『殺し屋1(イチ)』究極のSとMの戦いがエモい

『殺し屋1(イチ)』究極のSとMの戦いがエモいマンガの感想
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「私、SよりMかなぁ」。この漫画で描かれている登場人物はそんな軽いものではない。究極のSと究極のMが登場する。どちらも異常者だ。はっきり言って、ここまで感情移入できない作品にはなかなかお目にかかれないだろう。しかし、なにやら引き込まれる。

 

少年ジャンプの三大原則「友情・勝利・努力」に飽きてきた人にオススメの本である。ドロドロとした歪んだ『モノ』を求めている方にはうってつけの作品だ。ただし、タイトル通り暴力的な表現が多いので、グロテスクに耐えられない方は手に取るのをやめた方がいい。グロテスク耐性のある私でも、目を背けたるようなシーンが多々あった。

 

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漫画の舞台は歌舞伎町。歌舞伎町のど真ん中にあるマンションで事件が起こる。そのマンションは『ヤクザマンション』と呼ばれており、裏社会の住人たちが住み着いている。そんなマンションの一室で、ヤクザの組長が姿を消した。組長の血で書かれた「1」という数字を残して綺麗さっぱりいなくなったのである。

 

組長を殺したのがこの漫画の主人公『イチ』と呼ばれる青年だ。主人公は元いじめられっ子で妄想癖がある。その青年を、実年齢は30代前半だが整形により初老の風貌を身につけた男が操作する。男は周りからは『ジジイ』と呼ばれている。ジジイは妄想癖のあるイチに、現実と非現実の話を織り交ぜながら操作していくのだ。

 

イチは学生時代いじめられっ子だった。自分をうまく表現できない人間だった。大人になってもそれは変わらない。職場では周りからおかしな目で見られ、孤立している。愛想よく振る舞おうとする笑顔が気持ち悪く、笑顔を作るたびに人を不快にさせるのだ。

 

しかしイチには才能がある。一瞬で現実と非現実を混同させる妄想力だ。そんなイチの才能に気がついたのがジジイだ。標的とする人物をイチに殺害させる時、ジジイはこのようなことを言う。「あいつは、イチを過去にいじめていた〇〇君にそっくりだ。悪いやつなんだ」と。この言葉を聞くとイチは一瞬でいじめられていた過去がフラッシュバックする。そしてその負のエネルギーが原動力となり、狂気ともいえる暴力性を発揮する。標的は惨殺されるのである。イチはそこに性的快感を覚える。

 

イチの暴力性は、仲間からしても「あいつは異常だ」と言わしめる。だがその圧倒的な暴力性に性的快感を覚える人物が登場する。それが本作品のもう一人の主人公の垣原だ。垣原がジジイの最終ターゲットである。垣原はイチの暴力性に興奮する。イチが自分を殺しに来るのを、恋人を待つような感覚で胸をときめかせる

 

究極のSとMのぶつかり合いを描いた作家が『山本英夫先生』だ。山本先生の作品はどれも読み応えがある。心の中の隠れている闇の部分を刺激されている気分になる。さすがに『殺し屋1(イチ)』では刺激されないが、このような特質を持った人間も少数ながらいるのだろうなと考えさせられる。

 

殺し屋1(イチ)は全10巻と読みやすい。私はKindle Unlimitedで読んだ。普通の漫画に飽き飽きした人は手に取ってみるのもいいだろう。繰り返しになるがグロテスクがダメな人には注意が必要だ。

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