終末期医療はお金がかかります。実費なら「どうぞどうぞ」という話で片付けられるかもしれませんが、税金がたっぷり投入されるので話がややこしくなります。
ですから、
- お年寄りの最後にそこまでお金かけるの?どうせ治らないんだよ?
- 日本の財政が潤っていたらいいのだけれど、財政問題がやばいよ?
- 子どもの6人に1人は貧困状態にあるんだから、そっちにかけるべきじゃない?
などなどの話が出てくるんですな。
終末期医療の話について、落合陽一さんと古市憲寿さんの見解が書いてある記事が興味深かったです。
最後の1ヶ月の延命治療はやめればいいんじゃない?
2人の見解によりますと、最後の1ヶ月の延命治療はやめるか、実費にすればいいとのことです。合理的に考えたらそりゃそうなるでしょうな。
古市〈財務省の友だちと、社会保障費について細かく検討したことがあるんだけど、別に高齢者の医療費を全部削る必要はないらしい。お金がかかっているのは終末期医療、特に最後の一ヶ月。だから、高齢者に「十年早く死んでくれ」と言うわけじゃなくて、「最後の一ヶ月間の延命治療はやめませんか?」と提案すればいい。胃ろうを作ったり、ベットでただ眠ったり、その一ヶ月は必要ないんじゃないですか、と。順番を追って説明すれば大したことない話のはずなんだけど、なかなか話が前に進まない〉
落合〈終末期医療の延命治療を保険適用外にするだけで話が終わるような気もするんですけどね。たとえば、災害時のトリアージで、黒いタグをつけられると治療してもらえないでしょう。それと同じようにあといくばくかで死んでしまうほど重度の段階になった人も同様に考える、治療をしてもらえない――というのはさすがに問題なので、保険の対象外にすれば解決するんじゃないか。延命治療をして欲しい人は自分でお金を払えばいいし、子供世代が延命を望むなら子供世代が払えばいい。こういう議論はされてきましたよね〉
まー、そう言う状態にある人が「分かった!最後の1ヶ月は延命治療やらないわ!」と言う選択ができない状況にあるので、難しいですよねぇ。医師か家族が選択しないといけないのですけれど、身内の死をそう簡単には受け入れることはできません。
ということで、早くからの延命治療の希望かどうかを取っておかないといけないですな。加えて、安楽死やら尊厳死の制度をとっとと進めるべきかと。
安楽死は認められていく風潮にあります。以下に許可している国を列挙。
- スイス:1942年
- アメリカ(オレゴン州):1994年
- オランダ:2001年
- ベルギー:2002年
- ルクセンブルク:2008年
- アメリカ(ワシントン州、モンタナ州):2009年
- アメリカ(バーモンド州):2013年
- アメリカ(ニューメキシコ州):2014年
- アメリカ(カリフォルニア州):2015年
- カナダ:2016年
- オーストラリア(ビクトリア州):2017年
- 韓国:2017年
んで、ベルギーにいたっては子どもの安楽死も認めております。(不治の病を抱えている場合)
終末期医療費を科学的に見てみよう
さてここで津川友介さんのツイートを紹介したいと思います。終末期医療問題を考えるには外せない視点だと思います。(津川友介さんの著書、原因と結果の経済学、世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事、のどちらも超良書なのでご一読を!)
今年Scienceに出た論文ですが、ほとんどの死亡は予測不能なので終末期医療は医療費の無駄であると考えるのは間違いである(多くの場合誰が終末期か分からない)という内容の論文をご紹介します。https://t.co/EaKTGzxlsV https://t.co/VnuwrV0qbG
— 津川友介 (@yusuke_tsugawa) 2019年1月2日
この厚労省の方は数多くの誤解をしています。まず医療財源を保険料で全て賄う必要はそもそもなく、ほとんどの先進国は税と組み合わせています(フランスは税中心、ドイツは保険料中心)。保険料を上げるか税金で補填するかは政治的判断(どちらか国民の受けが良いか)で、両者に大差はありません。 https://t.co/WPstf6I9pM
— 津川友介 (@yusuke_tsugawa) 2019年1月2日
日本での議論の元は分かりませんが、米国ではメディケア(65歳以上がほぼ全員加入する皆保険)の加入者が人生最後の12ヶ月に、生涯医療費の25~30%を使うと言うデータがそもそもの「終末期医療費が高い」という話の発端です。この割合は近年も変わっていません。https://t.co/owoYWioQAi https://t.co/ePj0D5RkN5
— 津川友介 (@yusuke_tsugawa) 2019年1月2日
しかし、最近のサイエンスの論文でもあるように、多くの高医療費患者は救命しようとしてICUに入って治療を受けたものの、残念ながら救命できず、振り返ってみると死ぬ直前に多くの医療費を使っているだけです。亡くなると分かっていながら高額な医療費を投入されている患者は多くないとされています。 https://t.co/vXGS7xfIQ3
— 津川友介 (@yusuke_tsugawa) 2019年1月2日
さらに言うと、終末期患者の中で高医療費患者は多いものの、高医療費患者から見るとその割合は比較的小さいことも分かっています。つまり、「終末期の医療費」は、大きな問題であるかのように見えますが、日本の社会保障費の問題を解決するほどの主要な問題ではないでしょうhttps://t.co/PuwyR9DbCS pic.twitter.com/4HHTC5JOz0
— 津川友介 (@yusuke_tsugawa) 2019年1月2日
医療経済学の研究では「終末期医療費」と言うと人生最後の一年間の医療費のことを指します。https://t.co/vQPOOjGWEv
最後の1ヶ月のようにより短くすれば予測精度は上がるかもしれませんが、医療費の総額が小さくなるので、医療財政への影響は小さなものとなります。 https://t.co/ICdEtop5Cc
— 津川友介 (@yusuke_tsugawa) 2019年1月2日
私個人としては、落合さんや古市さんの主張の内容に問題があるとは思っていません。アカデミアの中ですら、終末期医療費がどれくらい大きな問題なのかまだ決着がついていないからです。これがきっかけで、前提条件である「終末期医療は高い」が正しいのかどうか丁寧な検証が進めば良いと思っています。
— 津川友介 (@yusuke_tsugawa) 2019年1月2日
終末期医療費がどれくらい大きいのかはまだ決着がついていないのですな。知らなかったです。「終末期医療費は高い!」と思い込んでいただけに、危ない前提条件を自分の頭の中に作っていました。今後の調査が気になるところ。
ちなみにScienceは「医学雑誌」ではありません。自然科学だけでなく、経済学などの社会科学も含めた科学全般のトップジャーナルとされています。 https://t.co/AZZYwPDZs8
— 津川友介 (@yusuke_tsugawa) 2019年1月3日
日本とアメリカは違うという意見があったので日本のデータもご紹介しておきます。
この論文では、日本のデータは病院でかかった医療費しかないのですが、最後の1年に8.2%、最後の3年で13.5%の生涯医療費が投入されていました。https://t.co/hM5h3ERvgB… pic.twitter.com/C4FRBZimm8
— 津川友介 (@yusuke_tsugawa) 2019年1月3日
医療保険とは基本的に、健康な人から病気の人(もしくは富める人から貧しい人)へ富の再分配を行う仕組みですので、「国に迷惑がかかる」という理解はちょっと違うのではないかと思います。ですので西先生が患者さんにご説明なさっている内容で正しいと思います。 https://t.co/h1D2a7KCl6
— 津川友介 (@yusuke_tsugawa) 2019年1月3日
この一連のツイートやばすぎます。こんな情報が無料で流れているのですなぁ。有用すぎる情報なので、気になるツイートがあり次第、この記事にペタペタ貼っていきます。
おっしゃる通りなのですが、データ上それらを区別することが困難であるため、多くの論文では”End-of-life health spending(終末期医療費)”と表現した場合は両者を含んでいます。脳梗塞後の胃ろうでも、回復を目指している人は急性期疾患になりますので。 https://t.co/0mGg1ft8Er
— 津川友介 (@yusuke_tsugawa) 2019年1月2日
おわりに:医療費を下げるためには健康や!
医療費を下げるためには、できるだけ健康に生きることですな!個人ができるもっとも簡単な社会貢かと思っております。ということで、津川さんのこちらの本を読んで実践してもらえたら、日本はいい方向に向かうはずです。(私は本気でそう信じております)
津川さんの本を読んだ後は、私のこちらのサイトもちょこっとのぞいてみてもらえたらなと思っております。健康に生きるための情報についてまとめております。
それでは!
コメント