ギリシャの経済危機の時に財務大臣を務めたヤニス・バルファキスさんの『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』を読みました。
タイトル通り、とんでもなく分かりやすかったです。今まで5冊ほど『分かりやすい』と言われる経済系の本を読んできましたが、これがピカイチですね。
一点注意をあげるとするならば、例え話に
- 古代ギリシャの固有名
- 映画マトリックス
が出てくるので、こういうのにアレルギーがある方は読めないかもですね。
興味深かったところをメモしていきます。
イギリスの『囲い込み』がすべてを商品に変えた
マルクス経済学系の本を読むと、すべてのモノが商品として売買されているということが分かります。資本を持たない普通の私たちは、自分の労働力を商品として市場に持ち込むわけです。
でもこの本を読むと、「昔はそうではなかった」ということが書かれています。労働力が商品になったのは、イギリスの囲い込み運動が原因だったのです。
囲い込み運動が起こるまで↓
- ヨーロッパで造船が発達し、グローバル貿易が始まる
- 羊毛がバカ売れする
- 羊毛を作る生産者、商人は大金持ちへ
- イギリスの領主たちは、社会階層の低い人たちが莫大な富を持つことに腹を立てる
- 自分たちの土地でも羊を買うことにする
- 今まで自分たちの土地で働いていた農奴たちをクビに(囲い込み運動)
そういうわけで、数百年にわたって同じ土地に暮らし、同じ領主に仕えていた農奴たちは、仕事(生産手段)も家も失ってしまったのです。
もし、君が突然家を追い出され、イギリスの田舎の泥道に放り出されたらどうする?隣村まで歩いて行って、最初に見つけた家の玄関のたたき、「何でもやりますから、食べ物と寝る場所をお借りできませんか?」と頼み込むだろう。これが労働市場の始まりだ。土地も道具も持たない人間は、労働力を売って生きていくしかない。苦役を商品にすると言うわけだ。p63
工場ができるまでは、農奴の労働力を有効に使う場所がありませんでした。労働力はたくさん売られていましたが、その買い手がいなかったのです。
中学の時に習った『囲い込み運動』に、世界を変えるほどの衝撃があったなんて知りませんでした。まさかそこから労働力が売られるようになったとは・・・。
かつては封建領主のもとで、農奴たちは土地を耕して自分と家族を養い、領主も自分の取り分をとっていた。この生産と分配のプロセスの中に、市場は存在しなかった。しかし、農奴が追い出されたから、人口の大半が何らかの市場に参加せざるをえなくなった。ほとんどの農奴は労働市場に参加し、苦役を売ろうともがき、汗水たらした働きの交換価値を心配するようになった。p65
とても勉強になる一冊でした。それでは!
読書メモとして簡単に動画にしています↓↓↓
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