「“メタアナリシス(メタ分析)”って聞くけど、なにそれ?」
私が大学生になった時に疑問に思ったことです。最近ではネット上でも「エビデンス重視!」なんて言われてきているので、知っておいて損はない話だと思います。(むしろ知っておくべき。変なサプリメントとかに騙されないためにも)
まずは結論から言ってしまうと、メタアナリシスとは、同一の研究テーマに関する複数の独立した一次研究を集めて、それらを統合して解析する統計的手法のことです。
ですから、エビデンスの中でもっとも信頼度が高いものがメタアナリシスという統計手法を使って研究をまとめたものです。エビデンスといっても信頼度が様々なのですね。
ということで、今回はそれらについてサクっと書きたいと思います。
エビデンス信頼度ランキング
それでは以下に、エビデンスの信頼度をランキングにして書いていきます。
1位:ランダム化比較試験のメタアナリシスが最高峰
科学界でもっとも信頼レベルが高いものが『ランダム化比較試験のメタアナリシス』です!(メタ分析やらメタ解析とも呼ばれている)
ランダム化比較試験のメタアナリシスは、名前の通り、複数の“ランダム化比較試験(RCT)を統合したもの”になります。ランダム化比較試験を統合することで、因果関係をかなり明らかにしていることになり、エビデンスとしては『もっとも信頼度の高いもの』となります。
「そもそもランダム化比較試験(RCT)って何よ?」という話ですが、これについては、もう少し後で説明します。ちなみに「メタ」というのは「高次の」という意味です。
2位:観察研究のメタアナリシス
『ランダム化比較試験のメタアナリシス』の次に信頼度の高いものが『観察研究のメタアナリシス』になります。
観察研究というのは、特定の人たちを長期間にわたって追跡する調査方法です。例えば、「喫煙は肺がんと関係あるの?」を調べたいと思ったら、
- 肺がんではない喫煙者を探す
- 肺がんではない人を探す
- 10年くらい観察して、肺がんになるかならないかを調査する
こんな感じの手法を観察研究と言います。
これらの観察研究のデータを大量にまとめて統合したものが、『観察研究のメタアナリシス』です。ランダム化比較試験のメタアナリシスより信頼レベルが低い理由は“不確定要素が多い”からです。
3位:ランダム化比較試験(RCT)
次に信頼度が高いものが『ランダム化比較試験(RCT)』です。ようやくランダム化比較試験の説明をしていきます👍
ランダム化比較試験とは、例えば、ある薬の効果を調べたいときに、
- 参加者をランダムに2つのグループに分ける
- 片方のグループには薬を処方、もう片方には偽薬を処方
- 研究者も薬と偽薬の区別がつかないようにする
と、ランダムを極めたような手法がランダム化比較試験(RCT)なのです!ミソなところは、“研究者もどちらが本物の薬か分からない”ところです。
研究で怖いところが『バイアス』がかかってしまうところなんですよね。いくら公正に判断しようとしても、「一生懸命長年研究してきた薬なのだから、これは絶対に効果があるはず!」というバイアスがかかってしまいます。
そうなっちゃうと研究結果の解釈が変わってきてしまうのですよ😱だからこそ、研究者も薬と偽薬がわからないように、ランダムにすることが大切なのです。
先ほど説明しましたが、上2つが、ランダム化比較試験(RCT)をまとめたもので、信頼レベルがもっとも高い科学データになります。複数のRCT結果を1つにまとめることで、「全体としてどのような関係があるのか?」を、かなり明らかにすることができるんですね〜。
ちなみに、ランダム化比較試験(RCT)でも信頼レベルがあって、
- 参加者が多い
- 実験の期間が長い
- ランダム化比較試験の数が多い
ほど、信頼レベルは高くなります。
観察研究
この辺から、どんどんと信頼レベルが低めになっていきます😅
観察研究としては、
- 調査した人が多い
- 調査した期間が長い
を満たすことで、信頼レベルが上がっていきます。
ただ、観察研究では因果関係までが見えにくいので「こんな可能性もあるんだなぁ」くらいの認識がいいのかもしれません。
動物実験
マウスを使った実験も「なるほど、なるほど」くらいの認識がいいと思います。だって、ヒトとマウスって違いますから😅
といっても、マウスの実験がいずれヒトに試されていきますから、チェックしておくと楽しいところなんですね。いきなりヒトで実験するのはお金もかかるし、リスクが高いからできないんです。だから最初の実験は動物実験からスタートするのが普通です。
エビデンスではないもの:意見
「これ飲んで痩せました!」
なんてのはエビデンスじゃありません。
おわりに
この記事では『エビデンスのレベル』について書いてきました。
信頼すべきはメタアナリシスです!だから何かを判断するのであれば、メタアナリシスによる科学的知見を得た方が良いと思います。
ということで大学生の皆さん、教授に「論文を読みなさい!」なんて言われたら、メタアナリシスの論文をあたってみてください。(背景知識がないと読むのが大変&参考文献も大量になってきますが・・・笑)
ある分野について詳しくなりたいのであれば、ある分野の本なり論文なりを一気に読んじゃうことです。だとしたらメタアナリシスの研究論文は最適かなぁと思います。(論文紹介などがあれば、教授や准教授にツッコミ入れられまくってアワアワすると思いますけどね^^;)
研究者の道を進みたいのであれば、避けては通れない道になりますので頑張ってみてください!それでは!
大学生のうちに読んでおくべきであろう本↓
追記1:ランダム化比較試験のデメリット
ランダム化比較試験(RCT)が科学的にやるべき手法なのですが、デメリットもあります😱
- お金がかかる
- アメリカ人のデータを日本人に使えるのか問題(文化要因が大きい心理的な研究など)
などです。
他にも、例えば薬を治験で試すときは、“健康な人”が選ばれます。でもその薬を実際に使う人って、健康状態がよくない人なのですね。だから、メタアナリシスで得た知見と同じ効果が出るなんて保証はないんですね〜。
追記2:メタアナリシスといっても集めたデータがゴミならゴミ
Garbage in , garbage out.
ゴミを入れたらゴミしか出ない、という意味です。つまり、質の低い研究を集めてメタアナリシスによってまとめても、その結果は質の低いエビデンスにしかなりません。
ですから「お、これ、メタアナリシスやんけ!信用できるやつやんけ!」と盲信してはダメなのですね。エビデンスの質を評価できるようにならないといけません。もうこれは一般人には無理な話なのですけれど😱研究者になるなら避けては通れない道です。
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