物を描いたイラスト 雑記・エッセイ
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土地の整備工事が終わった後、不動産屋から電話がありました。

「当初お伝えしていた金額より、賃料を下げてほしいそうです」

理由は、借主が駐車する車両の台数を減らしたからとのことでした。

私は、事前に聞いていた賃料を前提に、古い空き家や納屋を解体し、土地を駐車場として使える状態に整えていました。工事費は数百万円規模です。

それなのに、工事が終わってから賃料を下げてほしいと言われました。

「それは、工事を始める前に言ってほしかったな……。後出しジャンケンもありなの?」

そう思わずにはいられませんでした。

ただ、今回のことを不動産屋や借主だけの責任にするつもりはありません。

親族の顔を立て、昔から付き合いのある不動産屋1社だけに任せたこと。不動産屋の活動をほとんど確認しなかったこと。借主との重要な条件を書面で確かめないまま、高額な工事を始めたこと。

私自身も、判断を相手に預けすぎていました。

この記事では、相続した土地を約5年間活用できなかった経緯と、そこから学んだことを書きます。

なお、個人や関係企業の特定を避けるため、時期や金額の一部は丸めています。出来事の流れと教訓は、実際の体験に基づいています。

借り手が見つかってから土地を整備するつもりだった

約5年前に親が亡くなり、私は実家の近くにある土地を相続しました。その土地には、老朽化した空き家と納屋が残っていました。

いわゆる「負動産」です。

どうしたものかと嘆いていても、固定資産税はかかります。親の代で片づかないまま残された以上、私が動くしかありません。

では、どうするか。

私は最初から、

「借り手が見つかってから、相手の希望に合わせて整備しよう」

と考えていました。

借りる企業によっては、古い建物を休憩場所や倉庫として使いたいと言うかもしれません。先にすべて壊してしまうより、借り手の要望を聞いてから工事内容を決めた方が、無駄がないと思ったのです。

この考え方自体は、それほど間違っていなかったと思います。

問題は、借り手探しを不動産屋へ任せた後、私がほとんど状況を確認しなかったことでした。

親族の顔を立てて、不動産屋1社だけに任せた

昔ながらの不動産屋と複数社比較の間で迷い、1社だけに任せる人物を描いたイラスト

私は当初から、複数の不動産会社へ相談した方がよいのではないかと考えていました。

1社の話しか聞かなければ、その会社の提案や金額が妥当なのか比較できません。複数社の話を聞いて初めて、それぞれの違いが見えてきます。

インターネットを使えば、複数社から土地の活用方法を提案してもらえるサービスもあるのではないかと思っていました。

ところが親族から、

「昔から付き合いのある不動産屋に頼んでね。ほかのところを使うのは悪いから」

と言われました。

地域の付き合いを考えると、その気持ちも分かります。

そこで、昔から付き合いのある地元の不動産屋へ連絡しました。

しかし、そこから2年ほど、目立った動きはありませんでした。

私はほかの不動産会社にも相談したくなりましたが、親族からは、

「すでに頼んでいるのに、ほかの会社にも相談するのは失礼ではないか」

と言われました。

確かに、すでに頼んでいる会社を差し置いて別の会社へ相談するのは、感じが悪いのかもしれない。

そう考えた私は、結局、その不動産屋1社だけに任せ続けました。

不動産屋からは、

「この辺りには、土地を借りたい企業がいる」

と聞いていました。

それなら、しばらく待っていれば話が進むのだろう。

もう2年ほどたっていましたが、当時の私はまだそう考えていました。

待っている間も雑草は伸び続けた

夏の雑草だらけの土地で汗をかきながら草刈り作業をする人物を描いたイラスト

ところが、待っても待っても、土地を借りる企業は決まりませんでした。その間も、雑草は容赦なく伸びます。

夏に土地へ行くと、作業を始めて間もなく汗だくになります。蚊も寄ってくるので、落ち着いて休んでもいられません。

1時間半ほど作業しても、土地全体がすっきりするわけではありません。

「今日はここまでにしよう」

そうやって切り上げても、しばらくたてば草はまた伸びてきます。

正確な記録は残していませんが、草が目立つたび、年に何度も土地へ行って処理していました。これを数年間続けました。

初期のころは、親族から「農薬は使わない方がいい」と言われていたため、手作業で草を処理していました。

ただ、管理方法について意見を言う人はいても、真夏に蚊に刺されながら作業するのは私です。

数年たつと、さすがに面倒になり、除草剤も使うようになりました。

しかし、私は除草剤について詳しくありません。散布しても、しばらくすると草はまた元気に生えてきます。

雑草魂とは、こういうことなのか。それだけはよく分かりました。

雑草管理に莫大なお金がかかったわけではありません。それでも、暑さ、蚊、作業時間、そして何度やっても終わらない感覚は、少しずつ心を削っていきました。

「ああ、来年もこの作業をするのかな……」

土地へ行くたび、そんなことを考えていました。

不動産屋が何をしているのか、私には見えなかった

不動産屋へ依頼していた間、どのように借り手を探しているのか、詳しい説明を受けた記憶はほとんどありません。

私が確認した範囲では、不動産屋のウェブサイトに土地の募集情報は見当たりませんでした。現地にも、貸地を募集する看板はありませんでした。

近くの企業へ営業していたのかも分かりません。

進捗報告は、年に1回あるかどうかだったと思います。連絡方法も電話が中心でした。

電話では、その場で複雑なことを聞きにくく、後から話の内容を確認することもできません。

もちろん、不動産屋が何もしていなかったと断定することはできません。私の知らないところで営業していた可能性はあります。

ただ、私には、何をしていて、どのような反応があり、今後どうする予定なのかが見えませんでした。

そして私も、

「昔から付き合いのある不動産屋は、こういうやり方なのだろう」

と考え、きちんと確認しませんでした。

土地について尋ねてきた企業が、後の借主だった

名刺を見直し、以前訪ねてきた企業と借主が同じだと気づく人物のイラスト

あるとき、企業の人が自宅を訪ねてきました。

「近くの土地は、今どうされていますか」

と聞かれました。正確な言葉は覚えていませんが、土地に関心を持っている様子でした。

私は、

「地元の不動産屋へ依頼しています」

と答え、その不動産屋の名前を伝えました。

それだけで、その後は何もしませんでした。

しばらくして、不動産屋から土地を借りたい企業が現れたと連絡がありました。

今回の経緯を振り返っているうちに、以前、土地について尋ねに来た企業のことを思い出しました。名刺を残していたので確認すると、そこに書かれていたのは、今回土地を借りる企業と同じ会社名でした。

「あれ、この会社だったのか」

企業が私から聞いた不動産屋へ連絡したのか、不動産屋も別の経路で同じ企業へ接触していたのかは分かりません。

ただ、今回の借主は、不動産屋から話を聞くより前に、自分から土地について尋ねに来ていた企業だったのです。

このとき、約5年間の募集活動が実際にどのようなものだったのか、ますます分からなくなりました。

数百万円規模の工事を、口頭の条件で始めた

解体と整地の工事現場を前に、高額な見積書を見て驚く人物を描いたイラスト

借り手が決まりそうだと聞いた後、不動産屋からは、企業の駐車場として土地を使い、一定の賃料で数年間借りるという話を聞きました。

私は、話がある程度固まっているものだと受け取りました。

そこで、古い建物を解体し、土地を駐車場として使える状態へ整えることにしました。工事は、不動産屋と付き合いのある建設会社が担当するとのことでした。

ようやく話が動き始めました。

何よりうれしかったのは、これで雑草管理から解放されることです。

気になるのは工事費でした。

以前、工事にはこのくらいかかるだろうと、口頭で大まかな金額を聞いていました。

しかし、実際に正式な見積もりを取ると、その金額を大幅に上回りました。

建設会社からは、数年の間に人件費、資材費、廃棄物の処分費などが上がったためだと説明されました。

正式な見積書を見て、正直に言えばビビりました。口頭で聞いていた金額を、想像以上に大きく上回っていたからです。

「高い。高すぎる。これがインフレというものなのか……」

スーパーの商品が値上がりするのとは、受ける衝撃がまるで違います。インフレの恐ろしさが、身に染みて分かりました。

もっと早く話が動いていれば、もう少し安く済んだのだろうか。

複数の不動産会社へ相談していたら、もっと早く借り手が見つかったのだろうか。

不動産屋から紹介された建設会社だけでなく、ほかの会社からも見積もりを取っていたら、違う金額が出ていたのだろうか。

いろいろなことが頭を駆け巡りました。

しかし、相見積もりを取らなかった以上、最終的な工事費が妥当だったのかを比較する材料はありません。

そして、さらに大きな問題がありました。

工事を始める時点で、借主との正式な契約書はなかったのです。

契約条件をまとめた書面も、工事が終わったら土地を借りるという意思を確認する書類もありませんでした。手元にあったのは、建設会社からの工事見積書だけです。

借主企業とは一度も直接話していません。

借主が何台の車を止める予定なのか、どのような工事を希望していたのかも知りませんでした。

後になって見た当初の契約書案にも、賃料以外の詳しい条件はほとんど書かれていませんでした。

それでも当時の私は、

「不動産屋が間に入っているのだから、大丈夫なのだろう」

と思っていました。

これが昔ながらの進め方なのだろうか。こんなに書面がなくても、本当に大丈夫なのだろうか。

不安はありましたが、そのまま工事は進みました。

工事が終わった後、賃料が下がった

整備後の駐車場を背景に、電話で賃料の減額を告げられて驚く人物のイラスト

そして工事が終わった後、冒頭の電話がかかってきました。

借主が駐車する車両の台数を減らしたため、当初聞いていた金額より賃料を下げてほしいとのことでした。

減額幅は1割強です。

工事を始める前に聞いていた賃料と違う。しかも、土地の整備はすでに終わっている。

納得できない気持ちはありました。

「さすがに後出しすぎるだろう……」

一方で、ここで断れば、土地の活用がまた止まってしまうかもしれません。私は数年間続いた草の管理から、早く解放されたかったのも事実です。

迷った末、私は減額を受け入れました。

減額の話とあわせて、砂利が減ったり、水たまりができたりした場合は、借主側で対応すると説明されました。

ただ、それが賃料を下げる代わりに新しく加わった条件なのか、もともと借主が負担する予定だったのかは分かりません。前もって書面で決めていなかったからです。

また、契約期間が数年あっても、借主は数か月前に通知すれば途中で解約できる内容でした。

契約期間が数年と書かれているからといって、その期間の賃料が必ず保証されるわけではありません。

私は月額賃料ばかりを見て、ほかの条件を十分に確認していませんでした。

それでも、土地を整理できたことは前進だった

今回の進め方には、納得できない部分が残りました。

もっと早く複数の不動産会社へ相談していれば、別の活用方法が見つかったかもしれません。

工事会社から相見積もりを取っていれば、費用にも、もっと納得できたかもしれません。

借主との条件を書面で確認していれば、工事後の賃料変更にも違う対応ができたかもしれません。

それでも、土地を貸せる状態にできたことは、間違いなく前進でした。

数年間続いた雑草管理から解放されます。古い建物も撤去できました。何も生み出していなかった土地を、ようやく活用できるようになります。

高い勉強代にはなりましたが、長年抱えていた問題を一つ片づけられたことには、ほっとしています。

今回の経験から学んだこと

複数社の比較表や契約書、見積書を確認しながら判断する人物を描いたイラスト

不動産屋は最初から1社に絞らない

昔からの付き合いや親族の顔だけで、相談先を1社に決めるべきではありませんでした。

複数社へ相談することは、最初の会社を疑うことではありません。

どのような活用方法を提案するのか、どうやって借主を探すのか、どの程度の賃料が見込めるのかを比較するために必要です。

私は比較しなかったため、提示された方法や金額が妥当だったのか、最後まで判断できませんでした。

依頼後も活動内容を確認する

不動産屋へ依頼した後、ただ待っているだけでは状況が分かりません。

どこに募集情報を掲載しているのか。問い合わせはあったのか。今後どのように探すのか。

定期的に確認していれば、何年も状況が見えないまま待つことはなかったはずです。

高額な工事の前に書面を確認する

工事の見積書があることと、借主との話が固まっていることは別です。

賃料、利用目的、契約期間、中途解約、修繕や維持管理の負担、借主が希望する工事内容。

大きなお金を使う前に、少なくとも主要な条件を整理した書面を確認するべきでした。

相見積もりは、自分が納得するために取る

相見積もりは、業者を疑ったり、最安値だけを選んだりするためのものではありません。

複数の金額や工事内容を比較し、自分が納得して決めるためのものです。

今回の工事費が不当に高かったとは考えていません。

ただ、比較しなかったため、適正だったのか自分で判断できないことが後悔として残りました。

費用と責任を負う人が最終的に決める

親族の意見を聞くことや、地域の付き合いを大切にすることが悪いわけではありません。

しかし、実際に草を処理し、工事費を負担し、契約の結果を引き受ける人が、最終的な判断をするべきです。

意見を言う人と、責任を負う人は同じとは限りません。

今回の私は、親族の顔を立てることを優先し、自分で比較したり確認したりすることを後回しにしていました。

親の代で先送りされた問題は、松だけではなかった

親が残した管理問題は、この土地だけではありませんでした。

実家の庭には複数の大きな松があり、親が生きていたころから処分を頼んでいましたが、先送りされていました。

親から聞いていた伐採費用と、実際に依頼した費用には大きな違いがありました。

土地の工事費は、反対に、以前聞いていた口頭の概算よりも大幅に高くなりました。

方向は逆ですが、どちらにも共通していることがあります。

人から聞いた金額や昔からの常識を、そのまま信じず、自分で確かめる必要がある。

松を処分したときの体験については、こちらの記事にまとめています。

庭の巨大な松を伐採した体験

まとめ

相続した土地を活用できるようになるまで、約5年かかりました。

その間、私は自分で雑草を処理しながら、昔から付き合いのある不動産屋1社へ任せ続けました。

借り手が見つかり、数百万円規模の工事を始めましたが、借主との重要な条件は十分に書面で確認していませんでした。

そして工事が終わった後、当初聞いていた金額より1割強低い賃料を求められ、最終的に受け入れました。

それでも、土地を貸せる状態にできたことは大きな前進です。

今回の経験から最も強く感じたのは、

費用と責任を負う本人が、自分で比較し、確認し、判断しなければならない。

ということです。

親族の顔や、昔からの付き合いを大切にすることが悪いわけではありません。ただ、そのために選択肢を一つに絞り、状況が見えないまま何年も待ち続ける必要はありませんでした。

そして、昔から付き合いのある相手だからこそ、

「ここは、いったいどうなっているんですか」

と強く聞きにくい面もあります。

親の代から付き合いがある人には、こちらも遠慮してしまいます。その遠慮が、状況の見えない進め方をそのまま受け入れる理由になっていたのかもしれません。

相続した土地の扱いに困っているなら、最初から複数の不動産会社へ相談し、それぞれの提案と進め方を比較することをおすすめします。

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