医療経済という概念【新薬は社会的効果があるのかを考える】

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脳科学者の池谷裕二さんの『脳はみんな病んでいる』で、医療経済について書かれているところが興味深かったのでメモ。

医療経済というものがありまして、新しい薬が出た時には、その薬の社会的効果が計算されます。

新薬を認可することで、

  • 何人の人がどのくらい得をするのか
  • 薬の保険カバーによる社会保障費の増額はいくらか
  • 病人が救済されることによる社会利益はどれほどか
  • 薬の副作用による社会的損失はどれほどか

などを計算します。

なんと人の命や障害や生活の質を「お金」に換算する計算式まであるのです。p105

 

 

でもそう考えていくと、ある問題が出てきます。珍しい病気の場合は患者数が少ないので、新しい薬を作ったとしても開発費の元が取れないため、新薬が開発されそうにありません。その問題を解決するべく、日本政府はある手を打っています。

 

患者数が少ない疾患の良薬を開発した企業に損失が出ないように、希少疾患の薬に高値をつけるという特別システムを設置しています。この制度のおかげで、珍しい難病にかかった患者が救われるようになりました。

 

しかし、デメリットもありました。

希少疾患の創薬は未開拓な領域だったために、製薬企業にとっては競合相手が少ないおいしい市場です。しかも公的な制度で保護されているから儲かる。過去5年間に世界で承認された新薬の40%が希少疾患の治療薬なのですよ。つまり、製薬企業の開発の力点がそちらの方向に移ったために、他の分野の創薬が手薄になってしまったのです。アルツハイマー病やパーキンソン病などの老年制神経変性疾患の新薬なんてわずか3%ですよ。まだ治す薬がないにもかかわらずです。p106

 

また、この制度を裏をつくような、さらなる問題も出てきました。本当は広範な疾患に有効なのに、まず患者の数が少ない希少疾患に適用して、高価な薬価を国に確約させます。そしてその後に、一気に適用疾患を拡大していくという手口です。薬価が見直されるまでの時間差を利用して、ぼろ儲けするというわけです。

 

高齢社会を爆進する日本において、医療費の負担はどうするの?という話は避けられません。医療経済の話は、もっと認知されるべきでしょう。それでは!

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