身寄りのない少女は親戚をたらい回しにされた。少女はそのことを「寝る場所が変わるだけのこと」と表現している。少女の心は閉ざされていた。服はボロボロ、お風呂に入るのも2〜3日に1回が当たり前だ。そういう身なりなので、同級生からも無視される存在だ。しかし、ようやく人生に転機んが訪れる。倫理を教える高校教師に引き取られることになったのだ。
この作品は「勉強ってなんのためにするの?」と疑問を持つ学生にオススメできる。「勉強なんて意味ねーよ」という大人も読むべきであろう。このように書くと頭の固いストーリーを思い浮かべるかもしれないが、純粋にストーリーとして面白い。後半は恋愛系になってしまうけれど、それもおもしろい。マンガのタイトルが怪しげなので敬遠されてしまうかもしれないが、そこを乗り越えて読んでみてもらいたい。私は一気読みしてしまった。
この作品のおもしろさは『心の成長』にある。たらい回しにされ続けた少女スミカは、ろくな教育を受けていない。女子高生なのだが、正しい箸の持ち方も知らない。もちろん彼女は悪くない。周りの大人が、スミカを一人の人間として扱ってこなかったのである。スミカを初めて人間扱いしたのが、高校教師の昭明(しょうめい)だ。
昭明はスミカを教育していく。良き教育者とは『人の可能性を信じる』ことができる人間だ。昭明はまさにそれができる教育者だ。厳しくもスミカを導いていく。学ぶことの大切さを教え、スミカが自分の人生を生きられるように指導していく。
昭明に引き取られたスミカはイライラしていた。今までの家族とは違って、昭明が放っておいてくれないからだ。初めて他人から施される優しさに、スミカの心は対応できなかった。
始めは反抗的だったスミカも、昭明の誠意な態度に徐々に心を許していく。他人を呼ぶときは「あんた」、感謝の言葉を述べる場合でも「・・・」と無言を貫くスミカが、他人の存在を意識し言葉遣いを変えていく。
私たちはのほとんどはスミカと違い、親戚をたらい回しにされた経験はないだろう。両親がいて、愛されて育ってきたはずだ。でも、スミカと同じように心を閉ざしていないだろうか?他人と付き合うことを「めんどくさい」と思い避けようとしていないだろうか?
学べば新たな視座が獲得できる。新たな視座を獲得すれば、他人の気持ちも別の側面から見ることができる。お互いにそうすることができれば、人間関係もぐっと楽になるだろう。スミカの成長から学べる点は多い。この作品は、人との接し方を改めるきっかけを作ってくれる。
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