内部留保が溜まっているというけれど、内部留保ってなんなの?政治家は「賃上げしろ!」みたいなこと言ってるけれど、内部留保を社員に還元することなんてできるの?
そんな疑問に答えます。
結論から言うと、内部留保が現金であれば社員に給料・ボーナスなどで還元できますが、内部留保は現金だけではありません。
以下ではもう少し具体的に内部留保について書いていきます。このページは上念司さんの『経団連と増税政治家が壊す本当は世界一の日本経済』を参考にしています。
内部留保とは?
内部留保とは会計上の用語でして、内部留保を理解するためには、企業の利益分配の仕組みについて知る必要があります。
営業活動などで獲得した利益を処分する場合、次のどちらかの選択をしなければなりません。
- 社外に流出→株主への配当など
- 社内に留保→現金や預金のままで保有・有価証券を購入・設備投資などの実物資産を購入・借金の返済などなど
設備投資などをした場合の内部留保
有価証券や設備投資などの実物資産を購入した場合、現金や預金が社外へ流出したように見えます。しかし、現金・預金と引き換えに有価証券や実物資産が会社に入ってくるので、利益は社内に留まったままになります。
また、借金を返済した場合も同様で、負債の減少で純資産が増加するため、やはり利益は会社内に留まります。
社外に流出せずに社内に留まる利益のことを内部留保
このように社外に流出せず、社内に留まる利益のことを内部留保と言います。
『内部留保=現金』ではない
のです。
内部留保が現金ならば社員に還元できる
政治家の方が「膨れ上がった内部留保を社員に還元しろ!」と言うのは、内部留保が現金などで留保されている場合には正しいです。しかし、実際の内部留保は現金で保有というのは稀なことです。
たいていの内部留保は、建物や生産設備など、実物資産に変わっています。p41
内部留保はバランスシートで確認できない
内部留保は勘定科目ではありません。利益処分の選択肢のことですので、いくらバランスシートを眺めたところで内部留保は見つかりません。
報道される内部留保とは『利益剰余金』のこと
報道されている内部留保は、勘定科目である『利益剰余金』のことを指すのが一般的になります。
通常、マスコミ報道などで「内部留保」としてカウントされるのは、「利益剰余金」と言う勘定科目です。企業の純資産(資本)の部は、資本金、資本準備金、資本剰余金、利益剰余金などによって構成されています。このうち利益剰余金のみが企業の営業活動から生じます。それ以外は全て投資家によって外部からもたらされたお金です。p40
内部留保の実態
「内部留保を積み上げる」と聞くと、社員に還元しない、なんとも強欲な企業であるように思えますが、実態は、
利益を株主に配当せず、利益を再投資して営業活動を伸ばそうとしている
ということになります。
内部留保を減らすということは
内部留保を減らすということはどういうことなのでしょうか?
内部留保を取り崩すと言うのは、たいていの会社にとっては、設備や本社ビルなどを売却することを意味します。p42
利益を生み出す生産設備を売却してもいいのでしょうか?内部留保を減らすというのは、そういう一面があるのは知っておかなくてはならない事でしょう。
内部留保をもっと株主・従業員に還元してもいい
ここまでは「内部留保は現金ばかりじゃないから、社員に還元できるわけではない」ということを話してきました。しかし、現金をたくさん保有している企業があるのも事実です。
内部留保と村上ファンド
会社として利益を増やすためには、生産設備を売却して現金化するより、生産設備をフル稼働した方が良さそうです。しかし、フル稼働して得た利益をさらに設備投資に再投資し続けてもいいものなのでしょうか?さすがに株主や従業員に還元した方がいいのではないでしょうか?
この点を突いたのが村上世彰さんによる村上ファンドです。
「日本企業は内部留保を積み上げること、つまり再投資をしてシェアを拡大することばかりに目を奪われて、株主に対して還元する努力が足りない」というのが彼らの主張でした。p43
この話については村上世彰さんの著書『生涯投資家』が参考になると思います。マスコミの情報を信じていたら「強欲の塊め!」みたいなイメージがあると思います。この本を読む事で、村上ファンドに対して全く新しい一面から見ることができます。オススメの本です。
キャッシュリッチ企業は社員に優しい?
現金をたくさん持っているキャッシュリッチ企業とは、総資産に占める現金の割合が多い企業のことです。ということで、
株主や従業員にもう少し還元したら?
と思えてしまう企業になります。株主や従業員がいてこその会社ですからねぇ。
現金をどんどん溜め込む理由
現金をどんどん溜め込む理由ですが、「強欲だから」という理由もあるかもしれませんが、一番は
将来への不安
になります。企業の経営にはトラブルがつきもの。そして今は変化が早すぎる時代。そう考えると、現金を溜め込んで予期せぬトラブルに備える気持ちもわかります。
おわりに
「内部留保」と一言で言っても、企業の資産の内訳によって意味合いが変わってきます。社員に還元できない企業もあれば、できる企業もあるのですな。
以上、内部留保についての話でした。詳しくは上念司氏の本をお読みください。それでは!
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