リチャード・ファインマンはこのような言葉を残しています。
「自分で作れないものを、私は理解していない。」
それでは、生物を理解するためにはどうしたらいいのでしょうか?
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「生物を人工的に作っちゃえ!」
という発想になると思いますが、それが『合成生物学』になります。
先日、須田桃子氏の『合成生物学の衝撃』を読みましたので、メモに残したいと思います。(須田桃子氏は毎日新聞化学環境部の記者さんです。日本では珍しいサイエンスライターですね)
X線を使った構造解析が可能になり、DNAの二重らせん構造が明らかになりました。それ以来、ここ数十年で急激に生物学が発展していっております。
その中でも『合成生物学』は今目覚ましい進歩を遂げています。
合成生物学は、その名の通り人工的に生物を合成していく学問になります。
ただし、0から生物を合成するのは難しく、今までは『微生物のゲノムを編集して、人間に有用な物質を作ってもらう』ということが一般的でした。つまり、遺伝子操作して、新たな機能を追加したり、逆に無効にするだけでした。
そこに風穴を開けたのが、クレイグ・ベンダー氏。
彼は、『ミニマル・セル』という人工生命体を作りました。2017年末現在で、1から化学合成したゲノムを持つ微生物に成功しているのは、グレイグ・ベンダー氏の研究チームだけになります。
合成生物学の発展はこれだけはありません。
次期ノーベル賞候補として有力な『クリスパー・キャス9』という技術が合成生物学をさらに進化させます。
クリスパー・キャス9は次の3点が揃った遺伝子技術になります。
- 基礎的な遺伝子工学の知識がある科学者であれば容易
- 遺伝子編集の成功率が高い
- いろいろな生物に適用できる
の3点が揃っております。
今までの遺伝子編集の問題点は、
『狙った遺伝子を編集するには、偶然に頼るしかなかった』
という問題があり、非常に手間のかかる仕事でした。
しかし、クリスパー・キャス9は高い成功率で、狙った遺伝子を編集することができるのです!詳しくはこちらの本を参考にしてみてください↓↓↓
クリスパー・キャス9の登場で、合成生物学における生物の遺伝子編集は、従来よりグッと簡単になりました。これにより、合成生物学は今ホットな分野になっています。
クリスパー・キャス9を使って合成生物学がより進化すると、次のような分野で応用が期待されております。
- バイオ燃料の開発
- 医薬品や化粧品の原料物質の生産
- 砂漠の緑地化
- 害虫駆除
などなどで、私たちの生活に直結することもたくさんあります。
さてさて、そんな非常に有用そうな合成生物学×クリスパーキャス9ですが、危険性も孕んでおります。こういうことを『デュアルユースジレンマ』と呼びます。
代表的な例が、原爆ですね。最初は軍事目的ではなかったとしても、技術が悪用されれば甚大な被害を及ぼす可能性が存在します。
合成生物学×クリスパーキャス9の危険性を理解するためには、まず『遺伝子ドライブ』について知らなければなりません。
遺伝子ドライブという現象は、特に生存に有利な特徴を与えるわけではないのに、50%を上回る確率で子孫に遺伝子が受け継がれていくというものです。
遺伝子ドライブの現象を応用すれば、特定の形質を持った遺伝子を生物に効率的に広めていくことができます。例えば、マラリアを媒介する蚊を遺伝子操作し遺伝子ドライブの現象を使えば、人為的にマラリアを無くすことができるかもしれません。
しかし、自然界は複雑系。
人為的操作が、短期的には素晴らしい効果をもたらすかもしれませんが、長期的な眼で見ると予想もつかないような自然破壊に繋がるかもしれないのです。
恐ろしい力を人間は手にしています。
インターネットの母体ともなった、アメリカの国防高等研究計画局(DARPA)とい機関が資金提供をし合成生物学の領域に影響力を与えていると本には書いておりました。
AI×ロボット×ブロックチェーンが私たちの生活を経済面から変えていき、クリスパーキャス9×合成生物学が自然環境から私たちの生活を変えていくのでしょうか。
楽しみでもあり、恐ろしい未来が待ち受けていますねぇ。
それでは!
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