2018年4月26日の『橋下徹の即リプ』を見ていたら、安楽死や尊厳死のテーマで橋下さんとテリー伊藤さんが語られておりました。抜けていたことがあったので、改めて知識を再整理して、記事にてまとめます。
テリー伊藤です。
西部邁さんの自裁死はなるほどと思いました。納得できない生き方になるなら死を選ぶというのは理解できる。橋下です。
自分の命をどうするかを決める権利は当然認めるべき。
きちんと手続きを決めておく。 https://t.co/6rny6UZYG8— 橋下徹の即リプ!番組アカウント (@abematv_sokurep) 2018年4月26日
安楽死と尊厳死の違い
まずは基本となる安楽死と尊厳死の違いについて。ベネッセさんの『高校生の苦手解決Q&A』が非常に参考になりました。
安楽死も尊厳死も、どちらも本人の意思による死の迎え方ですが、目的がちょっと違います。
安楽死は薬物投与などで死を迎える
病気の回復が見込めなかったり、苦痛が激しい場合、本人の意思に基づいて薬物投与などにより人為的に死を迎えさせるのが『安楽死』になります。
尊厳死は延命措置を中止
回復の見込みがない傷病者に対して、生前の意思に基づき、人工呼吸器や点滴などの生命維持装置を外し、延命措置を中止し、自然な死を迎えさせるのが『尊厳死』になります。
お金という視点
医療費が問題視される昨今、安楽死や尊厳死は医療費削減という視点も重要になります。
回復の見込みのない傷病者に、人工呼吸器や胃ろうなどで延命措置をするのもタダじゃありません。そこには税金も投入されています。6人に1人の子どもが貧困状態にある今、どこにお金をかけるべきなのか?というのは国民全員で考えていかなくてはならない、政治課題。
家族という視点
テリーさんがおっしゃってましたが、
「一人を介護するのには3人が必要になる」
親の介護などで仕事をやめなくてはならない人もいますし、老老介護問題もあります。
これはすごく難しい問題ですが、家族に迷惑をかけるくらいなら自ら死を選ぶ、という選択をしたい人もいるはずです。
日本は尊厳死も安楽死も認めていない
私が小学生の時から(今から十数年前)、安楽死や尊厳死のテーマはありましたが、これを認める法律は日本ではありません。
延命措置をした場合やめられない
安楽死や尊厳死が認められていないので、一度延命措置が始まったらそれを中止することができません。なぜなら、医師が延命措置を取りやめた決断をすると、『殺人罪』に問われるからです。
自裁死とは?
今年の1月に、評論家西部邁さん(78歳)が多摩川に入水自殺をしたのも記憶に新しいです。んで、この『自裁死(じさいし)』は、西部邁さんが死を表現するときに使う言い方だそうです。
自らの生涯に決着を付ける、引き際を自ら選ぶという意味合いで命を絶つ死に方を指した言い方。
この「自裁死」という表現は、2018年1月に入水自殺を図ったと見られる死を遂げた西部邁の死を表現する言い方としてしばしば用いられている。西部邁は生前、死ぬときは自分の意思で死ぬ意向があることを周囲に漏らしていたという。
もともとは「自裁」という言葉そのものにも「自害」や「自決」と同様「自ら死ぬ」という意味が含まれる。その意味では「自裁死」は重言とも解釈できる。
(2018年01月29日更新)引用:weblio 自裁死
安楽死や尊厳死が認められていない日本で、「家族に迷惑をかけてくない」とか「社会に迷惑をかけたくない」とか「自分の死を自分で決める」という考えが強い方なら、こういう方法しかないのかも・・・。
と言っても、そんなことされたら別の意味で家族にも迷惑がかかるのですが・・・。難しいところです。
積極的安楽死を認めている国
スイスやベルギーなんかが安楽死を認めていることで有名ですが、今はどれくらいの国が認めだしているのかを調べてみました。(参照:ウィキペディア:安楽死)
安楽死と積極的安楽死の違い
まずは安楽死と積極的安楽死の違いについて。
厳密にいうと、安楽死とは死刑の執行やら動物の殺処分の際に、痛みなく死に至らせることを言うみたいです。私たちの一般的な解釈とは違いますね。
この記事で取り上げている安楽死は、『積極的安楽死』になります。
積極的安楽死を法律で認めている国
- スイス:1942年
- アメリカ(オレゴン州):1994年
- オランダ:2001年
- ベルギー:2002年
- ルクセンブルク:2008年
- アメリカ(ワシントン州、モンタナ州):2009年
- アメリカ(バーモンド州):2013年
- アメリカ(ニューメキシコ州):2014年
- アメリカ(カリフォルニア州):2015年
- カナダ:2016年
- オーストラリア(ビクトリア州):2017年
- 韓国:2017年
びっくりするくらい増えてました。積極的安楽死は世界的流れですね。世界の真似事をするのが大好きな日本なので、時間の問題かと。
安楽死は究極的な自己決定権
番組で橋下さんが言ってましたが『安楽死は究極的な自己決定権』。これについては私も賛成していて、安楽死を認めるべきだと思っています。
生きることが良くて、死ぬことが悪い、という常識がありますが、私はそこに疑問を持っています。生きることと死ぬことがセットで人生なのですから、いいとか悪いとかないと思うんです。
未成年が安楽死を選ぶのは議論されるべきところですが、ある程度の年齢になって、世の中のことをある程度知って、それでいて安楽死を選ぶのであれば、それは誰も止めるべきではないことなのかと。
うちの祖母が良く言っていますが、「コロッと死にたい」と。
今年で89歳を迎える祖母。まだ歩けるのですが、ここまで長生きすると友達のほとんどはボケていて、同じような悩みを打ち明けられる人は少なく、孤独を感じているようです。家族と喋ろうと思っても、耳が遠くなっているので、うまく会話もできません。
だから毎日大音量でテレビを見ているだけの生活なんですね。
そういう祖母を見ていると、私はそこまで長生きするのが怖くなります。
核家族で育つと、おじいちゃん・おばあちゃんは「小遣いをたまにくれる超優しい人」、というイメージだけを持っている人も多くおり、「安楽死なんてだめだ!」と言う人もいますが、おじいちゃん・おばあちゃん側の気持ちに立つのも必要かと思います。長生きするだけがお年寄りの幸せではないんですね。
それに、安楽死や尊厳死が認められたところで、死を強制するわけではないのですから、選択肢の1つということで、本人の決断を尊重することも大切なのかと思います。
ベルギーは子どもの死をも認めている
ベルギーでは年齢制限を撤廃し、子どもの死をも認めてるのだとか。大人だけでなく、子どもでも治らない病気とかで苦しみますもんね・・・。
ベルギー下院は13日、本会議を開き、医師による安楽死を18歳以上の成人に限り認めるとした法定年齢制限を撤廃し、子供にも認める改正法案を可決した。子供の安楽死はオランダが12歳以上を対象に認めているが、年齢制限の全廃は世界で初めてとなる。
参照→ベルギー、「子供の安楽死」も認める 世界初の年齢制限撤廃
2016年、末期患者の17歳が初めて安楽死の処置を受けたのだとか。
安楽死の年齢制限が2年前に撤回されたベルギーにて、末期患者の17歳が未成年で初の安楽死処置を受けました。安楽死法を持つ他の国にも影響をおよぼす、歴史的な前例になるかもしれません。
どうしようもない病気を抱え込んでいる人に、「生きろ!」というのは無責任な発言なのかもしれませんね・・・。本当に難しい。
自殺が多い日本だからこそ
平成29年度の日本の自殺者数は21,321人。ピークの3万人を越える時よりはだいぶマシになっていますが、まだまだ多いです。(参照→警察庁 自殺の状況)
自殺者を減らしていくのも大切なのですが、精神的・肉体的に追い込まれた人を救えるような選択肢を用意することも大切なのかと。(死ぬことが救いになるわけではありませんが)
おわりに
『死』というのはすごく難しいテーマで、軽々しく論じるものではないのかもしれません。しかし、それを避けていては、不幸な人が増えるだけ。
死にたくないと思う人もいれば、死にたいと思う人もいます。プラスして、日本の財政状況、財政状況からくる子どもの貧困、人口減少、などなど複数のテーマが結びついているのでめちゃんこ複雑ですが、だからこそ皆で考える必要があると考えます。
今回の記事も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
追記:親のがん闘病最後の緩和ケア
追記です。
私の親はガンでして、抗がん剤などの治療をずっとやっていたのですが、とうとう新しい抗がん剤もなくなり(いままで使っていたやつは耐性により効きが悪くなった)、年齢的な体の衰えもあり、打つ手なしになりました。
お医者さんから「余命は半年〜」みたいな、ドラマでありがちな説明を受けました。(本人がいないところで)
来るべき時がきたなと。むしろ現代の医学のおかげで、普通だったらすでに死んでるところを、ここまで長生きさせてくれた医療の進歩、お医者さん、看護師さん、薬剤師さんに感謝なのです。そして高額療養制度にも(負担している日本国民の皆様にも)。
余命宣告後、お家でまたりと親は過ごしていたのですが、とうとう自力では動けなくなってしまいました。ということで入院です。
じゃあ病院ではどんなことをするのか?というと、痛み止め(麻薬)&下のお世話などです。痛み止めのおかげで、親はまったく痛みはないそうな。(お世話をしてくれる看護師さんには感謝しかありません)
がんの痛みを緩和するには、結構な量の痛み止め(麻薬)が必要です。また、がんが進行するにつれ&痛み止め耐性が進むにつれて、痛み止めの量が増えていきます。
痛み止めの量が増えていくとどうなるか?というと、まともに会話もできなくなります。映画とかで麻薬でラリってる人を見たことあると思いますが、マジであんな感じです。ほんとうに白目になるんだ…って感じです。
そして記憶もあやふやになります。「え?昨日、面会きたの?」とか言われちゃいます。
ここまでくると思いますよね。安楽死とどう違うのだろう?言ってみれば、この親の状態は、ながーく続く安楽死みたいなもんです。もう死ぬとわかっていて、ガンガンに痛み止めを打って頭も記憶もぼんやりし、寝たきりのままの状態。
これさ、誰得なんでしょ?
こちらも入院費用がかかり、保険制度で日本国民全員にも負担がかかり、看護師さんにも負担がかかり…。
うーん、ここまできたらさすがに安楽死させてあげてくださいよ…と、実体験から思いました。
みなさん、どう思われます?そうまでして親に長生きしてもらいたいですか?
カナダの安楽死の事例
2024年1月14日のPRESIDENT Onlineの記事が勉強になりました。
2016年からカナダでは安楽死が合法化されました。
そして2021年では対象範囲が広がりました。
2021年3月の法改正で新たに対象となったのは、不治の重い病気または障害が進行して、本人が許容できる条件下では軽減することができない耐え難い苦しみがある人だが、2024年には精神障害や精神的な苦痛のみを理由にした安楽死も容認される方向だ。
https://president.jp/articles/-/77281?page=2
その結果、2021年では2020年に比べて32.4%も安楽死を選択する人が増えたのだとか。2021年、2022年は1万人を超える人が安楽死しているんですって。
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