絶対に許せないアビーを許すことがジョエルを許すことにつながるのかもしれない

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ラストオブアス2をクリアしてどうしようもないこの気持ちを整理するために、また少しばかり記事を書いていきます。

 

エリーのアビーへの復讐の旅は、序盤では明確に『復讐』を目的としていました。しかし、旅を通じて復讐の連鎖性、アビーとアビーの父親のことなどを知ることで、当初の目的が揺らいできました。だから中盤、ジャクソンに帰ろうというトミーの提案にもうなづきます。

 

そして終章、もう一度アビーを殺しにいくことを決意しますが、その時の目的は『復讐ではない』のだと思うのです。自分へのケジメなのかなと。

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絶対に許せないアビーを許すことがジョエルを許すことにつながる

ゲームをプレイした方なら分かると思いますが、エリーとアビーの最後の戦いは『復讐』が目的ならあんな戦いをする必要はありませんでした。杭に吊るされているアビーを、エリーは切り刻むこともできました。アビーを杭から下ろした後に、後ろから刺すこともできました。アビーを痛めつけ、殺すことなんて、あの場面ではいくらでもできたのです。

 

しかし、エリーはアビーと正面から戦うことを望みます。前の戦いでは敗北しているのにです。「アメリカ人は決闘が好きだから、殴り合いが好きだから。最後はそれがお決まりだから。」という意見もあるかもしれませんが、このゲームの製作者たちが『アメリカのお決まり』に付き合わないことは、前作で証明済みです。

 

ではなぜ、エリーはアビーと正面から戦うことを選んだのでしょうか。その理由は『エリーなりのケジメ』をつけたかったからだと思うのです。

 

エリーはジョエルが亡くなってからずっと後悔しています。ジョエルを許せなかったことを。

 

エリーは10代特有とでも言いましょうか、『生きた証』を残したかったと思っていました。エリーに限らず、当たり前のように突然命を奪われてしまう世界では「どのように死ぬか」がとても重要な価値観なのかもしれません。前作の病院の最後で、エリーは自分の命を捧げていたらワクチンが作れていたと思っていました。そうすれば世界中の人々を救えて、自分の生きた証を残せたはずだと。

 

その証を取り上げたのが、ジョエル。ジョエルが亡くなる前の晩、勢い余ってエリーは口走ってしまいます。「私の生きた証を奪った」と。我が子のようにエリーを大切に思っているジョエルにとって、それはつらい言葉でしょう。ジョエルの気持ちを思うと、胃が痛くなります。

エリーのその言葉を聞いた後、ジョエルはこう言います。「もしも神様がもう一度チャンスをくれたとしても、俺はきっと同じことをする」と。

 

世界中は、エリーを犠牲にしてワクチンを開発することを望みました。アビーも、アビーの父親も、エリーを子どもの頃から知っているファイアフライのリーダーのマーリーンもです。そしてなによりエリー自身もです。でも、ジョエルは違いました。ジョエルの考えは自己中心的かもしれません。しかし、世界中の人を助けるかもしれないワクチンより、エリーを選びました。世界中でジョエルだけが。

 

エリーも痛いほどジョエルの気持ちは分かっています。だけれどもジョエルの選択を一生許すことはできないだろうと、エリーは言います。でもその後、「許したいと思っている」とも付け加えます。「絶対に許す事はできないけれど、許したいと思っている」、この言葉はこの作品を表す象徴的な言葉でしょう。

 

そしてこの会話が、エリーとジョエルの最後の会話になりました。昨晩の冷たい言葉が、ジョエルと交わした最後の言葉になってしまったのです。エリーはそれを悔いています。ジョエルが死んで、ようやく自分がすでにジョエルを許しているのに気がついたのです。でもその言葉をジョエルに伝えることができませんでした。

 

この複雑な気持ちを整理できないまま、エリーはアビーと戦います。アビーを殺せば自分の気持ちが晴れると信じたいのです。そしてアビーを窒息させようとするまさにその瞬間、脳裏にギターを弾いているジョエルが浮かびます。その後、エリーは涙を流しながらアビーを抑えていた手をどけます。

 

ジョエルとの最後の晩、エリーは「絶対に許せない」と言いました。しかし、復讐すると胸に誓ったジョエルを殺した張本人であるアビーを許すことができるのであれば、『絶対なんてない』ということを示せるのではないか、そう思ったのではないでしょうか。

 

ゲームの最後、エリーはジョエルにもらったギターを弾きます。アビーとの戦いで薬指と小指を失った手では弦を押さえられず、満足に音も出せません。悲しい音色を奏でた後、ギターを窓際に置き、エリーは家を出ていきます。その家にはもう二度と戻ることはないでしょう。

 

これがエリーなりのジョエルとのお別れだったのだと思います。ジョエルもきっと「俺の復讐なんかにとらわれず、自分の人生を歩んで幸せになってくれ」と言うでしょう。ジョエルがそう言うことは、エリーはずっと分かっていたはずです。あの雪小屋で、ジョエルがアビーに痛めつけられ、もう口を開くこともできない状態でも、目で「俺のために復讐なんかするな」とエリーに訴えていたと思います。ジョエルはそういう男です。自分のことよりエリーの幸せを願う男です。作中で、この映像はエリーの頭の中で何度もフラッシュバックします。だからエリーはジョエルの気持ちを理解していたはずなのです。

 

アビーとの最後の戦いで、ジョエルの言葉、そして自分がジョエルにかけた言葉をエリーは思い出しました。それでアビーを許すことに決めたのです。アビーを許すことで、ジョエルを許し、そして自分自身を許せたのではないでしょうか。

 

ということで、モヤモヤしていた気持ちを整理するべく書いてみました。参考までに。それでは!

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