2036年には2万人くらいのお医者さんが足りなくなるってニュースで見たけれど、本当かな?
そんな疑問に答えます。
結論から言うと、「人が健康になれば医師不足も問題ないよ!」ということに尽きるかと思います。そうは言っても、それだけじゃ物足りないと思いますので、医療政策学者の津川友介さんのツイートを参考にしてみましょう。
日本の病院のベッド数が欧米の3倍、外来受診の頻度が2倍なので「相対的な」医師不足になっているだけです。医師数を増やして対応するよりも、ゲートキーピング機能を強化して、需要をコントロールする方が正解だと思います。さらに、医師数の予測モデルはあてになりません。https://t.co/qS8gnjrNWn https://t.co/g6vsDxYrNg
— 津川友介 (@yusuke_tsugawa) 2019年2月15日
- ベッド数が欧米の3倍
- 外来受診の頻度が2倍
ということで、相対的な医師不足に陥っているようです。大変勉強になるツイートが続々とありましたので、記録として残しておきたいと思います。
人口当たりの医師数とは?
そもそも日本の人口当たりの医師数はどのくらいなのでしょうか?
日本とアメリカやカナダの人口あたりの医師数は大差ありませんが、アメリカやカナダでは医師不足は大きな問題になっていないと思います。人口あたり医師数が第1位のギリシャが優れているとも考えにくいと思います。詳しくは⬇️をご覧ください。https://t.co/qS8gnjrNWn https://t.co/sR9XeB4Kmo
— 津川友介 (@yusuke_tsugawa) 2019年2月17日
こちらのリンク先によりますと、OECDの2015年のデータでは日本では人口1000人当たり2.3人になります。OECDの平均は人口1000人あたり3.3人ですのでそれと比べると日本の医師数は少なめになります。
でも、だからと言って日本に医師が少ないかといえばそんなことありません。
日本の医師数は人口1000人あたり2.3人です。アメリカの医師数も2.6人と同じくらいですが、医師不足はアメリカでは問題になっていません(プライマリケア医が今後不足してくるのではないかということは問題になっていますが)。いずれにしても、OECD平均値はあくまで大雑把な目安にしか過ぎず、医師数の目標値や、医師数が足りているかを判断する基準値にはなりえないと私は考えています。
ここで、「アメリカは国民皆保険じゃなくて、誰もが病院に行けないから医師数が足りない問題が発生してないだけでは?」という反論が来るかもしれません。
それに対してはこちらのツイートをどうぞ。
アメリカ以外の全ての先進国(日本を含む)が国民皆保険を持っています。アメリカですら国民の9割は医療保険を持っています。 https://t.co/sjvHQve0yr
— 津川友介 (@yusuke_tsugawa) 2019年2月16日
知らない人にとっては意外な先進国の国民皆保険の話ですな。
あとは、お医者さんが多い地域・少ない地域で忙しさが変わってくるでしょうから、そのあたりはコンパクトシティ化するなりしていかないといけないのでしょう。
医師不足の問題点とは?
医師不足の本質的な問題点についてみていきましょう。
医療サービスやりすぎ問題
そもそも現在の医療サービスに対する需要が適切なレベルであるかが分からないからです。自己負担額が安すぎるためにモラルハザードが起きており、本来ならば必要な需要よりもめのところでキープされているかもしれません。
極端に言ってしまえば、
簡単にお医者さんに頼りすぎ
ということですな。
モラルハザードの意味は下の通り。(Mac付属の辞書より)
保険に加入したことによって,加入者が果たすべき注意を怠ったり,故意に事故を起こしたりするような危険。道徳的危険。
「病気になっても病院があるからオッケー!風邪もインフルエンザも怖くないっしょ!うがいも手洗いもしないぜ!」となったら医療費がめちゃくちゃかかってしまうのです。(医療費の負担率ですが、年齢などによって異なりますが、働いてる人の負担は3割で税金が7割という感じなのです。)
日本の財政が厳しい今、そこまで医療だけに税金をブッこんでいていいのか問題が発生しております。未来を担う世代の若い人たちの教育費はOECD最低水準。6人に1人の子供が相対的貧困。消費税や社会保障費は増大して、ツケが若者世代ほど回される構造。
若い世代に税金を回さないと将来絶望
というのが日本の現状になります。
医療の本当の目的とは?
お医者さんの目的は患者を薬漬けにすることではありません。できれば二度と会わないような関係を作っておきたいものです。(病院に通わなくてよくなるくらいに健康的な生活を送れるってことです)
津川さんの言葉を長いですが引用します。
では必要医師数はどのように評価したら良いのでしょうか?社会が医師を養成する一番の目的は医療サービスの提供を通して国民の健康を維持、向上させることです。それならば、もしそれ以上医師数を増やしても国民の健康が改善しないならば、医師数はそれ以上増やすべきではないと考えます。逆に医師数が少し減ってきても、患者さんのアウトカム(一般的には健康アウトカムに加えて満足度も含まれます)にネガティブな影響がないのであれば、その減少は許容されうるものなのかもしれません。要は、必要な医師数は、OECDの平均値や現在の医療サービスに対する需要をもとに評価するのではなく、患者さんのアウトカムとの関係の中で評価されるべきであると私は考えています。この視点を持ったエビデンスが現在はとても少ないのですが、今後はもっと増えていってくれることを期待しています。
医者を増やすことが国民の幸せになるとは限らない
のですな。国民が病気にならなければお医者さんなんて少なくてOKなのです。
今のまま医師数を増やしても、QOL高い科(皮膚科、眼科、放射線科等)、都市部の医師数⤴︎になるだけだと思います。
今のように医師がどのように専門科や就職場所を決めるのか調査せずに、医師数を増やしても解決しません。
きちんとデータを取り、精緻なシミュレーションすれば予測可能なはずです。 https://t.co/rhADbyvUPM
— 津川友介 (@yusuke_tsugawa) 2019年2月16日
研究もせずに単に医師数を増やす政策というのは、医学で言うところの、発熱患者の熱源を明らかににせずに抗菌薬を投与しているようなものです。そもそも感染症かどうかも明らかではありません。
データと研究費、一年間の猶予を頂ければ、私の方でシミュレーションまでしてエビデンスを提供できます https://t.co/uAn1x95eIz
— 津川友介 (@yusuke_tsugawa) 2019年2月16日
ゲートキーピーングとは?
ゲートキーピングという聞きなれない言葉が、医療費増えすぎ問題のキーワードとなりそうです。
アメリカで多くの人が加入しているHMOという保険は、プライマリケア医に紹介状を書いてもらわないと専門医の診療は保険でカバーされません。英国も似た制度です。日本もこの様なゲートキーピング機能を導入し、医学的必要性を元に受診の是非を決めるべきだと思います。 https://t.co/wGRdH57U8d
— 津川友介 (@yusuke_tsugawa) 2019年2月18日
ツイートには『プライマリケア医』という、こちらも聞きなれない言葉があります。Mac搭載の辞書で意味を調べますと、以下の通り。
最初に施される治療。患者が最初に利用する医療は,地域の医師による総合的な診断処置および指導であるべきとする考え方に基づく。初期治療。一次医療。PC 。
要は、地域のお医者様に診てもらって、そこから専門医に診てもらうか決めましょうって話ですな。
もちろんプライマリケア医が患者の緊急性を判断しますので、緊急性が高い場合には救急外来や電話連絡を通じて、タイムリーに専門医に診察してもらう仕組みもきちんと残されています。 https://t.co/6QsFuevzw6
— 津川友介 (@yusuke_tsugawa) 2019年2月18日
いやー、大変勉強になりました。
コメント